3号警備は、運搬中の現金・貴金属・美術品などを盗難等から守る業務です。現金輸送が代表例ですが、対象は現金だけではありません。開業準備では、何を運ぶのか、警備と運送のどこまでを請け負うのかを先に決めます。
特に現金の運搬警備では、会社に資格者が1人いればよいわけではなく、現金を運ぶ車両ごとの資格者配置を考える必要があります。営業所の指導教育責任者と、現場へ配置する検定合格警備員も別の確認項目です。
この記事では、3号警備の仕事内容、通常の運送との境界、現金輸送の資格者配置、受注前の準備を整理します。認定申請の共通要件・必要書類は警備業認定の総合ガイドをご覧ください。
3号警備とは|運搬中の物を守る警備
受けたい仕事を、次の順に整理します
① 運ぶ物は何か
現金 / 貴金属・美術品等 / 特別な取扱いが必要な物
↓
② どこまで請け負うか
警備のみ / 運送と警備 / 保管・施設警備も含む
↓
③ 必要な体制を確認
3号の指導教育責任者 + 対象業務の資格者配置 + 運送等の別手続
現金運搬は「車両ごと」の資格者配置を確認。物の価値だけで、警備業への該当性を決めないことが大切です。
現金だけでなく、貴金属・美術品なども対象
警備業法第2条第1項第3号は、運搬中の現金・貴金属・美術品等について、盗難等の事故を警戒し、防止する業務を対象にしています。他人の依頼に応じてこの業務を営む場合は、警備業の認定が必要です。
たとえば、店舗の売上金や展示会へ移動する美術品を、運搬中の盗難から守る仕事が考えられます。ただし「高価な物を配送する」という事実だけで、すべての配送が3号警備になるわけではありません。契約で担う役割と、実際の仕事の内容を確認します。
保管中の警備や、人の警護とは分けて考える
施設に保管されている物を守る警備と、運搬中の物を守る警備では、業務区分の確認が変わります。倉庫での警備も継続して受ける契約なら、1号警備を含むかを整理してください。また、貴重品を持つ人の身体への危害を防ぐ仕事は、物の運搬警備だけでは説明できません。
区分の全体像は警備業の1号・2号・3号・4号の比較、施設内の仕事内容は1号警備の解説で確認できます。
通常の運送と3号警備の境界を確認する
運送会社が荷物を紛失・盗難から守るために行う通常の管理と、独立した警備業務として引き受ける運搬警備は、同じ扱いとは限りません。
警察庁の解釈運用基準では、運送会社が通常の運送業務に必要な範囲で自社の従業員や車両を使い、積卸しに伴う盗難を防ぐ程度の業務は、警備業務に当たらない例として示されています。一方で、「運送の付随サービス」という名称だけで、警備業の認定が不要になるわけではありません。
- 依頼者が求めるのは配送そのものか、運搬中の警戒・事故防止か
- 契約書や見積書では、警備の役割をどのように記載するか
- 自社は荷物を運ぶのか、他社が運ぶ荷物の警備をするのか
- 集荷前・引渡し後の保管や施設警備まで引き受けるか
相談するときは「貴重品の配送を始めたい」だけでなく、上の内容をまとめて管轄警察署へ伝えると、確認すべき区分を絞りやすくなります。
確認先:警察庁「警備業法等の解釈運用基準」(第2・警備業務の解釈)
3号の指導教育責任者と現場の検定資格は別のもの
3号警備を扱う営業所では、3号に対応する警備員指導教育責任者を選任します。営業所で指導・教育を担当するための資格者証と、運搬警備の現場配置で確認する検定合格証明書は、役割が異なります。
| 確認する資格・証明書 | 確認する場面 |
|---|---|
| 警備員指導教育責任者資格者証・3号 | 3号を扱う営業所の責任者選任 |
| 貴重品運搬警備業務の検定合格証明書 | 現金を運搬する車両ごとの資格者配置 |
| 核燃料物質等危険物運搬警備業務の検定合格証明書 | 対象となる物質の運搬について、別の配置基準を確認 |
指導教育責任者資格者証があることだけで、現金運搬車両の検定資格者配置を満たすとは判断できません。反対に、貴重品運搬の検定合格証明書を持っているだけで、3号の指導教育責任者に選任できるとも限りません。必要な証明書の種類と交付状況を分けて確認してください。
現金輸送では、現金を運ぶ車両ごとに資格者が必要
現金に係る貴重品運搬警備業務では、現金を運ぶ車両ごとに、貴重品運搬警備業務の1級または2級の検定合格証明書の交付を受けた警備員を1人以上配置します。会社全体で1人、または同行する別の車両に1人という数え方ではありません。
たとえば現金運搬車両2台を同時に運用する計画なら、それぞれの車両について配置を確認します。資格者が休む日の代替要員まで含めて、受けられる業務量を考えることが必要です。
この「1人以上」は、検定合格警備員の配置人数の基準です。車両の総乗務人数が1人で十分だという意味ではありません。実際の警備体制は、運搬対象・契約内容・業務上の安全確保に応じて検討します。
美術品や貴金属にも、同じ義務があるのか
この車両ごとの配置規定は、貴重品運搬警備業務のうち「現金に係るもの」に限定されています。美術品や貴金属の運搬すべてに、同じ規定がそのまま当てはまると広げて説明することはできません。
ただし、現金でなければ警備業認定・指導教育責任者・警備員教育が不要になるわけではありません。発注者の契約条件や入札条件で資格者等が求められる場合もあるため、法令上の基準と契約上の条件を分けて確認します。
核燃料物質等の運搬は、別の専門的な確認が必要
3号には核燃料物質等の危険物の運搬警備も含まれますが、貴重品運搬とは別の検定種別・配置基準があります。防護対象特定核燃料物質については、同行車両のいずれかに当該種別の1級資格者、その他の対象車両ごとに当該種別の1級または2級資格者を配置する基準です。
一般的な現金輸送の体制を、そのまま転用できるとは考えないでください。取り扱う物質に関する別法令も含め、受注前に専門的な確認が必要です。この記事では、一般的な貴重品運搬の開業準備を中心に扱います。
開業・受注前に整理する5つの準備
1.営業所と3号の責任者を準備する
新たに警備業を始めるときは、認定を受けてから営業を開始します。既存の警備会社が3号へ業務を広げる場合も、取り扱う営業所の責任者・教育・変更届等を確認し、従来の区分の体制だけで開始しないようにします。
2.資格者配置と警備員教育を計画する
現金輸送なら車両別の資格者配置、その他の運搬でも業務に必要な人員と教育を計画します。免除・短縮の対象でない警備員は、基本教育と業務別教育を合わせて新任20時間以上、現任は年度ごとに10時間以上が基本です。資格や経験によって扱いが異なるため、全員一律とはしません。
必要な新任教育を終えてから現場に配置する日程にします。施設警備や交通誘導の経験だけで、貴重品運搬の業務別教育も済んでいると判断しないことが大切です。
確認先:警視庁「警備員に対する教育時間」
3.運送も請け負うなら、運送事業の手続きを別に確認する
警備業認定は、運送事業の許可等を代わりに満たすものではありません。他人の需要に応じ、有償で自動車による貨物運送を事業として行う場合は、事業形態に応じた許可・届出等の確認が必要です。
自社は警備だけを担うのか、荷物の運送も担うのかを整理し、運送については地方運輸局・運輸支局へ確認します。「運送料は別に請求しない」という料金の見せ方だけで判断しないでください。一方、警備のみを請け負う会社に、運送事業の許可が一律に必要になるという意味でもありません。
4.引受範囲・責任・記録を契約で明確にする
運送、警備、保管の担当を分け、どこからどこまで自社が受け持つかを明確にします。引渡しの記録、事故発生時の連絡先、損害賠償に関する事項、保険で確認する範囲も、受注前の検討項目です。保険に加入すれば、あらゆる損害が補償されると説明しないようにしてください。
警備業法第19条に基づく契約締結前・締結後の書面交付も準備します。法定の条件を満たした電磁的方法を使う場合は、依頼者の承諾等を確認します。見積書だけで当然に済むとは考えないことが必要です。
確認先:e-Gov法令検索「警備業法」(第19条・第21条・第22条)
5.依頼者と必要な情報を安全に共有する
相談の初期段階では、運ぶ物の種類、運送を担う会社、予定する業務の範囲、営業所、人員・資格の状況を整理すれば、論点を絞れます。具体的な運行時刻・経路・警備上の手順などは、関係者の間で適切に管理すべき情報です。公開ページや不特定多数が閲覧できる資料へ、必要以上に載せないようにしてください。
3号警備でよくある質問
貴重品運搬の2級資格があれば、すぐ独立開業できますか?
資格だけで開業できるわけではありません。警備業認定、営業所の3号指導教育責任者、教育・配置体制などを別に整える必要があります。運送も請け負う場合は、その制度の確認も必要です。
美術品の運搬なら、認定は不要ですか?
美術品も3号警備の対象例です。現金に限定した資格者配置の規定と、警備業への該当性は別の問題です。通常の配送なのか、運搬中の警戒・事故防止を業務として請け負うのかを確認します。
1号や2号の認定がある会社なら、3号もそのままできますか?
警備業認定があることだけで、3号に必要な体制が整うわけではありません。3号の責任者選任、業務別教育、対象となる検定資格者の配置、業務区分の変更届等を確認してください。
3号警備の準備は、運ぶ物と請け負う範囲の整理から
現金・美術品等の運搬警備を始める際は、「誰が運び、誰が何を守るのか」を整理するところから準備を進めましょう。サクセスファン行政書士事務所へのご相談では、扱う物の種類、営業所、現在の資格者・人員体制をお伝えください。警備業認定や業務区分の整理など、申請準備について確認したい点をまとめやすくなります。