ツーショットダイヤルや伝言ダイヤルなどのサービスを始めるときは、誰の会話を、どの設備で、どこにいる相手へ取り次ぐのかを整理します。その仕組みが無店舗型電話異性紹介営業に当たる場合、営業開始予定日の10日前までに届出が必要です。
準備するのは届出書だけではありません。営業者や事務所を示す資料とともに、利用者双方が18歳以上であることを確認できる仕組みも整えます。この記事では、対象の見分け方、書類・図面と年齢確認の準備、提出から営業開始までを順に解説します。全国共通の制度と、兵庫県の提出案内で求められる資料は分けて説明します。
無店舗型電話異性紹介営業に当たるのは、どんなサービス?
対象は、一定の目的で異性との音声会話を取り次ぐ営業
風営法第2条第10項が対象とするのは、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する人に、会話の機会を提供して異性を紹介する営業です。その一方からの電話による会話の申込みを、電気通信設備で相手に取り次ぎ、店舗型電話異性紹介営業には当たらないものをいいます。ここでいう交際には、会話も含まれます。
代表例はツーショットダイヤルや伝言ダイヤルですが、サービス名だけでは判断できません。会話の相手が従業者である場合も、法の定義に含まれます。「利用者同士をつなぐわけではないから対象外」とは限りません。
警察庁の解釈運用基準では、会話は音声によるものをいい、録音した伝言のやり取りも含まれます。一方、文字チャットはこの「会話」には含まれません。アプリやウェブサイトを使う場合も、音声機能の有無、対象とする交際の目的、申込みを取り次ぐ仕組みから判断します。
文字のやり取りが中心でも、公衆が異性交際に関する情報を閲覧でき、利用者同士が電子メール等で相互に連絡できるなどの要件を満たす場合は、別途、出会い系サイト規制法による届出の対象となることがあります。該当する可能性がある方は、警視庁の「インターネット異性紹介事業とは」も確認してください。
事務所があるかではなく、客を店舗内に入れる仕組みかで分ける
| 区分 | 電話の申込みを取り次ぐ先 |
|---|---|
| 店舗型電話異性紹介営業 | 営業者が設けた店舗内に立ち入らせた客へ取り次ぐ形態です。 |
| 無店舗型電話異性紹介営業 | 法定の対象条件を満たし、店舗型には当たらない形態です。営業を管理する事務所があっても、そのことだけで店舗型になるわけではありません。 |
たとえば、事務所で電話交換設備や顧客情報を管理することと、客を店舗に来させて通話してもらうことは別です。利用者がどこで通話するかを、設備の配置とは分けて整理しましょう。店舗型には場所の規制もあるため、客を来訪させる計画なら、物件契約前に管轄警察署へサービスの流れと利用場所を示して確認します。
なお、人を派遣するデリヘル等の「無店舗型性風俗特殊営業」とも別の区分です。名称が似ていても、書類や年齢確認のルールをそのまま流用することはできません。大きな区分から整理したい場合は、性風俗関連特殊営業の5区分をご覧ください。
根拠:風営法第2条第9項・第10項、警察庁の解釈運用基準(第8・第9)。
届出に向けて、事務所・書類・年齢確認の仕組みを整える
まず、営業者・事務所・電話番号・取次ぎの流れを決める
届出は営業者ごとに行います。個人で営むか法人で営むかを決め、営業の本拠となる事務所を整理してください。事務所は、電話交換設備や顧客の管理、広告の企画・実施など、営業に関する業務を継続して行う場所です。単に住所を借りるだけの計画なら、どこで実際の管理業務を行うかまで説明できるようにします。
自宅を使う場合も、営業に使う範囲、賃貸借契約の使用目的、管理規約などを確認します。自宅だから一律に不可となるわけではありません。事務所を設けないときは営業者の住所を基準に届け出ますが、その住所の使用権原を示す資料は必要です。どこで管理業務を行い、どの住所で届け出るのかを、資料と一致させておきましょう。
- 営業者と事務所:個人の氏名・住所、または法人名・所在地・代表者と、営業を管理する場所。
- サービス名と電話番号:広告・宣伝に使う呼称が複数あればすべて。利用者が設備へ接続する電話番号も漏れなく整理します。海外の設備につながる番号も、対象から当然に除かれるわけではありません。
- 取次ぎの仕組み:登録、会話の申込み、相手への取次ぎ、課金までの流れと、用いる電気通信設備の概要。録音伝言やアプリを併用する場合は、その機能も示します。
この整理を、第37号「営業開始届出書」の呼称・電話番号・設備概要の欄へ記入します。設備概要には、設置先の所在地と、機器の構成・処理能力を書きます。設備会社の資料から、設置場所ごとの機器の型番・台数、使用する電話回線数などを拾えるようにしておくと、記入を進めやすくなります。
複数の呼称・番号・設備の情報が欄に収まらなければ、様式の備考に従って別紙を添付できます。兵庫県警の第37号の記載例は、設備概要の書き方を確かめる参考になります。取次ぎの流れを描いた図や設備の仕様書は説明の助けになりますが、これらを全国一律の独立した添付書類として求めているわけではありません。
必要書類は、全員共通と個人・法人別にそろえる
全国共通の添付書類は、添付書類等に関する内閣府令第16条が準用する第13条等に基づきます。まず次の一式を選び、手元にある資料、取り寄せる証明書、自分で記入する書類に分けて準備してください。
| 対象 | 必要な書類と準備先 |
|---|---|
| 全員 | 営業開始届出書(別記様式第37号)と営業の方法を記載した書類(第38号)。提出先が案内する最新様式へ記入します。 |
| 全員 | 事務所の使用権原を示す資料。所有・賃貸など、その場所を営業者が使える関係に応じて用意します。 |
| 個人 | 営業者本人の住民票の写し。市区町村で取得します。 |
| 法人 | 定款、法人の登記事項証明書、役員全員の住民票の写し。定款は会社保管のもの、法人の証明書は法務局、住民票は各役員の市区町村で準備します。 |
住民票は、本籍、日本国籍を有しない方は国籍等の必要事項を記載したものを用意します。兵庫県警の案内では、マイナンバーの記載がないものとされています。「住民票の写し」は市区町村から交付される証明書の名称で、手元の証明書を自分でコピーした紙とは区別してください。必要部数や証明書の発行時期は、取得前に提出先の案内も確認します。
使用権原の資料で示すのは、営業者がその場所を使える根拠です。登記事項証明書で所有者を確かめ、次のようにそろえます。
- 営業者自身が所有している:建物の登記事項証明書等で所有関係を示します。
- 所有者から直接借りている:建物の登記事項証明書等に加え、賃貸借契約書の写し又は賃貸人の使用承諾書等を用意します。
- 転貸で借りている:建物の登記事項証明書等に加え、所有者から営業者までの契約・使用承諾のつながりが分かる資料をそろえます。
親族が所有する物件や、契約名義が営業者と違う物件でも、「自分が使えること」を説明する資料が必要です。契約書か承諾書を一枚用意すれば必ず足りると考えず、所有者と営業者の間に誰が入っているかを見てください。
根拠・書類一覧:添付書類等に関する内閣府令第16条・第13条、兵庫県警の性風俗関連特殊営業の案内。
兵庫県では事務所の平面図も準備する
事務所の平面図は、全国共通の法定添付書類の一覧には列挙されていません。一方、兵庫県警の公開案内では、無店舗型電話異性紹介営業の必要書類に事務所の平面図が含まれています。全国の制度と、実際の提出先が求める資料を分けて準備することが大切です。
兵庫県で準備する場合は、既存の間取り図や募集図面を出発点に、部屋の区切り、出入口、机・椅子等の配置、営業に使う範囲が分かるようにします。元の図と実際の間取りが違う場合は直し、業務に使う場所を書き入れましょう。自宅の一室を使うなら、その部屋と生活部分を区別すると、使用範囲を伝えやすくなります。
平面図は「どこで業務を行うか」を示すものです。一方、第37号に書く設備概要やその説明資料は「どの設備で、どう会話を取り次ぐか」を示します。建物内の配置だけで取次ぎの仕組みまで伝わるとは限らないため、資料の役割を分けて準備してください。
兵庫県警の必要書類一覧には、縮尺や作成ソフトの指定までは示されていません。間取りと使用範囲を整理した図を用意したうえで、提出先が求める寸法等の追加記載を確かめます。他県で届け出る場合は、その地域の提出案内に従って図面等の要否を確認してください。
「営業の方法」は、広告と年齢確認まで具体的に書く
第38号「営業の方法」には、サービスをどのように知らせ、年齢を確かめ、会話の機会を提供するかを記載します。届出者・呼称・事務所所在地に加えて、次の内容を決めておきます。
- 広告・宣伝の方法:使う媒体に応じて、広告物の掲出場所、新聞・雑誌への掲載頻度、ウェブサイトのURL、ビラ等を配る場所など。広告をしない場合はその旨を記載します。
- 広告での禁止表示:18歳未満の人が営業用電話番号に電話をかけてはいけないことを、どのように明らかにするか。
- 年齢確認の具体的な措置:申込者と受け手それぞれを、いつ、どの方法で確認するか。識別番号方式を使う場合は、事前の確認と利用時の確認を分けて考えます。
- 外部で付与された識別番号等を使う場合:付与者の名称・住所・代表者氏名と、付与の方法・場所。
- 役務提供の態様:直接会話を取り次ぐのか、録音伝言をやり取りするのかなど、実際に提供する仕組み。
広告の禁止表示と、利用者の年齢を確かめる措置は別の欄です。「年齢確認をします」とだけ書くのではなく、広告にはどの文言をどう表示・告知し、利用時にはどの確認を行うかまで具体化してください。広告表示の方法は後述の広告表示の説明、年齢確認は次の項目で解説します。
兵庫県警の第38号の記載例で記入欄を確かめながら、例文の丸写しではなく、ご自身が実行する運用に合わせて記載しましょう。
双方の年齢を、申込時と取次時に確認できるようにする
年齢確認が必要なのは、会話を申し込む人と、その申込みを受けようとする人の双方です。18歳未満からの申込みを取り次ぐことも、18歳未満へ取り次ぐことも禁止されています。18歳未満の従業者を会話の当事者にすることもできません。
施行規則第73条では、申込みがあった場合と、相手へ取り次ぐ場合に、その都度、次のいずれかの方法で18歳以上であることを確認します。
- 身分証明書等の写しをFAXで受信する方法。年齢・生年月日だけでなく、身分証明書等であることが分かる文書名、使い回しを防ぐための証明書番号等、確認に必要な部分を受信します。ウェブへの画像アップロードやメール添付が、当然に同じ方法として認められるとは扱いません。
- クレジットカード等で料金を支払う旨の同意を受ける方法。18歳未満が通常利用できない支払方法であることが条件です。
- あらかじめ適法に付与した識別番号等の告知を受ける方法。識別番号と暗証番号を用いて、利用の都度確認します。
営業者自身が識別番号等を付与する際は、規則に従い、①18歳以上であることが一見して明らかな人と実際に対面する、②身分証明書等の現物の提示を受ける、③必要部分の写しをFAXで受信する、④前記の支払方法による料金支払の同意を受ける、のいずれかで事前確認します。単なる年齢の自己申告だけで番号を発行するものではありません。
付与業務を委託する場合は、任意の代行会社に頼めばよいわけではなく、法人の種類・役員等・規程・委託契約などの要件があります。また、委託先が料金支払の同意だけを使って識別番号等を付与することはできません。委託を予定する方は、契約前に規則の要件と委託先の仕組みを照合してください。
設備を選ぶ前に、登録画面・音声案内・番号入力から取次ぎまでの流れを作り、どの方法で誰を確認するかを管轄警察署へ示すと、相談する点を絞れます。身分証等を扱う場合は、必要以上の情報を集めず、安全に管理する方法も準備します。
根拠:風営法第31条の18第2項・第3項、施行規則第73条・第67条、警察庁の解釈運用基準(第22の3・第23の2)。
届出を提出し、営業開始に備える
提出先と10日前の期限、費用を確認する
届出先は、営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する都道府県公安委員会です。実際の相談・提出窓口は通常、管轄警察署の生活安全担当となります。営業開始届出書は、営業開始予定日の10日前までに、必要な添付書類とともに提出します。
兵庫県警の案内に掲載された営業開始届出の手数料は3,400円です。この金額は兵庫県の案内によるものなので、他県で届け出る場合はその提出先の手数料を確認してください。住民票や登記事項証明書の取得費、行政書士へ依頼する場合の報酬は別です。
紙の届出書は1通を提出します。ご自身の控えも残しておくと、届出後の運用や変更時に内容を照合できます。証明書の発行時期、添付資料の扱い、予約・受付日時、支払方法は、取り寄せや訪問の前に提出先の案内で確かめておきましょう。
準備の目標日は営業開始日ではなく、その前にある提出期限です。必要な添付書類が欠けたまま届出書だけを出しても、届出義務を果たしたことにはなりません。書類をそろえて提出し、確認書の備付けや広告表示、従業者管理も整えた状態で営業開始を迎えます。
10日前という期限を、確認書が必ず10日で交付される期間と混同しないようにしてください。書類の不足や補正が必要になる場合もあるため、取得・作成の時間を含めて余裕を持たせます。根拠は施行規則第69条、費用の地域例は兵庫県警の案内です。
確認書・広告表示・従業者名簿を準備する
届出確認書は、届出があったことを示す書面です。事業全体の適法性を保証する許可証ではありません。交付を受けた確認書は事務所に備え付け、関係者から請求があれば提示します。
広告・宣伝では、18歳未満の者が、届け出た所定の電話番号に電話をかけてはならない旨を、定められた方法で明らかにします。文字による広告は見やすい表示、音声による広告は分かりやすい告知が必要です。広告に年齢制限を書けば、実際の利用時の年齢確認が不要になるわけではありません。
街頭広告などには法令・条例上の制限もあります。広告の媒体・掲出場所・表示内容を具体的にし、看板やビラ等の案を管轄警察署へ示して確認してください。兵庫県での地域や行為ごとの適用も、現行条例と実際の広告案を照らして判断します。すべての媒体が一律に禁止されるという説明にはなりません。
従業者を使用する場合は、事務所に従業者名簿を備えます。会話の相手となる人だけでなく、営業に係る業務に従事する人を対象に、住所・氏名・性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務内容を記載し、退職の日から3年を経過する日まで保存します。利用者双方の年齢確認とは、目的も対象も異なる準備です。
根拠:風営法第31条の17・第31条の18・第36条、施行規則第74条・第106条。
営業開始後も、変更・廃止の届出を忘れずに
呼称・電話番号・設備の概要・事務所所在地などの届出事項を変更したときは、変更の日から10日以内に変更届(第27号)、営業を廃止したときは廃止の日から10日以内に廃止届(第26号)を提出します。確認書や変更に関係する資料も、届出内容に応じて添付します。事務所の移転で公安委員会の管轄が変わる場合は、移転後の管轄へ届け出ます。
個人から法人にするなど営業者そのものが変わる場合は、単なる電話番号等の変更と同じには扱えません。新しい営業者による開始届出を含め、変更前に手続を整理してください。変更・廃止の期限等は、施行規則第70条が準用する第42条等に定められています。
準備が止まったら、何が決まっていないかを分けると次へ進みやすくなります。営業区分が不明なら、対象者・通話先・取次ぎの流れを、書類で迷うなら、営業者と物件の資料を、年齢確認で迷うなら、登録から取次ぎまでの運用案を用意して、管轄警察署の生活安全担当へ確認しましょう。
書類作成や届出準備を相談する場合も、これらの資料と開始希望日を伝えることで、ご自身で用意するものと依頼したい作業を分けられます。