産業廃棄物の自社運搬は許可不要?表示や書類のルールを完全解説

産業廃棄物の自社運搬は許可不要?表示や書類のルールを完全解説

行政書士 小野
こんにちは

産廃許可の実績豊富な行政書士の小野馨です。

産業廃棄物の自社運搬を検討している事業者の方から、許可が必要なのかどうかやマニフェストの扱いに関する質問をよくいただきます。

コスト削減のために自社のトラックで現場のゴミを運びたいけれど、法律違反になってしまわないか不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

実は許可が不要だとしても守るべきルールは非常に細かく、車両への表示義務や書面の携帯を忘れると厳しい罰則を受ける可能性があります。

それを正しく認識して、罰則を回避できるようにしましょう!

  • 自社運搬を行うための法的な4大要件と建設業の特例
  • 車両への表示サイズや携帯すべき書類の具体的な書き方
  • 白ナンバートラックでの運搬に潜む白トラ行為のリスク
  • 自社運搬と業者委託のどちらが得か判断するコスト基準

産業廃棄物の自社運搬に必要な許可やルール

「自分の会社のゴミを自分で運ぶだけだから、誰の許可もいらないだろう」と安易に考えてしまうのは自然なことですが、産業廃棄物の世界ではその「自己判断」こそが、企業の存続を脅かす一番の落とし穴になります。

公道を走るトラックは常に警察や行政の監視下にあり、適切な知識なしに運搬を行うことは、無免許運転にも等しい危険な行為だと言えるでしょう。

ここでは、法的に自社運搬が認められるための極めて厳格な条件と、現場のドライバーが検問や行政指導を無事にクリアするために装備すべき具体的なアイテムや書類について、実務レベルで徹底的に解説します。

これを知らずにキーを回すのは絶対にやめてくださいね。

収集運搬業許可は原則不要でも基準がある

まず結論から明確にお伝えすると、排出事業者自らが排出した産業廃棄物を自ら運搬する場合、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要です。これは、廃棄物処理法の根幹にある「排出事業者責任」という原則に基づいています。

「自分が汚したものは自分で片付ける」というのが法の基本スタンスであり、許可制度はあくまで「他人から依頼を受けて、ビジネス(業)として他人のゴミを運ぶ場合」に必要な免許だからです。

したがって、自社のゴミを運ぶ行為自体は「業」に当たらないため、許可の対象外となるのです。

しかし、ここで多くの方が勘違いしてしまう非常に危険なポイントがあります。

それは、「許可が不要=自由に運んでいい=規制がない」という誤った解釈です。

これは大きな間違いです。

許可は不要ですが、その代わりに許可業者と同等、あるいはそれ以上に厳しい「処理基準(収集運搬基準)」を遵守する義務が課せられています。

ココに注意

法律は「許可はいらないが、運ぶならプロと同じクオリティで安全に運べ」と言っているのです。

参考

具体的には、運搬中の廃棄物が飛散・流出しないように措置を講じること、悪臭や騒音で生活環境を害さないことなどが求められます。

もし、運搬中に汚水を垂れ流したり、ゴミを道路に散乱させたりすれば、たとえ自社運搬であっても即座に「改善命令」や「措置命令」の対象となり、最悪の場合は刑事罰に問われることもあります。

自社運搬が認められる4つの絶対条件

法的に「自社運搬」として認められるためには、以下の4つの要素がすべて完全に「自社」に帰属していなければなりません。

これらの一つでも欠落した場合、それは「自社運搬」ではなく「他社への委託(場合によっては無許可業者への委託)」とみなされ、法違反となります。

  • 廃棄物(排出者):自社の事業活動から発生したゴミであること。他社のゴミを混ぜてはいけません。
  • 車両:自社が保有し、使用権限を持つ車であること。車検証の「使用者」欄が自社名義であることが必須です。
  • 運転者:自社と直接の雇用関係にある社員または法人の役員であること。派遣社員や個人事業主への運転委託はNGです。
  • 運搬先:適正な処理委託契約を結んでいる処分場、または自社が所有する中間処理施設・最終処分場であること。
 

実務でよくある違反ケースとして、「従業員の個人の車で運ばせた」とか、「忙しいから知人の運送会社のトラックを借りて、運転手ごと手配した」といった事例があります。

これらはすべてアウトです。

ココに注意

特に車両に関しては、車検証の使用者欄が自社名義になっていることが絶対条件です。

レンタカーを使用する場合は、「わ」ナンバーであっても、賃貸借契約書を携帯し、自社が借り受けて管理していることを証明できれば認められますが、自治体によっては事前の相談を求めているケースもあるので注意してください。

建設業の下請けが行う運搬は違法か

建設業界において、長年にわたり最もトラブルが多く、かつ逮捕者が出やすいのが「下請け業者による自社運搬」の問題です。

「現場のゴミは誰のものか?」という問いに対して、廃棄物処理法は明確な答えを持っています。

注意ポイント

法第21条の3により、建設工事に伴って生じる廃棄物の排出事業者は、原則として「元請業者」であると定義されています。

つまり、現場で出た木くずや廃プラスチックは、たとえ下請け業者が作業で出したものであっても、法律上は「元請業者のゴミ」として扱われます。

したがって、許可を持っていない下請け業者が、元請けのゴミを自分のトラックに積んで処分場まで運ぶ行為は、「他人の産業廃棄物を無許可で運搬した」ことになり、無許可営業(廃棄物処理法違反)として処罰の対象になります。

これは「親切心でついでに運んであげた」とか「昔からの慣習だから」という言い訳が一切通用しない、非常にシビアな領域です。

例外的に認められるケースもありますが…

ただし、リフォーム工事などの小規模な現場の実態を考慮し、以下の厳格な条件をすべて満たす場合に限り、例外的に下請け業者が排出事業者とみなされ、自社運搬が可能となる特例があります(平成22年の改正法)。

  • 請負代金の額が500万円以下の軽微な工事であること(維持修繕工事など)。
  • 解体工事や新築工事、増築工事ではないこと。
  • 特別管理産業廃棄物(爆発性、毒性、感染性のあるものや廃石綿等)ではないこと。
  • あらかじめ元請負人が、下請負人が運搬を行うことを書面で承諾していること。
  • 1回に運搬する廃棄物の量が「1立方メートル(1m³)」以下であること ※軽トラック1台分(約0.35m³)〜 ハイエース満載くらいまでが限界
 

ココに注意

この例外規定を適用するためには、ただ条件を満たすだけでなく、工事請負契約書等の書面に明確な記載が必要です。

しかし、実務上では「この工事は500万円以下か?」「これは修繕工事か、それとも一部解体を含むのか?」といった判断が非常に難しく、現場のドライバーが即座に判断するのはリスクが高すぎます。

また、もし条件を一つでも満たしていないのに特例を適用して運搬してしまった場合、元請け業者も「委託基準違反」として巻き添えを食う形で処罰される可能性があります。

そのため、コンプライアンスを重視する大手ゼネコンやハウスメーカーでは、この例外規定の使用を認めず、「下請けによる運搬は一律禁止」という社内ルールを設けているところが多いのが実情です。

基本的には「下請けは運べない」と考えておいた方が、会社を守るためには安全策だと言えるでしょう。

車両への表示義務とマグネットのサイズ

自社運搬を行っている車両は、外見からして「産業廃棄物を適法に運んでいる車両である」ことが一目で分かる状態でなければなりません。

これは、不法投棄の監視を行っている自治体のパトロールカー、警察、そして一般市民に対する証明書のような役割を果たします。

何も表示せずに、あるいは適当な紙に手書きをしてガムテープで貼ったような状態で産廃を運ぶことは、即座に表示義務違反となり、行政指導の対象となります。

環境省のガイドラインおよび廃棄物処理法施行規則では、車両への表示について非常に細かい規格が定められています。

これを知らずに「社名が書いてあるからいいだろう」と思っていると痛い目を見ますよ。表示は必ず車体の両側面に行う必要があります。運転席のドアや、トラックの荷台のアオリ部分などが一般的です。

表示項目文字サイズ規格詳細・注意点
産業廃棄物収集運搬車1文字の高さ5cm以上最も重要な識別表示です。「産廃運搬車」や「産廃収集車」といった略称は認められません。一字一句正確に記載してください。
氏名又は名称1文字の高さ3cm以上法人の場合は登記されている正式名称、個人の場合は氏名が必要です。「○○商店」のような屋号だけでは不可で、氏名との併記が求められます。

さらに重要なのが「鮮明に表示すること」という要件です。

注意ポイント

例えば、黒いトラックの車体に濃い青色の文字で表示しても、遠くから見えなければ意味がありません。また、工事現場を出入りするトラックは泥汚れが付きものですが、泥で文字が隠れてしまっている状態も違反とみなされる可能性があります。

常に読み取れる状態をキープすることが大切です。

実務的なソリューションとして最も普及しているのが、強力マグネットシートの活用です。

これなら、普段は資材運搬に使っているトラックを、産廃を運ぶ時だけ「産廃仕様」に切り替えることができます。

ただし、高速道路を走行中に風圧で飛んでいってしまう事故が後を絶ちません。

ホームセンターやAmazonで注文する際は、必ず「車両用」と明記された、磁力が強力なタイプを選んでください。

万が一の紛失に備えて、予備のシートを車内に常備しておくのもプロの知恵です。

詳細な表示ガイドラインについては、環境省の公式資料も必ず一度目を通しておいてください。

(出典:環境省『産業廃棄物収集運搬車への表示・書面備え付け義務について』)

携帯すべき書類とマニフェストの書き方

車両の外側の表示ができたら、次は車内の準備です。

産業廃棄物を運搬している最中のドライバーは、法律で定められた特定の事項を記載した書面を常に携帯する義務があります。

これは、警察の検問や路上の抜き打ち検査で止められた際に、最初に提示を求められるものです。

もしこの書面を持っていなかったり、記載内容に不備があったりすると、その場で30万円以下の罰金の対象となります。

「会社に忘れました」「後でFAXします」は一切通用しません。

携帯すべき書面(自社運搬時の携帯書面)には、以下の5つの項目が必ず記載されていなければなりません。

  1. 運搬する産業廃棄物の種類と数量:(例:廃プラスチック類 2立米、がれき類 0.5立米 など。目分量でも構いませんが、具体的な数字が必要です。)
  2. 運搬を開始した日(積載日):(例:2025年12月14日。いつ積み込んだかが重要です。)
  3. 積載した場所(排出事業場)の名称・所在地・連絡先:(どこの現場から出たゴミなのかを特定する情報です。)
  4. 運搬先の場所(処分場)の名称・所在地・連絡先:(どこへ持っていくのか。ここが不明確だと不法投棄を疑われます。)
  5. 運搬を行う者の氏名又は名称・住所:(自社の情報です。)

マニフェストを携帯書面として使うのが裏ワザ

法律上、自社運搬そのものには「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」の交付義務はありません。

マニフェストは本来、他人に処理を委託する際に、ゴミの流れを管理するための伝票だからです。

しかし、上記の5項目を網羅した専用の書面を毎回作成するのは非常に手間がかかります。

そこで実務の現場では、「マニフェストに必要事項を記載して、それを携帯書面として代用する」という運用が定着しています。

具体的には、マニフェストのA票(排出事業者控え)等の各欄に必要事項を記入し、ドライバーに持たせます。この際、マニフェストの「運搬受託者」の欄には、他社の名前ではなく「自社運搬」と記載するか、空欄または斜線を引いておくのがポイントです

(自分の名前を書いても間違いではありませんが、混乱を避けるため「自社運搬」と明記するのがベストです)。

こうすれば、処分場に到着した際の引き渡しもスムーズですし、新たに書類を作る手間も省けます。

処分業者との委託契約書は事前に締結

「自社のトラックで運ぶのだから、誰とも契約する必要はないだろう」というのは、非常に危険な思い込みです。運搬は自社で行うとしても、最終的にその廃棄物を受け入れて、焼却したり埋め立てたりするのは、他社である「処分業者」ですよね。

廃棄物処理法では、処理(運搬または処分)を他人に委託する場合、あらかじめ書面による委託契約を結ぶことを義務付けています。

つまり、処分業者との「産業廃棄物処分委託契約」は、ゴミを運び出す前に必ず締結完了していなければなりません。

よくあるトラブルとして、「いきなり処分場にゴミを持ち込んで、その場で現金を払って捨てようとする」ケースがありますが、コンプライアンスを遵守しているまともな処分場であれば、契約書のない搬入は100%断られます。

なぜなら、契約書なしで受け入れると、処分業者側も「受託基準違反」で処罰されてしまうからです。

契約書には、廃棄物の種類、数量、処分単価、契約期間、万が一の際の責任範囲などを詳細に記載し、さらに契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。

また、マニフェストはこの「処分委託契約」に基づいて交付されるものですから、契約書の日付よりも前の日付のマニフェストが存在することはあり得ません。

必ず「契約締結」→「マニフェスト交付・運搬」という時系列を守ってください。これは行政監査で真っ先に見られるポイントですよ。

違反時の罰則と白ナンバーのリスク

ここまで読んで、「ちょっとくらいルールを破ってもバレないだろう」と思っている方がもしいれば、今すぐその考えを改めてください。

廃棄物処理法の罰則は、日本の数ある法律の中でもトップクラスに厳しいことで知られています。軽い気持ちで行ったコスト削減策が、会社の倒産を招く引き金になりかねません。

特に注意が必要なのが、通称「白トラ行為(白ナンバーでの有償運送)」です。

産業廃棄物収集運搬業の許可を持たない、いわゆる白ナンバーの自家用トラックで、他人の産業廃棄物を運搬し、運賃や手数料を受け取る行為は、廃棄物処理法違反(無許可営業)であると同時に、貨物自動車運送事業法違反にも該当します。

よくある落とし穴が、「グループ会社だからいいだろう」というケースです。

例えば、親会社の工場から出たゴミを、子会社のトラックで運ぶ場合、法人格が異なる以上は「他人の廃棄物」となり、子会社には収集運搬業の許可が必要になります。これを無許可で行うと、以下の強烈な罰則が待っています。

  • 個人の実行行為者:5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金(またはその併科)。
  • 法人(会社):両罰規定により、最高で3億円以下の罰金

「3億円」です。これは大企業でも経営が揺らぐ金額ですし、中小企業なら即廃業レベルです。

さらに、一度でもこのような違反で刑罰を受けると、役員全員が「欠格要件」に該当し、建設業許可や宅建業許可など、他の許認可まで取り消されてしまう可能性があります。

たかがゴミ運び、されどゴミ運び。「知らなかった」では済まされないリスクがここにあることを、経営者は肝に銘じておく必要があります。

産業廃棄物の自社運搬におけるコストとリスク

ここまで法律の厳しさについてお話ししてきましたが、経営的な視点に立てば、「リスクがあるのは分かった。

でも、実際に自社で運ぶのと業者に頼むのとでは、どっちが得なのか?」というコストパフォーマンスの問題が一番気になりますよね。

表面上の請求書だけを見れば自社運搬の方が安く見えるかもしれませんが、企業経営には「見えないコスト」が存在します。

ここでは、感情論ではなく具体的な数字とロジックで、自社運搬の損益分岐点を分析してみましょう。

自分のタイミングで処分できるメリット

自社運搬を選択する最大のメリット、それは何といっても「圧倒的な機動力」にあります。

産業廃棄物の収集運搬業界は、慢性的なドライバー不足と車両不足に悩まされています。

そのため、業者に電話をして「明日、現場のゴミを回収に来てほしい」と頼んでも、「申し訳ありません、最短での配車は来週の火曜日になります」と断られることは日常茶飯事です。

現場監督なら分かると思いますが、狭い現場にゴミが山積みになっている状態は、作業効率を著しく低下させるだけでなく、転倒事故などの労働災害リスクも高めます。

その点、自社運搬であれば、他人のスケジュールに左右されることはありません。

「今日の作業が終わったら、帰りに処分場に寄ってゴミを降ろしてくる」という柔軟な動きが可能です。

特に、リフォーム工事や店舗改装など、工期が短く、かつ廃棄物の発生量が日々変動するような現場では、このスピード感が工期短縮に直結し、結果として利益率の向上に貢献することもあります。

また、少量(土のう袋数個分など)のゴミを出すために、わざわざ2トン車や4トン車をチャーターするのは費用対効果が悪すぎますが、自社運搬なら軽トラックでサッと運べるため、小回りが利くという点も大きな魅力です。

人件費やガソリン代などの見えない費用

しかし、ここで冷静に計算機を叩く必要があります。

外部業者への支払いがゼロになったとしても、社内では確実にコストが発生しています。いわゆる「隠れコスト」です。

例えば、現場の若手社員2名が、片道1時間かかる処分場まで2トントラックでゴミを捨てに行くとします。

往復の移動時間で2時間、処分場での待ち時間や荷下ろし作業で1時間、合計3時間拘束されるとしましょう。

この場合、「(時給2,000円 × 3時間)× 2名 = 12,000円」の人件費が単純計算で発生しています。

さらに、トラックの燃料代、高速道路料金、車両の減価償却費、タイヤなどの消耗品費を加算すると、実質コストは15,000円〜20,000円近くになります。

さらに怖いのが「機会損失」です。

この社員2名がゴミを運んでいる3時間の間、彼らは本業である施工や営業活動が一切できません。

もし彼らが現場で作業していれば生み出せたはずの利益(付加価値)が、ゴミ運びによって消滅しているのです。特に繁忙期において、貴重な職人の時間を運搬に使ってしまうのは、経営資源の配分として非常に非効率であると言わざるを得ません。

「社員は給料定額だからタダ」という感覚は、経営判断を誤らせる元凶です。

容器や飛散防止など運搬基準の遵守

コストの話は人件費だけではありません。適法に運搬するための「設備投資」も必要です。

前述した通り、自社運搬には厳しい収集運搬基準が適用されます。

これを満たすためには、ホームセンターで買ってきた適当な道具では不十分な場合が多いのです。

例えば、平ボディのトラックで廃プラスチックや木くずを運ぶ場合、走行中に風で飛散しないよう、荷台全体を覆う頑丈な防水シート(または防炎シート)と、それを強固に固定するゴムバンドやロープが必要です。

「ロープの南京結び」が確実にできるドライバーでないと、高速道路上で荷崩れを起こす危険性があります。

また、汚泥や廃油、廃酸などの液状廃棄物を運ぶ場合は、絶対に漏れない密閉容器(ケミカルドラムやオープンバンドドラム)が必要です。

コンクリート殻や鋭利な金属くずを運ぶなら、荷台を傷つけないためのコンパネ補強や、強度の高いフレコンバッグも必要になるでしょう。

特にアスベスト(石綿)含有建材を運ぶ場合は、破砕防止のためにブルーシートで二重梱包したり、他の廃棄物と混ざらないように仕切りを設けたりと、非常に手間のかかる養生作業が義務付けられています。

万が一の事故リスクは保険適用外?

さらにリスクとして考慮すべきは、交通事故です。

もし社員が産廃運搬中に事故を起こした場合、積んでいた廃棄物が道路に散乱すれば、その回収費用や清掃費用は莫大なものになります。

また、業務用車両の任意保険において、「産業廃棄物の運搬」を用途として告知していない場合、保険金が満額支払われないトラブルも想定されます。

自社運搬を行うなら、加入している自動車保険の内容確認と、必要に応じた特約の付加もコストの一部として計算に入れる必要があります。

専門業者へ委託する際との料金比較

では、これらを踏まえて業者への委託費と比較してみましょう。地域や廃棄物の品目によって相場は大きく異なりますが、一般的な指標をお伝えします。

収集運搬業者に「2トントラック1台分の混合廃棄物」のスポット回収(単発依頼)をお願いした場合、相場は以下の通りです。

  • 収集運搬費:20,000円 〜 35,000円
  • 処分費:20,000円 〜 40,000円(立米単価や重量単価による)

ここで比較すべきは、業者に払う「収集運搬費」の部分と、自社で運ぶ場合の「実質コスト」です。処分費はどちらにせよ処分場に払うお金なので、比較対象からは除外して考えます

(※ただし、業者は処分場と大口契約していて処分単価が安い場合があるため、トータルでは業者経由の方が安いこともあります)。

損益分岐点の簡易チェックリスト

以下の条件に当てはまるなら、自社運搬の方がお得かもしれません。

  • 処分場が現場や会社から片道30分圏内にある。
  • ゴミの量が軽トラック1台分程度と少ない。
  • 手が空いている社員がいる、または帰宅ルート上で捨てに行ける。

逆に、以下の条件なら迷わず委託すべきです。

  • 処分場まで往復2時間以上かかる。
  • ゴミの量が多く、ダンプや4トン車が必要。
  • 廃液、石綿、重量物など、取り扱いが難しいゴミがある。
  • 本業が忙しく、猫の手も借りたい状況だ。

「たった3万円を節約するために、社員を半日潰して、事故のリスクまで背負う価値があるか?」という問いを、常に経営判断の中心に据えてください。

電子マニフェスト利用時の登録方法

建設業界や製造業界を中心に、紙のマニフェストから電子マニフェスト(https://www.google.com/search?q=JWNET%E3%82%84e-reverse.comなど)への移行が急速に進んでいます。

「元請けから電子マニフェストを強制されているんだけど、自社運搬の場合ってどう入力すればいいの?」「システムが対応していないんじゃないの?」という不安の声をよく耳にしますが、安心してください。電子マニフェストシステムは、自社運搬にも完全に対応しています。

しかも、むしろ慣れてしまえば紙よりも管理が楽になる側面すらあります。

まず大前提として、自社運搬を行う場合であっても、電子マニフェストを利用するためには、排出事業者として「JWNET(日本産業廃棄物処理振興センター)」への加入登録が必要です。

これは避けて通れません。その上で、実際の運用フローにおいて「自社運搬」をどう登録するかという点ですが、システム上に非常に便利な機能が用意されています。

通常、業者に委託する場合は「収集運搬業者」の欄に許可業者の名称や許可番号を入力しますが、自社運搬の場合は、運搬担当者の入力画面にある「自社運搬」というチェックボックスを選択する(または運搬受託者の設定で『自社』を選ぶ)だけでOKです。

システムによっては「区間1」の運搬業者選択で自社を指定する形になります。

この設定を行うことによる最大のメリットは、「運搬終了報告」の自動化(または不要化)です。

本来、収集運搬業者は運搬が終わったら3日以内に「運び終わりました」という報告をシステム上で行う義務がありますが、自社運搬の場合は「自分で運んで自分で終わる」わけですから、この報告プロセスがシステム的にスキップされる、あるいは登録と同時に完了扱いになる仕様になっています。

これにより、入力の手間が一つ減るわけです。

紙マニフェストと電子の併用ルール

「基本は電子だけど、急な自社運搬の時だけ紙マニフェストを使ってもいいの?」という質問も多いですが、これは法的に問題ありません。

ただし、現場ごとの運用ルールとして「全数電子化」を義務付けている元請けや発注者もいます。

その場合は、たとえ軽トラ1台分の自社運搬であっても、スマートフォンやタブレット端末から電子登録を行う必要があります。

最近はスマホアプリ版の操作性も向上しているので、ドライバーにIDを付与して、現場でササッと登録できるように教育しておくのが、現場監督の負担を減らすコツですよ。

また、自社運搬であっても「処分終了報告(D票相当)」と「最終処分終了報告(E票相当)」の確認義務は消えません。

処分業者から「燃やしました」「埋めました」という報告がシステムに届いたら、必ず内容を確認し、期限内に処理が完了しているかをチェックしてください。

これを放置すると、排出事業者責任を果たしていないとみなされます。

電子マニフェストの詳しい操作方法や加入手続きについては、運営元の公式ページに動画マニュアルなどが充実していますので、導入前に担当者に一度見せておくことを強くおすすめします。

(出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター『電子マニフェストシステム(JWNET)』)

産業廃棄物の自社運搬と委託の使い分け

ここまで、自社運搬の法的ルール、コスト構造、そして電子化への対応について解説してきました。

すべての情報を踏まえた上で、私が行政書士として、そして多くの建設会社・工場を見てきたアドバイザーとして提案したいのは、「自社運搬と委託処理のハイブリッド運用」という戦略です。

「うちは全部自社でやる!」と意気込むのも、「怖いから全部業者に丸投げ!」と割り切るのも、どちらも経営戦略としては少しもったいない場合があります。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に応じて最適な手段(カード)を切れるようにしておくことが、賢い経営者の姿ではないでしょうか。

具体的には、以下のような基準で使い分けることを推奨しています。

【自社運搬を選択すべきシーン】

  • 量が少ない:軽トラックや2トントラック半分以下の量で、わざわざ業者を呼ぶと割高になる場合。
  • 処分場が近い:現場や会社から片道30分以内で、帰社ルートのついでに寄れる場合。
  • 緊急性が高い:「今すぐゴミをどかさないと、次の工程に進めない」という一刻を争う状況。
  • 汚れにくいゴミ:木くずや金属くず、梱包用ダンボールなど、トラックの荷台を汚さず、飛散リスクも低いもの。

【専門業者に委託すべきシーン】

  • 量が多い:4トントラックや大型ダンプが必要な量。自社で往復すると人件費で赤字になります。
  • 距離が遠い:往復2時間以上かかる場合。移動時間は利益を生まない「死に時間」です。
  • 危険・汚れるゴミ:廃油、汚泥、廃酸、アスベストなど。専用容器や専門知識が必要なものは、プロに任せるのが安全管理の鉄則です。
  • 人手が足りない:繁忙期で、猫の手も借りたい時。職人を運搬に使わず、施工に集中させることで売上を最大化しましょう。

この判断基準を社内でマニュアル化し、「2立米以上なら業者へ電話」「この現場エリアなら自社運搬OK」といった明確なラインを引いておくことが重要です。

現場任せにすると、判断に迷って時間をロスしたり、無理な自社運搬で事故を起こしたりする原因になります。

また、自社運搬を行う可能性があるなら、事前に近隣の処分場数社と処分委託契約だけは結んでおきましょう。

「いざ運ぼうとしたら契約していなかった」では、せっかくの機動力が活かせませんからね。

まとめ:産業廃棄物の自社運搬はルールを知れば怖くない

今回は、産業廃棄物の自社運搬について、許可の有無から現場での細かいルール、そして経営的な損得勘定まで徹底的に深掘りしてきました。

最後に改めて強調したいのは、「自社運搬は許可不要だが、プロ並みの管理責任が伴う」という事実です。

「たかがゴミ運び」と侮ってはいけません。

安易な気持ちでルールを無視して行えば、それは不法投棄や無許可営業とみなされ、会社を一瞬で潰しかねない「3億円の爆弾」を抱えて走るようなものです。

【自社運搬スタートアップ・チェックリスト】
確認項目チェック
運ぶゴミは「自社」が出したものか?(下請け運搬はNG)
車両は「自社名義」か?(車検証の使用者欄を確認)
車両の両側面に規定サイズの「表示」があるか?
法定5項目を記載した「書面(マニフェスト代用可)」を携帯しているか?
処分場との「委託契約書」は締結済みか?
荷崩れ・飛散防止の「ロープ・シート」は万全か?

このチェックリストがすべて「YES」になるなら、胸を張って自社運搬を行ってください。

コスト削減と機動力の向上は、間違いなくあなたの会社の強みになります。

もし、「やっぱり手続きが面倒くさいな」「リスク管理に自信がないな」と少しでも感じたなら、それは「委託すべきタイミング」のサインです。

無理をせず、信頼できる収集運搬業者をパートナーに迎え、あなたは本業のビジネス拡大に全力を注ぐ。それもまた、立派で賢い経営判断ですよ。

この記事が、あなたの会社のコンプライアンス向上と利益最大化の一助になれば、行政書士としてこれほど嬉しいことはありません。

安全運転で、今日も一日ご安全を!

※本記事は2025年時点の法令および一般的な実務運用に基づいて執筆していますが、法律は改正されることがあります。また、自治体によってローカルルール(条例)が存在する場合もありますので、実際の運用にあたっては、必ず管轄の自治体窓口や廃棄物処理の専門家にご相談ください。

⚠️ その「自社運搬」、本当に法的に安全ですか?

「バレなければ大丈夫」「みんなやっているから」

そんな軽い気持ちで行った自社運搬が、ある日突然、警察の検問や行政の立ち入り検査で発覚し、「3億円以下の罰金」「役員の逮捕」、さらには「建設業許可の取消し」という最悪の事態を招くケースが後を絶ちません。

たった数万円のコストを浮かすために、
これまで築き上げた会社の信用を賭ける必要はありません。

「うちは大丈夫かな?」

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  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士事務所開業。日本行政書士会連合会 登録番号05300280 産業廃棄物収集運搬業の許可を得意とする行政書士。産廃・建設・古物営業許可を中心に5000件以上の許可実績。トップクラスの良心価格と実績で選ばれています。産廃業の開業はお任せ下さい。

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