
「障害のある方の働く場をつくりたい」「地域で暮らせるグループホームを始めたい」。開業の準備は、法人を設立したり、物件を借りたりするだけでは進みません。
予定するサービスに合う人員・設備・運営体制を整え、所在地を管轄する自治体から事業者の指定を受ける必要があります。先に物件契約や採用日だけを決めると、使えない建物や合わない日程に費用をかけてしまうおそれがあります。
このページでは、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、障害者グループホームを中心に、開業までの準備の順番をご案内します。全国で共通して考えたい点と、自治体ごとに確認する点を分けています。個別サービスの詳しい準備は、各解説へ進んでください。
開業から運営までの全体像
- 1サービス・所在地の検討支援内容・定員の案を整理し、指定窓口と日程を早めに確認。
- 2法人・物件・人員の確認条件と収支・資金計画を並行して照合。契約・工事・採用前に確認。
- 3事前相談・申請自治体の様式と締切に沿って準備し、補正や必要な検査に対応。
- 4指定・開始準備の確認指定内容と開始日を確認し、請求などの手続きを整える。
- 5開業後の運営・届出支援記録、安全管理、変更・更新などの手続きを継続。
各確認は並行して進め、必要に応じて前の項目に戻ります。相談・申請・検査の順序や期限は、自治体とサービスによって異なります。
最初に押さえたいこと
- 支援したい人と提供するサービスを決め、開設予定地の指定窓口を確認する。
- 物件と人員は並行して確認し、契約・工事・採用の条件を申請日程に合わせる。
- 指定基準を満たすこと、加算を算定できること、資金が足りることを別々に確かめる。
利用者ご本人の障害者手帳の申請を調べている方は、障害者手帳の総合案内をご覧ください。手帳の交付と事業者の指定は、申請する人も確認する条件も異なります。
どの障害福祉サービスを始めるか、支援の内容から選ぶ
同じ「就労支援」でも、雇用契約を結ぶか、一般企業への就職を支援するかによって事業の役割が変わります。グループホームは住まいでの生活支援を担い、通所の就労支援とは準備する体制が異なります。
↔ 表が画面に収まらない場合は、表の中を左右に動かしてご覧ください。
| サービス | 主な役割 | 開業計画で先に考えること |
|---|---|---|
| 就労継続支援A型 | 雇用契約に基づく働く機会と支援 | 生産活動、利用者の賃金、雇用管理を継続できるか |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約によらない働く機会、生産活動等の支援 | 利用者に合う作業と支援、工賃の原資をどうつくるか |
| 就労移行支援 | 一般就労に向けた訓練や就職活動等の支援 | 企業との関係、就職までの支援、支援職員の体制 |
| 共同生活援助(障害者グループホーム) | 住居での相談や日常生活の支援 | 利用者の生活、夜間を含む支援、建物の安全性 |
表はこのガイドで扱う主なサービスです。障害福祉サービス全体がこの4種類だけ、という意味ではありません。就労選択支援、生活介護、自立訓練、訪問系サービスなどには、それぞれ別の役割と基準があります。
2025年10月から始まった就労選択支援は、本人が就労先や働き方をよりよく選ぶための支援です。就労系事業所では、開設側の指定条件に加え、利用を希望する方のサービス利用までの流れも確認してください。就労選択支援を経る対象や例外を、すべての利用希望者に一律に当てはめないようにしましょう。
神戸での開業を検討している方は、次の各サービスの解説で、地域の窓口・準備する資料・物件や人員の確認点をご覧いただけます。
神戸で就労継続支援A型を開業する
生産活動と雇用管理、人員・物件の準備へ
神戸で就労継続支援B型を開業する
申請日程、作業・工賃、人員・物件の準備へ
神戸で就労移行支援を開業する
就職支援の体制と指定申請の準備へ
神戸で障害者グループホームを開業する
住居の設備、支援体制、開設手順の確認へ
開業前の準備|指定窓口・法人・物件・人員を確認する
事業者指定を行う自治体を「指定権者」といいます。都道府県、指定都市、中核市等が担当しますが、サービスの種類や権限移譲によって窓口が異なります。「県内だから県庁」と決めつけず、開設予定地とサービス名を伝えて確認してください。
利用者の支給決定を行う窓口と、事業者の指定窓口が同じとは限りません。自治体サイトでは「事業者向け」「新規指定」「指定申請の手引き」を探すと、必要な案内へ進みやすくなります。
準備の流れ
- サービス・所在地・定員の案を決め、指定窓口へ相談する。
- 法人の事業目的、物件、人員、運営と収支の計画を並行して確認する。
- 自治体が求める事前相談資料を提出し、指摘された点を直す。
- 建築・消防上の事前確認を進めたうえで本申請を行い、補正や必要な検査を自治体の期限までに完了する。
- 指定内容と開始日を確認し、請求や情報公表などの手続きを整えて開業する。
これは準備の見取り図です。すべての自治体で同じ順序・同じ締切になるわけではありません。事前相談や説明会の有無、公募や総量規制等の対象、指定希望月ごとの受付期限を、早い段階で確認しましょう。
参照:厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」(2026年6月)
神戸市の日程を例にすると
神戸市の対象サービスでは、事前相談資料は指定希望月の3か月前の5日前後、本申請は2か月前の10日前後が目安です。実際の締切は月別の表で確認します。訪問系サービスは別の案内によるため、この日程をそのまま使わないでください。
事前相談資料の提出に来庁は必須ではありません。来庁して相談したい場合は日程調整が必要です。不備の補正にも時間がかかるため、期限日だけでなく、図面や実務経験証明書を集める期間も予定に入れておきましょう。
法人・物件・人員は、契約前に合わせて確認する
一つの準備が終わってから次を調べるより、法人・物件・人員を並行して照合するほうが、計画の食い違いに早く気づけます。ただし、必要な事前確認を終えずに契約や工事を進めることは避けましょう。
法人と定款は、実施する事業に合っているか
このページで扱うA型・B型・就労移行支援・共同生活援助では、法人格を前提として準備します。既存法人を使う場合も、定款と登記の事業目的が実施予定の事業に合っているか確認してください。
目的の記載例は指定権者の手引きで確かめます。特定の文言しか認められないと自己判断して書き換えたり、将来行わない事業まで安易に追加したりしないことが大切です。A型では、社会福祉法人または専ら社会福祉事業を行う法人であること等、実施主体の条件にも注意が必要です。
地域の記載例:大阪市「障がい福祉サービス事業等に関する基準等」
物件は、福祉・建築・消防の確認を別々に行う
希望する広さの部屋が見つかっても、それだけでは開設できると判断できません。予定するサービスや定員に合う設備のほか、建物の用途、避難経路、消防設備、都市計画上の制限、地域の条例等が関係します。
↔ 表が画面に収まらない場合は、表の中を左右に動かしてご覧ください。
| 確認すること | 主な相談先 | 用意すると話が進みやすい資料 |
|---|---|---|
| 福祉サービスの設備・配置 | 指定担当部署 | サービス名、定員、各室の用途と面積が分かる平面図 |
| 建物の用途・改修・用途変更 | 建築担当部署、建築士 | 現況図、建築確認・検査関係資料、工事の予定 |
| 消防設備・避難・使用開始 | 所管消防署等 | 建物全体と使用部分の図面、階数、利用者像、支援体制 |
| 市街化調整区域等の立地 | 開発・都市計画担当部署 | 所在地、敷地と建物の資料、予定する使用方法 |
用途変更の確認申請が不要でも、建築基準や消防上の適合確認まで不要になるわけではありません。逆に、サービス名だけで必要な消防設備を一律に決めることもできません。実際の建物と利用の条件を伝えて確認しましょう。
たとえば「以前も福祉施設だった物件」を借りる場合でも、前のサービスと今度のサービス、定員、使う階、利用者の状態が同じとは限りません。前の借主が使えていたという説明だけで契約せず、今回の計画での確認を残すことが大切です。
物件契約前の確認ポイント
気に入った物件が見つかったときほど、契約前に平面図をそろえておきましょう。「このサービスを、この定員で、こう使いたい」と各窓口へ同じ条件を伝えると、確認の食い違いを減らせます。改修が必要なら、その費用と日程も含めて契約を判断してください。
グループホームの住宅・ワンルーム活用を検討する方は、設置形態ごとの条件も確認してください。
サテライト型居室の設置条件を確認する
本体事業所との連携とワンルーム活用の注意点へ
空き家活用や補助制度を検討する場合は、公募期間と交付決定前の契約・着工の扱いを先に確認します。
空き家活用・補助制度の注意点を確認する
建物の確認、募集時期、資金計画の考え方へ
サービス管理責任者は、研修修了証だけで判断しない
採用候補者が「サビ管の研修を受けた」と話していても、それだけで配置できるとは限りません。実務経験の業務内容・期間・従事日数、研修の種類と修了時期、更新や経過措置の対象を確認します。
採用の段階で、実務経験証明書を発行できる勤務先と、研修修了証等を確認しておきましょう。基礎研修を受けられる条件と、サービス管理責任者として配置できる条件は、区別して判断する必要があります。
参照:兵庫県「サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修 受講時期」
管理者、職業指導員、生活支援員、就労支援員、世話人等の必要な職種・人数は、サービスや定員、類型によって異なります。最低限の指定基準と、選択する報酬区分・加算の人員要件を混ぜず、勤務形態一覧表に落として確認してください。
兼務ができるかを確認する際は、肩書だけでなく、同じ時間帯にどこで何の業務をするかを示します。欠勤や退職が出た場合の連絡先・補充方法も、開業前から考えておくと安心です。
開業費用は、工事代だけでなく入金までの資金を見る
開業に必要な金額は、物件・定員・サービス・職員配置によって変わります。「障害福祉事業なら一律にいくら」と決めるのではなく、支払いの時期が分かる資金繰り表をつくりましょう。
- 開業前:法人の準備、物件取得、設計・改修、消防設備、備品、採用、研修等。
- 開業後の毎月:家賃、人件費、社会保険、光熱費、保険、送迎や生産活動に必要な費用等。
- 遅れた場合:指定や工事が遅れた期間の家賃・人件費、利用者が計画どおりに集まらない場合の不足。
売上の見込みは、定員をそのまま利用人数として計算しないことが大切です。利用日数、稼働率、報酬区分、加算・減算、地域単価、請求と入金の時期を別々に確認します。まだ算定条件を満たしていない加算を、確実な収入として組み込まないでください。
2026年度の報酬改定には、新規事業所に関する取扱いなども含まれます。サービスの種類だけでなく、指定を受ける時期や例外の対象かどうかを確認し、現在の算定構造で計画してください。
A型では利用者への賃金と生産活動収支、B型では工賃と生産活動の内容も事業計画の重要な要素です。補助金は指定を受ければ自動的にもらえるものではなく、融資も審査があります。採択・融資実行が未確定の資金だけに頼らず、代替案を用意しましょう。
指定申請から開業後まで|書類と運営体制を整える
指定申請では、書類の枚数をそろえるだけでなく、法人・人員・物件・運営の説明が一致していることが重要です。様式は古い保存ファイルを使い回さず、申請先の最新の提出書類一覧から確認しましょう。
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| 資料のまとまり | 照合したい内容 |
|---|---|
| 法人関係 | 法人名、所在地、代表者、事業目的が定款・登記・申請書で合っているか |
| 人員関係 | 職種、雇用条件、勤務時間、資格・経験・研修と兼務の説明が一致しているか |
| 物件・設備関係 | 使用する範囲、部屋の用途・面積、設備、使用権限と工事予定が合っているか |
| 運営関係 | 営業日、定員、サービス内容、利用者負担、緊急時対応等を実際に運用できるか |
| 収支・報酬関係 | 利用見込み、職員配置、算定を予定する区分・加算、支出と入金予定がつながっているか |
たとえば、平面図では定員20人、運営規程では定員10人、勤務形態一覧表では別の定員を前提にしていると、どれが実際の計画なのか分かりません。計画が変わったときは、一つの書類だけでなく、影響する書類をまとめて見直してください。
神戸市は実務経験証明書について、証明者が押印した原本の写しを求め、原本確認や証明者への照会を行う場合があると案内しています。本人の記憶だけで期間を埋めず、証明できる事実に基づいて準備します。
指定後の運営と届出まで、開業前に担当を決める
指定を受けた後も、人員や設備の基準を守り、適切に支援を提供する必要があります。個別支援計画と日々の記録、請求の確認などを、担当者一人だけに任せきりにしない体制が必要です。
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| 開業前に決めたいこと | 準備の例 |
|---|---|
| 利用者への説明・支援 | 契約・重要事項の説明、個別支援計画、相談・苦情対応、支援記録の担当 |
| 安全と権利擁護 | 虐待防止、身体拘束の適正化、感染症・災害に備えるBCP、研修・訓練等の実施計画 |
| 請求と記録 | 実際のサービス提供と請求の照合、加算要件の確認、必要な記録の保存 |
| 行政への手続き | 変更・更新・加算等の届出、業務管理体制の届出、情報公表の担当と期限 |
上の表は運営準備の入口です。必要な委員会・研修・訓練の内容や頻度、記録保存期間等は、対象サービスの基準と自治体の案内に沿って確認してください。書類をつくって保管するだけでなく、職員が内容を理解し、実際に行えることが大切です。
グループホームで医療機関との連携や医療的ケアを検討している方は、事業所の体制と利用者の状態に合う確認を進めましょう。
グループホームと医療連携の確認点を読む
事業所の体制、医療機関との役割分担の確認へ
まず相談するなら、この5点をそろえてください
まだ物件や人員が決まっていなくても、次の内容が分かると、どこから確認すればよいか話し合いやすくなります。
- 始めたいサービスと、支援したい方のイメージ。
- 開設したい市区町村と、希望する開始時期。
- 法人の有無と、既存法人で行っている事業。
- 物件候補の所在地・平面図、契約や工事の状況。
- 管理者・サービス管理責任者等の候補と、採用・研修の状況。
すでに申請準備を進めている方は、提出済みの資料と、自治体から受けた指摘もお持ちください。サクセスファン行政書士事務所では、予定している事業と現在の準備状況を伺い、指定申請に向けてお手伝いできる範囲をご案内します。
指定の可否や時期は審査・準備状況等によって変わります。依頼する場合も、代表者ご自身がサービスの内容や運営責任を理解し、説明できるように準備を進めましょう。
準備の状況を整理して、次の一歩を相談する
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制度・自治体案内の確認日:2026年11月3日。申請時は、開設予定地の最新の手引き・様式・期限を確認してください。
