運転代行業のアルコールチェックは、運転者が自分で検知器に息を吹きかけて終わる作業ではありません。通常の対面・電話等による方法では、確認する人が運転者の状態と検知結果を確認し、必要な指示を出し、記録を残すところまでを一つの手順にします。
深夜の帰着、直行・直帰、管理者の不在、機器の故障など、通常どおり確認できない場面ほど事前の準備が必要です。この記事では、安全運転管理者制度の酒気帯び確認を、運転代行業で実施するときの方法・記録・異常時の対応に絞って説明します。管理者の人数や選任要件は安全運転管理者の解説をご覧ください。
運転代行業は、随伴車が少なくても確認体制が必要
運転代行業では、随伴用自動車の台数にかかわらず、営業所ごとに安全運転管理者の選任が必要です。一般事業所の「自動車5台以上」などの選任基準を当てはめて、少人数・少台数だから不要と判断しないでください。
酒気帯びの有無は、目視等とアルコール検知器を使って確認します。酒気帯び確認の内容は1年間保存し、検知器は常時有効に保持する必要があります。顧客を安全に送る業務だからこそ、依頼が入ってから慌てて確認するのではなく、勤務と配車の手順に組み込みます。
基本的な制度と確認方法の根拠:警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」、酒気帯び確認・点呼に関するQ&A。
代行業での管理者選任と酒気帯び確認の案内は、広島県警の運転代行業手続案内でも確認できます。
顧客車の担当者だけでなく、随伴車を運転する担当者も確認します。埼玉県警の乗務記録・酒気帯び確認の記載例は、両方の担当者についてそれぞれ運転前後の確認欄を設けています。二人組だから一人分だけの確認で済む、とは考えないでください。
確認のタイミングは、一連の運転業務の前後
警察庁のQ&Aでは、ここでいう運転は一連の業務としての運転とされ、運転を含む業務の開始前・終了後などに確認すれば足りるとされています。依頼を1件受けるたび、車を動かすたびに、その直前・直後の確認を繰り返す趣旨ではありません。
一方、業務終了後の確認を省いたり、深夜だから翌日の確認で代えたりする運用にはしません。出勤して運転を始める前、運転業務を終えた後のどの時点で、誰へ連絡し、どの機器を使うかを決めておきます。
日付をまたぐ勤務では、開始日だけで管理すると終了後の記録が見つけにくくなります。確認した実際の日時を記入し、一連の勤務の前後が分かるよう整理しておくと、未実施の見落としを減らせます。これは記録運用上の工夫であり、確認時刻を都合よく変更してよいという意味ではありません。
対面では、顔色・応答・においと検知結果を確認する
対面での確認を原則とし、運転者の顔色、呼気のにおい、応答の声の調子などから酒気帯びの有無を確認します。これに加え、アルコール検知器による確認を行います。機器の数値だけを転記して、運転者の状態を見ない手順にはしません。
- 確認担当者と運転者を明確にする。
- 検知器が使える状態にあるかを確認し、取扱説明書に沿って測定する。
- 顔色、応答、呼気のにおいなどと検知結果を合わせて確認する。
- 酒気帯びが認められる場合は運転中止等の必要な措置につなげる。
- 確認方法・結果・指示事項を、その確認の記録として残す。
本人が「飲んでいない」と言っていても、それだけで確認を終わらせません。測定結果や状態に疑問がある場合は、確認担当者だけで曖昧に処理せず、管理者へ報告して対応を確認します。
直行・直帰などで対面できない場合の確認方法
警察庁のQ&Aは、対面での確認が困難な場合について、対面に準ずる適宜の方法を示しています。携帯型の検知器を持たせるなどして、運転者の状態と測定結果の両方を確認できるようにします。
- カメラ・モニター等を使う場合:顔色、応答の声の調子などと、検知器の測定結果を確認する。
- 携帯電話・業務無線などの場合:運転者と直接対話し、応答の声の調子などを確認するとともに、検知器の測定結果を報告させる。
検知器の写真や測定数値をメールで送るだけでは、直接対話して運転者の状態を確認する方法の代わりになりません。通信がつながらない、確認する人がいないという場合に、運転者が自己判断で出発しないよう、連絡先と代替の確認方法を決めておきます。
確認方法は、対面か非対面かを含めて記録します。遠隔確認を実施したにもかかわらず、記録上だけ「対面」にするような処理は避けてください。
認定機器を使う自動点呼と、自己測定だけの運用は区別する
警察庁の現行Q&Aは、国土交通省の認定機器を用い、定められた方法に従う業務前・業務後の自動点呼についても取扱いを示しています。したがって、あらゆる場合に人との対面・通話が必須という説明は正確ではありません。
ただし、一般の携帯検知器で自分だけで測定し、結果を送信することが、そのまま認められた自動点呼になるわけではありません。導入を検討する場合は、機器の認定と対象業務、実施方法、異常時の対応等を現行の公式案内で確認してください。この記事の電話・補助者による手順は、通常の確認方法を前提としています。
管理者が不在のときは、補助者を事前に決めておく
警察庁のQ&Aでは、安全運転管理者が不在であるなど、管理者による確認が適切にできないおそれがある場合には、副安全運転管理者や補助者に確認を行わせる取扱いが示されています。
補助者については、事前に指定し、確認方法を指導しておくことが必要です。酒気帯びを確認した場合は、速やかに安全運転管理者へ報告し、運転中止等の必要な指示につなげます。「今日いる人なら誰でもよい」「管理者は翌日に記録を見るだけ」といった運用にならないようにします。
夜間営業では、終了後の確認を担当する人と、異常があった場合に連絡を受ける管理者が実際に対応できるかが重要です。勤務表、連絡手段、機器の置き場所まで合わせて点検してください。補助者への分担は、安全運転管理者の選任や管理体制そのものを不要にする仕組みではありません。
安全運転管理者自身が運転する場合も、通常の確認方法では副安全運転管理者や補助者の確認を受けます。静岡県警の質疑応答集(問8)でもこの点が示されています。役職が管理者であることと、自分だけで確認を完結してよいことは別です。
記録には、数値だけでなく8つの項目を残す
警察庁のQ&Aと県警の記録例を踏まえ、酒気帯び確認では次の項目を残します。測定値の欄だけの用紙では、誰がどの方法で確認し、何を指示したかを追えません。
- 確認者名。
- 運転者名。
- 運転者の業務に係る自動車の登録番号または識別できる記号・番号等。
- 確認の日時。
- 確認方法。検知器の使用の有無、対面でない場合の具体的方法等。
- 酒気帯びの有無。
- 指示事項。
- その他必要な事項。
検知器を使う義務がある確認で、「使用の有無」という記録欄があるから使わなくてよい、と解釈しないでください。機器の測定値を追加して管理する場合も、酒気帯びの有無や指示事項など、必要な記録を省かないようにします。
酒気帯び確認は1年。乗務記録と兼用する場合は保存期間に注意
酒気帯び確認の記録は1年間保存します。一方、運転代行業の乗務記録には、最後に記載した日から2年間の保存義務があります。同じ用紙やシステムで両方を管理している場合、酒気帯び確認の1年だけを見て一体の記録を削除しないでください。
保存する帳簿ごとに、必要な項目と保存期間の起算点を整理しておきます。運転代行業の帳簿には複数の種類があるため、詳しくは営業ルールと記録の保存をご参照ください。
検知器は、購入して置いておくだけでは足りない
「常時有効に保持する」とは、正常に作動し、故障がない状態を保つことです。取扱説明書に沿った使用・管理に加え、日常の作動確認を手順に組み込みます。保守・点検・交換時期を、担当者の記憶だけに任せないようにしてください。
警察庁のQ&Aは、説明書に基づく適切な使用・管理・保守と、定期的な故障の有無の確認を求めています。具体的な点検方法・周期はメーカーの説明書で確認します。電源が入ることだけでなく、必要な測定ができる状態かを見ます。機器ごとに使用回数や交換時期などの条件が異なるため、記事だけを根拠に一律の耐用年数を決めないでください。
点検の周期や交換条件はメーカーの説明書に従います。和歌山県警のQ&A(問35・36)もそのように案内しています。運送事業者向けの点検周期を、そのまま運転代行業の全国一律の義務として流用しないようにします。
故障や不適切な機器が判明した場合
検知器を使えない場合に、目視や本人の申告だけで通常どおりの確認を続ける運用は避けます。有効な検知器で確認できる代替手段を用意し、必要な確認ができないまま運転業務へ出さない体制にしてください。
予備機の用意や、故障時に確認を受けられる場所・連絡先の整理は、業務を止めないための運用上の工夫です。予備機を置くこと自体を、すべての事業者に共通する法定台数として案内するものではありません。
酒気を検知したときの対応を、出発前に決めておく
酒気帯びが認められる運転者には、運転中止等の必要な措置をとります。配車が決まっている、人員が足りない、本人が大丈夫と言っているといった事情を理由に、確認結果を見過ごしてはいけません。
管理者への報告、運転中止の指示、代わりの運転者の手配、確認結果と指示の記録という流れを決めます。刑事上の処罰基準となる数値と、事業者が行う酒気帯びの有無の確認を混同して、「基準未満なら出発可」と独自に線を引かないでください。
口腔内に残ったアルコール等の影響や機器の使い方に疑問がある場合も、説明書や管理者の指示に沿って事実を確認します。再測定で都合のよい結果だけを残したり、最初の結果を消したりする運用にしないことが重要です。
確認体制を整えるときのチェックポイント
- 業務前後に、確認者へ連絡できる勤務体制になっているか。
- 対面できない場合にも、直接対話と検知結果の確認ができるか。
- 補助者の指定・教育と、管理者への報告経路があるか。
- 検知器の作動・保守を担当する人と、故障時の代替手段が決まっているか。
- 必要な記録項目と、兼用する帳簿も含めた保存期間を確認したか。
運転代行業の認定申請や管理体制の準備を相談したい方は、営業所所在地、随伴車の台数、勤務時間帯、管理者の選任状況を添えて、サクセスファン行政書士事務所へお問い合わせください。具体的な支援範囲や費用は、ご相談内容に応じて確認してください。
制度情報の確認日:2026年11月7日。個別の運用や機器の取扱いは、警察庁・管轄警察署の最新案内と製品の取扱説明書を確認してください。