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神戸のサクセスファン行政書士事務所

建設業の事業性評価|受注残・工事別採算・入金予定を銀行に伝える

「受注は増えているのに、お金が残らない」「銀行に工事の見通しを聞かれても、決算書だけでは説明しきれない」。建設業では、受注した金額、完成までの利益、実際に使えるお金を分けると、資金相談の理由が見えてきます。

まず整えたいのは、契約済み工事の一覧、完成までの原価見込み、日付の入った入出金予定です。その数字を支える技術、人員、協力会社との関係も一緒に説明します。

この記事では、既に事業を営む建設会社を中心に、資料の作り方と銀行への伝え方を紹介します。表と数字は独自の架空例です。金融機関の指定様式や、融資の合格基準ではありません。

支払日が迫っている場合は、全ての資料が完成するのを待たず、現在の預金残高、支払予定、工事代金の回収予定を持って取引金融機関へ相談してください。

建設業の事業性評価では、工事の中身と数字をつなぐ

建設業といっても、住宅改修、土木、電気設備などでは仕事の取り方や費用が異なります。元請か下請か、公共か民間か、自社施工か外注中心かによっても、同じ売上額の意味は変わります。

金融庁が公表する『業種別支援の着眼点』建設業編(2023年3月、冊子19〜24ページ)は、工事利益・原価構成と、人員や施工体制を結び付けて事業を理解する視点を示しています。金融機関による対話・支援の入口となる資料で、全国共通の審査配点を示すものではありません。

説明の順番は、次の四つに分けると整理しやすくなります。

  • どんな工事を、誰から受けているか:工種、取引先、受注経路、継続取引の状況。
  • その工事で、いくら利益が残りそうか:請負額、原価、当初予定からの変化。
  • 入金より前に、いくら支払うか:材料、労務、外注等の支払日と工事代金の回収日。
  • 予定どおり施工できるか:人員配置、協力会社、機械、工期、遅れへの対応。

例えば「技術力があります」だけでは、受注や採算との関係が分かりません。「稼働中の施設の改修を、休業範囲を抑えて施工できる。その経験から同じ発注者の別施設でも依頼が続いている」と説明し、過去の工事一覧や契約、工程計画で確かめられるようにします。これは説明の作り方の例であり、実在企業や当事務所の実績ではありません。

良い点だけを並べる必要もありません。特定の元請に受注が偏る、人員の空きが少ない、材料価格が上がったといった点も、影響する工事と対応を添えて説明します。

受注残は、契約状況と残る施工範囲から整理する

この記事では、契約済み工事のうち、これから施工する部分を受注残として整理します。 工事が終わっているのに、まだ入金されていない代金は別に管理します。

国土交通省の建設工事受注動態統計調査の用語定義でも、請負契約時点の受注と、進捗に応じた施工、基準日時点の手持ち工事を分けています。ただし、これは統計上の定義です。会社で使う受注残の算定方法や、会計上の売上計上方法を一律に定めるものではありません。

一覧には基準日を書き、同じ日の状態でそろえます。契約額の税込・税抜も混在させないようにしてください。

分ける状態一覧に書くこと確かめる資料
契約済み・未着手工事範囲、請負額、着工・完成予定、担当契約書、注文書・請書、工程計画
契約済み・施工中完了した範囲、残る作業、完成見込み、変更点工程表、現場の記録、変更合意の記録
見積提出・入札・交渉中見込額、進捗、受注判断の予定、未確定条件見積書、入札・商談の記録
追加・変更を協議中変更内容、増額の合意状況、追加原価、確認期限変更見積り、指示・協議の記録

見積りを出しただけの案件を、契約済み工事の合計に加えないことが大切です。「確定分では来月の人員が埋まるが、再来月の一部は交渉中」と分ければ、見通しの確かさも伝えられます。

受注残を金額で示す場合は、残る施工範囲をどのように金額へ換算したかを付記します。請負額から入金済み額を引いた数字を、そのまま受注残にしないでください。 前受金があっても工事が進んだことにはならず、工事が完了していても未入金の代金は残り得ます。

例えば別の工事で、請負額1,000万円のうち、契約内訳に照らして施工済み400万円分、これからの施工600万円分と集計するなら、受注残は600万円です。入金済み額が200万円でも、差額の800万円を受注残にはしません。これは管理上の簡単な例であり、施工済み400万円をそのまま会計上の売上に計上する説明ではありません。

また、「まだ請求していない額」と「請求済みで入金待ちの額」を別欄にします。後者には入金予定日と遅れの有無を付けると、単なる施工予定の説明から、回収状況の説明へつなげられます。

工事別採算は、当初予算と完成までの最新見込みを比べる

発生した原価だけを見ても、完成したときの利益は分かりません。これから必要になる材料、労務、外注、現場経費を足して、完成までの総原価を見積もります。

最新の総原価見込み=これまでに発生した原価+残る工事に必要な原価

工事利益の見込み=合意済みの請負金額−最新の総原価見込み

ここでいう工事利益は、説明のために工事へ対応する原価を差し引いたものです。会社共通の管理費や税金などを差し引いた最終利益、借入れの返済に使える現金とは区別します。

請負額1,200万円の工事を、完成前に見直す例

以下は架空のA工事です。金額は万円、税抜でそろえ、6月末を確認日とします。発生済み原価は、支払済みかどうかにかかわらず集計するのが基本です。未払いの請求書や、請求書が未着でも発生した原価を落とさないようにします。

原価の区分当初予算発生済み残る工事の見込み最新の合計
材料費300180150330
労務費18080110190
外注費360120240360
現場経費12040100140
合計9604206001,020

当初の利益は、1,200−960=240万円。最新の見込みでは、1,200−(420+600)=180万円です。請負額が同じでも、利益は60万円減っています。請負額に対する割合では、20%から15%への変化です。これらの率は説明用の計算結果で、望ましい利益率や審査基準を示していません。

「原価が上がった」で止めず、差額を原因と資料につなぎます。この例なら、材料費30万円増は仕入先の変更見積り、労務費10万円増は追加の作業日数、現場経費20万円増は使用期間が延びた機材等の見積り、と分けて示せます。

残る原価を確認するときは、発注済みでまだ計上していない分と、これから発注する分を分けます。発生済みの420万円に含めた費用を、残る600万円へ重複して入れないようにしてください。原価の発生状況だけで、現場の進捗率や会計上の売上額を自動的に決めることもしません。

追加工事の増額が、まだ合意できていない場合

追加請求できる見込みがあっても、合意済みの請負額と混ぜず、協議中の金額として記録します。一方、既に発生した追加費用や、完成までに必要となる追加原価は消せません。原価見込みへ反映し、増額の協議状況と合わせて説明します。

未合意の増額を足さないと赤字になるなら、その状態と対応が重要な情報です。見積りの提出日、相手の回答、残る争点、次に確認する日を残し、都合のよい入金を仮定して赤字を見えなくしないようにします。

変更工事の請求権や契約上の扱いに争いがある場合は、この管理表だけで法的結論を出さず、契約関係を整理して専門家に確認してください。

完成日と入金日を分け、先に必要になる資金を見る

工事の利益が出る予定でも、先に払う材料代や外注費を賄えるとは限りません。工事の完了、検査・検収、請求、入金は、それぞれの日付と条件を確認します。

金融庁の『逆引き着眼点』(2026年3月、冊子7ページ)も、完成払いか出来高払いかという契約条件と、実行予算・注文書を確認して資金需要を考える視点を示しています。

確認するのは「月末払い」という一言だけではありません。例えば次の点です。

  • 何を終えれば請求できるか。出来高確認、完了、検査・検収などの条件。
  • 請求の締日と提出期限。期限を過ぎたとき、入金がいつになるか。
  • 前受金や中間金があるか。実際の受取額と予定日。
  • 請求額の一部が留保される条件や、差引き項目があるか。
  • 振込予定日が確認済みか。遅れや金額の争いがないか。

工事利益180万円でも、途中の支払が先行する

先ほどの工事で、工事単独のお金の動きを次のように仮定します。金額は万円です。仕組みを示すため税金・会社共通費・借入れ・返済等を省略し、原価1,020万円が表の日付に全額現金で支出される簡略例です。実務の資金繰り表では、実際の税込入出金額と支払条件へ置き換えます。

日付内容入金支払この工事の累積入出金差額
6月5日材料等の先行支払0180−180
6月10日前受金の入金3000120
6月25日労務・外注等の支払0240−120
7月25日残る原価の支払0600−720
7月31日残代金の入金9000180
本文のA工事を図示した独自の架空例です。税・共通費・借入れ・返済等を省略し、原価を全額現金支出すると仮定。会社の必要借入額を示す図ではありません。

各行は、この工事の開始時を0として「前の差額+入金−支払」で計算しています。最後は1,200−1,020=180万円ですが、7月25日時点では入金より支払が累計720万円先行します。

工事単独の立替額と、借入必要額を分ける

720万円は、この例の工事単独の立替額であり、会社の預金残高でも、必要な借入額でもありません。 手元資金、他の工事の入出金、会社全体の経費・税金、既存の返済、新たな借入れの費用・返済まで、全社の表へまとめて判断します。

実際には、原価の発生と支払もずれます。6月の発生原価でも支払が7月なら、原価表は6月末までの発生分に含め、入出金予定は7月の支払へ入れます。未払い分を、原価がないものとして扱わないでください。

全社の表への移し方と、月の途中の不足を確かめる方法は、資金繰り表の作り方・記入例で説明しています。

資金繰り表の作り方・記入例|借入必要額と入金日を確認する方法

資金繰り表の作り方を、月次・日付別の記入例で解説。売上と入金、元金と利息の違い、必要な借入額と入金日、借入後の返済、入金遅れまで確認できます。

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入金が遅れる場合は、予定日を後ろへ動かして再計算します。原価が増えた場合は、金額も変えます。一時的な回収待ちなのか、工事自体の赤字なのかを分ければ、資金の手当てと採算改善を混同せず相談できます。相手との合意がないまま、支払日を先送りして表を成立させることは避けてください。

受注した工事を、今の人員・外注先・設備で進められるか

受注残が多いときほど、工事の重なる時期を確認します。受注額の一覧と、人員・機械の予定が別々のままだと、無理な配置や追加外注が、後から原価の増加として表れます。

まず、主要工事を横に並べ、着工、繁忙期、完成予定を書きます。その上で、次を確認してください。

  • 現場を管理する役割と担当が決まり、同じ時期に無理な重複がないか。
  • 自社で施工する範囲と、協力会社へ依頼する範囲が決まっているか。
  • 外注先の対応可能時期と見積条件を確認できているか。
  • 必要な機械は、保有・リース・レンタルのどれで用意するか。必要日に使えるか。
  • 工程が延びたとき、他の現場、人件費、機材費、請求日へどう影響するか。

人数を増やす計画だけでは、今月の工事に間に合うとは限りません。採用・教育・資格や経験、協力会社の確保まで、予定と確認済みの事項を分けます。法令や発注条件上の人員配置の適否は、工事ごとの条件で別途確認します。

強みも、ここへ結び付けます。例えば「協力会社が多い」なら、依頼できる工種、繁忙期の対応実績、調整する担当を説明します。「専用機械を持つ」なら、どの仕事に使い、どの程度稼働し、更新がいつ必要かを示します。

銀行への説明用資料は、まず役割・資格・人数など、事業の理解に必要な範囲で整理します。従業員の個人情報や取引先の秘密を含む資料を一式で渡す前に、求められている内容と、共有できる範囲を確認してください。

銀行への説明は、数字・理由・対応・未確定事項を一枚にまとめる

工事一覧、採算表、入出金予定ができたら、そのまま束にする前に、相談したい点を短くまとめます。先ほどの架空例なら、次のような書き方ができます。

「A工事の請負額は1,200万円です。6月末時点の完成までの原価見込みは1,020万円で、当初より60万円増えました。材料価格と作業日数、機材の使用期間が理由です。最新見積りと残る作業を照合し、工事利益は180万円を見込んでいます。

原価支払が残代金の入金に先行します。工事単独では7月25日に累計720万円の支払先行となるため、全社の資金繰り表に他工事・経費・返済を加え、実際に不足する額と必要日を示します。残代金の入金予定は7月31日です。請求条件と先方確認の記録を添付し、入金が遅れた場合の表も用意します。」

ここまでで、全社の不足額が未計算なら、借入希望額が決まったとは書けません。表を作った後に、「全社でいつ、いくら不足するか」「何の支払か」「入金・返済の見通しは何か」を追記します。

資料は次のように対応させると、数字の出どころをたどりやすくなります。

説明すること主に用意する資料次に更新する箇所
契約済み工事と残る仕事工事一覧、契約・変更合意、工程表受注、変更、完成見込み
利益の見込みと悪化理由当初実行予算、工事台帳、最新見積り発生原価、残る原価、差額の理由
入金までの支払請求条件、回収予定、支払一覧金額、日付、確認状況
工事を遂行する体制配置計画、協力会社・設備の予定重複、確保状況、代替策
会社全体の資金決算書、試算表、資金繰り表、返済予定現預金、他工事、経費、税・返済

これらが全ての金融機関で必須という意味ではありません。初回は手元にある資料と未整理の項目を伝え、必要な期間・形式・追加資料を相談先へ確認します。

改善策は「原価管理を徹底する」だけで終わらせず、誰が、いつ、何を確認するかまで書きます。例えば「現場責任者が毎週、残る発注予定を経理担当へ渡し、資材単価と工期の変更を翌週の見込原価へ反映する」とすれば、確認すべき行動が分かります。頻度は会社の工期や変化の速さに合わせて決めるもので、一律の報告義務ではありません。

決算書全体の変化を説明する方法は、決算書・試算表の数字を銀行に伝える記事も参考にしてください。

決算書・試算表を銀行に説明するには|数字の増減と原因のまとめ方

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まずは一つの工事で、原価と入金予定を照合する

最初から全ての工事を精密に作り直す必要はありません。まず、資金負担が大きい工事、利益が当初より減っている工事、完成・入金が近い工事の中から一つ選びます。

  1. 契約済みの金額・範囲と、残る作業を確認する。
  2. 発生済み原価に残る原価を足し、完成時の利益見込みを更新する。
  3. 請求・入金と支払の日付を並べ、全社の資金繰りへ移す。

一つで集計方法をそろえたら、同じ基準で他の主要工事へ広げます。工事別の合計と全社の帳簿に差があるときは、集計時点、共通費の扱い、計上漏れ・重複を確かめ、会計処理が関係する部分は顧問税理士等と確認します。

工事を受けられる理由、利益が変わる理由、お金が必要になる理由がつながることが、事業の説明を具体的にします。数字をよく見せるより、確認できる材料と、まだ分からない点を分けて伝えましょう。

資金相談全体の準備順は、事業性評価融資の総合ガイドで整理しています。企業価値担保権の利用を前提にせず、現在の取引や事業の状況から相談できます。

事業性評価融資の総合ガイド|準備資料と金融機関への相談の進め方

事業性評価融資の考え方と、金融機関に伝える強み・資金使途・返済の見通しを解説。準備資料、ローカルベンチマーク、経営デザインシート、担保・経営者保証との違い、相談から融資後までの流れを整理します。

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出典・作成方針:金融庁『業種別支援の着眼点』建設業(2023年3月)、『逆引き着眼点』(2026年3月)、国土交通省の統計用語定義を参考に、説明・表・架空例を独自に作成しています。公式資料の図表転載ではなく、金融庁の公式書式・融資審査基準でもありません。資料と現行掲載状況は2026年11月に確認しました。