
「法人で二つ目の診療所を開きたい」「いまの診療所を移転したい」。物件や工事の日程が見えてきたとき、定款をいつ変えるのか、登記や開設許可はどの順番なのかで迷うことがあります。
診療所の追加・移転では、物件契約や工事を確定する前に、法人の定款変更と施設の開設手続きを並べて確認してください。定款変更の認可だけで新しい場所の診療を始められるわけではありません。
この記事では、兵庫県・神戸市の既存の医療法人が診療所を追加・移転する場合を中心に、認可と届出の分け方、準備する資料、開設までの進め方を整理します。新しく法人を設立する方は、医療法人の設立準備ガイドをご覧ください。
まず、「事務所の移転」と「診療所の移転」を分けます
同じ住所を使っていても、法人の主たる事務所と、法人が開設する診療所は別の確認対象です。事務所所在地だけを変える場合と、定款に記載した診療所の所在地を変える場合を混同しないことが出発点になります。
| 変えたいこと | 定款で確認する箇所・手続き |
|---|---|
| 診療所を追加する・移転する | 目的・業務、開設する施設の名称・所在地など。変更する条文に応じて定款変更認可を準備 |
| 法人名・診療所名を変える | 名称や施設の記載を確認。定款変更認可と、必要な登記・施設側の変更手続きを分けて確認 |
| 事務所の所在地だけを変える | 原則として定款変更の届出。診療所所在地など他の条文も変わらないか確認 |
| 公告の方法だけを変える | 定款変更の届出。診療所の広告表現を変える話とは別 |
定款変更は原則として都道府県知事の認可を受けて効力が生じます。事務所所在地と公告方法の変更は例外ですが、主たる事務所を県外へ移し、監督する知事の条文も変える場合は認可が必要です。届出でよい変更も、変更後は遅滞なく届け出ます。厚生労働省「医療法人の機関について」第1・9でこの区分が示されています。
契約・工事の前から、法人と施設の手続きを一緒に組みます
順番を考える際は、「定款が終わるまで施設の相談をしない」のではなく、まず両方の窓口に計画を確認します。施設の条件が変われば、定款変更に添える図面や事業計画にも影響するためです。
| 進める段階 | 確認・準備すること |
|---|---|
| ① 計画と物件を検討 | 現行定款、予定地、平面図案、管理者候補、開設希望日を整理。法人担当と施設担当へ事前相談 |
| ② 法人内の決定・認可申請 | 必要な理事会・社員総会等の手続きを経て、定款変更案と添付資料を整え、認可申請 |
| ③ 認可後の法人側手続き | 認可内容を確認。登記事項が変わる場合は必要な変更登記と、その後の県への届出 |
| ④ 施設側の許可・届出 | 開設許可等を得たうえで開設し、開設後の届出や旧施設の廃止等を実施。保険指定は別途確認 |
この表は確認の順番です。相談、図面の調整、登記・開設書類の準備は並行することがあり、申請時に必要な認可書や登記事項証明書、提出の前後関係は各担当窓口と合わせます。契約や工事を進めてから施設基準の問題が見つからないよう、物件の用途・構造・動線も先に相談しましょう。
神戸市は、開設者が法人か個人か、病床の有無、変更内容で手続きが異なると案内しています。許可申請は事実が発生する前に許可を受ける必要があります。神戸市の病院・診療所等の手続き案内を図面の準備段階で確認してください。
定款変更に必要な資料は、共通分と追加・移転分に分けます
まず現行定款の全文を用意し、どの条文を、なぜ変えるかを整理します。社団医療法人では社員総会の決議が必要です。理事会等の手続きも現行定款に照らして確認し、議事録・変更案・新旧対照表の内容をそろえます。財団医療法人の寄附行為変更は機関の手続きが異なるため、社団の書類をそのまま使わないでください。
共通の準備は、申請書、新旧条文対照表・変更理由書、現行と変更後案の定款全文、理事会・社員総会等の議事録、役員・社員等の名簿、必要な原本証明です。施設の開設を伴う追加・移転では、これに施設概要・図面、管理者関係資料、2年間の事業計画と予算、開設時の予定貸借対照表、土地・建物関係資料などが加わります。兵庫県の定款変更・添付資料一覧で変更内容に合う資料を選んでください。
とくに、図面上の施設名・住所、定款案、賃貸借関係の資料、事業計画の開設時期を一致させることが大切です。法人と理事長など関係者との間で賃貸借等をする場合は、取引条件の根拠や必要資料も確認します。定款の文言だけ直せば済む手続きではありません。
電子申請でも、すべてオンラインで完結するとは限りません
兵庫県は定款変更認可の電子申請を案内しています。ただし、医療施設を開設・移転する場合の土地・建物登記事項証明書は、原本を医務課へ郵送する扱いです。また、電子申請では受付印を押した控えは交付されません。兵庫県の電子申請案内で、送信する資料と別送する原本を分けて確認しましょう。
管理者の免許証・臨床研修修了登録証の写しについては、県の添付資料一覧には保健所等の原本証明が必要との記載がある一方、電子申請案内では原本証明不要とされています。提出方法を決めてから、使う様式と原本確認の扱いを提出先に確認してください。過去に紙で提出したときの扱いを、そのまま電子申請へ当てはめないことが大切です。
紙で提出する場合、主たる事務所が神戸市内にある法人の申請は、県の案内上、宛名を兵庫県知事とし、各区の保健センター管理係を通じて提出します。申請書は3部に提出者の控えを加える案内です。他地域や提出方法との違いは、兵庫県の申請・届出窓口と提出部数をご確認ください。
「21日前に出せば間に合う」とは考えないでください
県の添付資料一覧には、標準処理期間について医務課が申請を受理した日から起算して最短21日との記載があります。これは相談開始日や、書類を発送した日から21日で必ず終わるという意味ではありません。追加資料や差し替え等で延びることも明記されています。
希望開設日から逆算するときは、事前相談、法人内の決定、資料収集、補正、必要な登記、施設側の許可、保険指定の確認までを含めて予定を立ててください。物件の引渡日、工事完了日、旧診療所の最終診療日を先に固定しすぎると、調整の余地が少なくなります。
認可後も、登記・開設・保険指定の確認が残ります
施設の追加などで目的・業務、法人名等の登記事項が変わる場合は、変更登記と県への登記完了の届出を確認します。主たる事務所の移転には別の届出様式があります。すべてを同じ「登記完了届」で処理せず、兵庫県の登記事項変更登記完了届の説明に沿って分けます。登記申請は司法書士等に、必要事項と時期を確認してください。
診療所の追加・移転では、施設の開設許可・開設後の届出と、保険医療機関の指定は別です。定款変更が認可されたことだけで、保険診療をそのまま継続できるとは限りません。移転時の休診期間や指定日の扱いも含めて事前に調整し、診療を中断しないことを前提に日程を確定しないでください。
施設側の手続きと保険指定の分け方は、診療所の開設許可・届出ガイドで確認できます。
相談前には、まずこの4点をそろえましょう
最初から申請書を完成させる必要はありません。①現行定款、②現在と予定先の住所・施設名、③希望時期と契約・工事の進み具合、④分かる範囲の平面図案と管理者候補があると、認可・届出の区分と、先に相談する窓口を整理しやすくなります。未定の項目は、未定のまま伝えてください。
サクセスファン行政書士事務所へのご相談では、追加・移転の計画と現在の準備状況をお知らせください。定款変更認可申請に関する対応範囲・費用は個別に確認します。登記、税務、労務等が関係する場合は、それぞれの担当と分けて進めます。
設立後の変更、毎年の報告、承継などを含む全体像は、医療法人の総合ガイドから確認できます。
本記事は2026年11月時点で確認した公的案内に基づきます。実際の申請では、現行定款、法人の形態、施設計画に応じて最新様式と必要手続きを確認してください。
