農業用ドローンを使うとき、「自分の田畑なら許可はいらない」「二等の資格を取れば農薬を散布できる」と考えていませんか。散布する場所だけでなく、機体・操縦者・飛ばし方・安全管理の条件を確認する必要があります。
農薬散布には、必要な許可・承認を申請する進め方と、機体認証・技能証明などの所定の要件を全て満たして承認不要の扱いを利用する進め方があります。「農地で4m以下」という条件だけで、手続きが不要になるわけではありません。
この記事では、マルチローター型ドローンで農薬散布を行う生産者・受託事業者に向け、2026年の国土交通省通達に基づく判断の順番と、農薬使用・周辺への配慮を整理します。
最初に、通常の申請と承認不要の条件を分ける
農薬を積載して散布する場合は、危険物輸送・物件投下について承認の要否を確認します。さらに、目視外、夜間、人や物件との距離、人口集中地区(DID)など、実際の飛行に当てはまる条件も確認します。
| 進め方 | 確認すること |
|---|---|
| 必要な許可・承認を申請する | 機体の性能、操縦者の知識・能力、散布する場所・方法、安全体制を整理して申請する |
| 所定の要件を満たし、承認不要の扱いを利用する | 機体認証、国家資格、重量、区域・高さ、飛行方法、訓練、立入管理など、通達の全要件を照合する |
国土交通省は、2026年3月23日制定・施行の農薬散布等で飛行方法の承認が不要となる取扱いで、具体的な要件を定めています。対応する航空局飛行マニュアルは、2026年5月29日版です。
承認不要の要件を満たさない場合も、直ちに散布そのものができないと決まるわけではありません。予定する飛行に必要な許可・承認を確認し、通常の申請で機体・操縦者・安全体制の審査を受ける進め方を検討します。
許可・承認の全体像は、ドローン飛行許可・承認の総合ガイドをご覧ください。
-
-
【全国対応】ドローンの飛行許可・承認申請サポート|手順と注意点
ドローンの機体登録と飛行許可の違い、3つの飛行カテゴリー、DIPS2.0での申請、レベル3.5飛行の要件を解説。全国共通の制度と、土地・施設ごとの手続きを分けてご案内します。
農薬散布に国家資格は必須か
通常の申請では、資格の有無だけで判断しない
農薬散布を行う人全員に、一律に一等・二等の国家資格が義務付けられているわけではありません。通常の許可・承認申請では、技能証明がない場合にも、飛行経歴や知識・能力を確認する審査の仕組みがあります。
機体認証がない機体についても、必要な機能・性能を確認する申請方法があります。ただし、資格や認証がないまま自由に散布できるという意味ではありません。対象となる飛行の審査基準を満たし、必要な許可・承認を受けることが前提です。
民間講習の修了証と、航空法上の国家技能証明は区別してください。講習の受講だけで許可・承認や、後述する承認不要の要件が全て満たされるわけではありません。現行の扱いは国土交通省の申請案内・審査要領で確認できます。
承認不要の扱いを使うなら、国家資格と機体認証が必要
2026年の通達を利用する場合は、飛行させる機体の種類に対応した一等または二等の技能証明と、第一種または第二種の機体認証が必要です。
ここでいう機体認証は、機体登録とは別の制度です。登録記号を取得しただけでは、機体認証を受けたことにはなりません。また、認証の有無だけでなく、行う飛行方法に必要な機能・性能が認証審査で確認されているかも確認します。
たとえば、危険物輸送には対応する装備、物件投下には不用意に投下しない機構、夜間飛行には機体の向きを確認できる灯火などが必要です。機体の認証内容と飛行規程を、予定する散布方法に照らして確認してください。
承認不要の扱いは、機体・人・区域・体制をそろえて判断する
次の表は、通達で定める主要な確認点です。これだけで全ての条件を判定するものではなく、通達と適用する飛行マニュアルの全文に照らした確認が必要です。
| 確認項目 | 主な条件・注意点 |
|---|---|
| 機体と操縦者 | 機体認証、該当する種類の技能証明、飛行方法に応じた装備や限定変更が必要 |
| 飛行する区域 | 操縦者その他の関係者が所有・管理し、現に農業・林業に使われている農地・森林等の対象区域内 |
| 高さ | 地表・水面または農作物等の上端から4m以下。ただし、散布方法の安全条件も別に守る |
| 飛行方法 | 催し場所上空は対象外。夜間・目視外では自動操縦などの条件がある |
| 機体の安全機能 | 飛行範囲の制限、不具合時の安全確保など、所定の機能を使用する |
| 第三者への安全 | 第三者上空を飛ばさず、経路下に第三者の物件がないこと、立入管理等の条件を確認する |
| 訓練・運用 | 技量維持、投下・散布の練習、飛行マニュアルの作成・遵守、天候や周辺状況の確認などが必要 |
作業を発注する農地の所有者なども、通達で定める関係者に含まれる場合があります。ただし、どの農地・道路でも自由に対象区域へ含められるわけではありません。農林道等を含める場合にも、農地・森林との関係や、一般交通に使われていないことなどの条件を確認します。
操縦者については、通常の操縦技量を維持するほか、物件投下や空中散布の5回以上の練習など、飛行方法ごとの条件があります。散布の訓練は実際の農薬ではなく、危険物に該当しない水などを使用し、通達で認められる訓練場所で行います。
総重量25kgの条件は、飛行方法ごとに確認する
この通達で夜間・目視外・人または物件から30m未満の飛行を承認不要とするには、機体の総重量が25kg未満であることが必要です。25kg以上の限定解除を持っているだけでは、この条件を満たしません。
危険物輸送・物件投下を行う総重量25kg以上の機体では、技能証明の該当する限定変更や、十分な補償額を備えた第三者賠償責任保険など、別の要件も確認します。全ての飛行方法に同じ重量条件を当てはめないようにしてください。
機体カタログの最大離陸重量と、通達の「総重量」を読み替えず、実際の機体・搭載物と認証条件を整理します。通常のカテゴリーII申請についても、総重量25kg以上の飛行に係る保険要件を確認する必要があります。
DIDの許可や、空港周辺などの確認も残る
農薬散布の承認不要の条件と、飛行する空域の許可は分けて判断します。
通達は、DIDでの飛行についても許可不要となる条件を設けていますが、飛行方法に関する要件に加え、総重量25kg未満、接触時の危害を軽減する機能の認証上の確認、補助者の配置等が必要です。
農薬散布の承認が不要だからといって、空港周辺や緊急用務空域など、他の空域の規制までなくなるわけではありません。土地・施設の管理ルールや、他の法律による規制も別に確認します。
補助者を置かない場合も、立入管理は省略できない
目視外飛行では、必要な人数の補助者を配置します。自動操縦であることを理由に、補助者や周辺監視が不要になるわけではありません。
農薬散布で危険物輸送・物件投下を行う場合は、目視内であっても原則として必要な人数の補助者を配置します。配置が困難な場合に、フェンス、看板、コーンなどによって第三者の立入りを確実に制限するなど、通達・マニュアルで定める条件を満たすことで、補助者に代わる方法を使えます。
立入管理区画は、機体の位置誤差や落下距離を考慮して設定します。メーカーの取扱説明書等を確認し、「畦にコーンを置けば十分」「一律に数m離せばよい」と判断しないでください。
飛行中に第三者が入ったときは、速やかに飛行を中止します。通達には、雨や雨が予想される場合は飛行させないこと、風速5m/s以上の突風など、安全に飛行できなくなる事態では直ちに中止することも定められています。これより風が弱ければ常に安全という意味ではありません。
第三者の往来が多い場所、交通量の多い道路、高圧線等の付近など、飛行させない場所の条件もあります。対象地の周辺環境と飛行方法を、通達・マニュアルに照らして確認してください。
農薬の使用基準と、周辺への配慮は別に守る
ラベルとメーカーの散布条件を確認する
航空法上の許可・承認や承認不要の条件を満たしても、使用する農薬の選択や使い方まで認められたことにはなりません。
登録された農薬について、対象作物、使用時期、使用量、希釈倍数などの使用基準と、ラベルの注意事項を確認します。農林水産省は、無人航空機による散布等の登録がある農薬に加え、散布機器を指定していない使用方法でも、全ての使用基準を守れる範囲で利用できると案内しています。
使用可否は商品名だけで判断せず、農林水産省の農薬登録・使用方法の案内と、実際に使用する農薬の表示を確認してください。
機体メーカーが定める散布の高さ・速度・気象条件等も確認します。通達の「4m以下」は、農薬の飛散を防ぐために、その高さでの散布を一律に推奨する数字ではありません。農薬と機体に適した方法で安全を確保できない場合は、散布を見合わせます。
住宅、学校、隣接作物、養蜂などへの影響を確認する
周辺の住宅・学校、隣接する作物、有機栽培の圃場、養蜂・養殖等への影響を確認し、散布区域や除外する場所を整理します。薬剤が風に流されるドリフトへの対策も必要です。
農林水産省のマルチローターによる農薬空中散布の安全ガイドラインに沿って、周辺の関係者へ、予定日時、目的、使用する農薬の種類、連絡先等を余裕を持って周知します。予定が変わったときの連絡方法も決めておきます。
受託散布では、発注者と受託者のどちらが周辺確認・周知・当日の連絡を担当するか、事前に分担を明確にしましょう。
事故や被害が生じた場合は、散布を中止し、救護や被害拡大の防止などを優先します。農薬の飛散・流出等の事故は都道府県の農薬指導部局へ、航空事故・重大インシデントは国土交通省へ、それぞれ必要な報告・対応を確認してください。
散布前にそろえる資料と、飛行前後の記録
手続きや体制の相談をするときは、次の情報をまとめます。
- 機体: 機種、登録記号、総重量、機体認証の有無・内容、取扱説明書・飛行規程
- 操縦者: 技能証明と限定の内容、飛行経歴、散布・投下の訓練状況
- 場所・方法: 地図、対象農地、経路、高さ、日時、目視内・目視外等の方法
- 安全管理: 補助者と立入管理、保険、周辺施設・作物への影響と周知方法
- 農薬: 使用する製品とラベル、対象作物、使用方法、メーカーの散布条件
承認不要の扱いを利用する場合も、特定飛行に当たるため、飛行計画の通報と飛行日誌の備付け・記載が必要です。散布の実績だけでなく、機体の点検・整備も記録します。具体的な対象と記録方法は、飛行計画通報と飛行日誌のガイドで確認できます。
-
-
ドローンの飛行計画通報と飛行日誌|必要な対象・書き方・保管のポイント
.drone-guide-article{--dg-ink:#173f48;--dg-soft:#eef7f7;--dg-accent:#227e83} .drone-guide-article h2 ...
通常の申請を行う場合の準備は、DIPS2.0の飛行許可申請準備ガイドをご覧ください。
-
-
DIPS2.0の飛行許可申請で準備するもの|必要情報・補正・許可書の確認
.drone-guide-article{--dg-ink:#173f48;--dg-soft:#eef7f7;--dg-accent:#227e83} .drone-guide-article h2 ...
サクセスファン行政書士事務所では、予定する散布方法に応じた航空法上の許可・承認の確認と申請手続きをサポートします。相談をご希望の方は、機体・操縦者・対象農地・散布方法の情報をそろえ、お問い合わせフォームまたは電話078-201-4009へご連絡ください。