医療・介護許可

医療法人・診療所の事業承継|開設者変更と保険指定の進め方

医療法人・診療所の事業承継。開設者と保険指定を確認する準備ガイド。

診療所を後継者へ引き継ぐ際は、譲渡契約や理事長交代に加え、開設者の変更に伴う行政手続も確認します。

患者さんの診療を続けるには、引継ぎ前後で開設者が変わるかを確かめ、医療法上の手続と保険医療機関の指定を同じ日程表で準備する必要があります。

最初に、現在と引継ぎ後の「開設者・所在地・管理者・診療内容・予定日」を並べてください。この五つが分かると、役員変更で進める部分と、新たな開設・指定が必要な部分を分けやすくなります。

申請様式、添付資料、事前相談の方法、受付締切は、所在地を担当する自治体・保健所と地方厚生(支)局で確認してください。

ここがポイント

  • 同じ法人が続くのか、開設者が変わるのかで、必要な手続が変わります。
  • 開設手続と保険指定を別々に確認し、切替日程を調整します。
  • 契約・職員・患者さん・診療録についても、引継ぎ方法と担当者を決めます。

医療法人・診療所の引継ぎについて、現在の開設者・所在地・希望時期をお知らせください。

ご相談内容に応じて、行政手続きの対応範囲と費用をご案内します。保険指定、登記・税務、契約等は、依頼先と担当範囲を別にご確認ください。

医療法人・診療所の手続きのご相談。サクセスファン行政書士事務所。電話090-3542-8440。
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医療法人・診療所の事業承継は、開設者が変わるかを先に確認します

同じ「院長交代」でも、医療法人の理事長が交代する場合と、個人の診療所を別の医師が引き継ぐ場合とでは、必要な手続が違います。診療所の看板や電話番号を引き継ぐかではなく、開設許可書・開設届に記載された開設者を確認しましょう。

引継ぎの形最初に確認すること手続の考え方
同じ医療法人を存続させ、理事長・役員等を交代する法人自体は同じか。管理者、定款記載事項も変わるか法人の意思決定、役員変更等を進め、診療所と保険指定の変更事項を別に確認する
個人から別の個人へ、個人から法人へ、別法人へ事業を引き継ぐ開設者の名義だけでなく、主体が変わるか旧施設の廃止と新施設の開設手続、新たな保険指定が必要かを確認する
医療法人の合併・分割を使う法人の種類、対象事業、適用できる制度医療法人の合併・分割の手続と、個々の施設・保険指定への影響を併せて確認する
医療法人・診療所の承継で、同じ法人の役員等の変更と開設者変更を分け、患者・診療録・契約・職員の引継ぎを確認する図。
同じ医療法人が続く場合と、開設者が変わる場合では、先に確認する手続が異なります。合併・分割は別制度で確認します。

社団医療法人では、社員は法人の意思決定に参加する構成員を指し、勤務する職員とは意味が異なります。

社員の入退社、役員の選任、理事長の選出は、それぞれ決め方や必要な記録が異なります。定款と法人の種類に沿って確認してください。

同じ法人の役員交代が中心なら、医療法人の役員変更・理事長交代を先に確認してください。

合併・分割は、通常の役員変更とは別の制度です。厚生労働省の医療法人の合併・分割に関する取扱いと、所轄庁の案内を確認します。

契約日を固める前に、引き継ぐものを一覧にします

医師と専門家が承継準備の資料を確認する相談イメージ
承継準備の相談イメージ

新しい開設者が診療を続けるために、どの契約や手続を引き継ぐ必要があるか確認しましょう。次の項目について「現在の名義」「引継ぎ方法」「相手方の確認」「担当者」を書き出してください。

  • 土地・建物の所有、賃貸借、使用の承諾
  • 医療機器、リース、保守、電子カルテ等の契約
  • 職員の雇用と勤務体制
  • 借入れ、担保、保証、未収金・未払金
  • 診療録、画像、検査結果、予約・継続診療の情報
  • 医療法上の許可・届出、保険指定、施設基準、その他の指定・登録

契約や雇用関係がそのまま続くかは、同じ法人が残るのか、別の開設者へ事業を譲るのかなどによって変わります。「一式を引き継ぐ」とだけ決めず、貸主・金融機関・リース会社等との調整が必要なものを分けておくと、直前の遅れを防ぎやすくなります。

持分のある医療法人では持分の取扱いも確認します。譲渡価格、税負担、債務・保証については、許認可とは別の検討が必要です。

税務は税理士、登記は司法書士、契約や紛争に関する法的判断は弁護士など、内容に応じて担当を分けてください。

保険指定の申請書類の作成・提出等を有償で依頼する場合も、社会保険労務士等の適法な担当と業務範囲を確認します。医療法上の手続と合わせて、一人の専門家へすべて依頼できるとは限りません。社会保険労務士法第2条・第27条等

保健所と地方厚生局には、同じ変更内容を伝えます

相談先には、変更前と変更後の開設者・施設情報が分かる資料を用意してください。保健所と地方厚生(支)局に同じ予定を伝え、次の順番で準備を進めましょう。

  1. 開設者、所在地、管理者、診療科・病床、希望する切替日を整理する。
  2. 自治体・保健所に、変更手続で足りるか、新たな開設許可・届出が必要かを確認する。
  3. 地方厚生(支)局に、新たな保険指定の要否と、遡及指定を希望する場合の区分・書類・日程を確認する。
  4. 必要な法人の意思決定・認可等と、契約・人員・設備の準備を日程に組み込む。
  5. 旧施設の最終診療、新施設の開始、患者案内、請求処理の予定を整える。

医療法人が診療所を追加・移転する場合などは、定款変更も確認します。定款変更が終わっても、診療所の開設手続や保険指定が自動的に終わるわけではありません。医療法人の定款変更と診療所開設許可・届出で、それぞれの準備を確認できます。

無床の医科診療所を新たに開設する扱いになる場合は、計画地と開設予定日が、外来医師過多区域の開設事前届出の対象になるかを確認します。対象となる場合は、原則として開設日の6か月前までに都道府県への届出が必要です。

移転や法人化・承継だから当然に対象外とは限りません。国の候補一覧だけで判断せず、所在地の正式な区域指定・適用開始時期と、猶予・免除の対象になるかを都道府県へ確認してください。保険指定の予定届出とは別の手続です。厚生労働省の外来医療ガイドライン

遡及指定は、承継の形と診療の継続性で判断されます

開設者の変更や移転等に伴う保険指定では、一定の条件のもとで指定日を遡らせる「遡及指定」が認められる場合があります。単に申請が遅れた新規開業を救済する制度ではなく、希望すれば必ず認められるものでもありません。

2026年6月5日付の通知による取扱いは、原則として同年9月1日から適用されています。

例えば、所在地を変えずに、個人の開設者がその本人を理事長とする法人へ切り替える場合は、所定の条件を満たす類型に当たるかを確認します。診療録、患者、診療内容、管理者、職員等の引継ぎも判断に関わります。

「近くへ移るから大丈夫」とは判断できません。 同一都道府県内・直線距離2km以内の移転に関する類型は、開設者が変わらないことなどが条件です。開設者変更と移転を同時に行う場合は、この距離条件だけで同じ手続にはなりません。

開設者の死亡・病気等による緊急の引継ぎにも、別の申請区分があります。緊急の引継ぎや、所定の条件を満たす近距離移転・所在地を変えない開設者変更の区分に当たらない「その他の場合」は、原則として希望する遡及指定日の3か月前までに予定届出書を提出します。

契約の実行日を先に固定せず、該当する区分を早めに確認しましょう。詳しい条件と様式は、厚生労働省の遡及指定等に関する通知と、管轄局の最新案内で確認してください。

指定日が調整できても、施設基準の届出や算定要件がすべて自動的に引き継がれるわけではありません。オンライン資格確認、レセプト請求、各種指定・登録についても、新旧の施設情報で何を切り替えるかを確認します。基本的な準備は診療所の保険医療機関指定をご覧ください。

患者さんの引継ぎと、切替後の運用を準備します

患者さんには、診療が続く場所・日時、担当医、予約の扱い、問い合わせ先を案内します。引継ぎが難しい診療や検査結果の説明が残る患者さんについては、担当医が紹介先や対応方法を整理してください。

診療録等は、保管責任者、移管範囲、保管場所、閲覧できる職員、開示等の問い合わせ窓口を決めます。電子カルテを継続使用する場合も、旧開設者のデータへ新しい担当者が適切にアクセスできるか、契約と権限設定を確認しましょう。

実際の事業承継に伴う個人データの提供は、個人情報保護法上の第三者提供に当たらない場合があります。ただし、承継後も従前の利用目的の範囲を踏まえて取り扱う必要があります。

検討段階の候補者へ患者情報を自由に渡してよい、という意味ではありません。共有する段階・目的・範囲と安全な受渡方法を確認してください。個人情報保護委員会の事業承継に関する医療・介護分野のQ&A/個人情報保護法ガイドライン(通則編)

切替後は、届出・報告と実際の運用を照合します

承継当日は診療を始めることに意識が向きがちですが、変更後の情報が各窓口に反映されたかまで確認します。

  • 自治体・保健所と地方厚生(支)局の手続が、それぞれ必要な状態まで完了しているか。
  • 指定日、施設コード、施設基準と、請求に使う設定が一致しているか。
  • 医療機能情報報告の開設者・管理者・診療時間等が更新されているか。
  • 患者さんへの案内、ウェブサイト、電話応対、旧施設への問い合わせ対応が統一されているか。
  • 法人が存続する場合、役員変更や決算等の次回手続を誰が担当するか。

医療機能情報報告は、G-MISを使って行う施設の報告です。医療法人の決算届・経営情報報告で使うMCDBとは、対象となる手続を分けて管理します。厚生労働省の医療機能情報提供制度/医療法人の決算届・経営情報報告

相談前に、変更前後の資料をそろえましょう

相談には、現在の開設許可書・開設届の控え、保険指定通知書、法人の定款・役員等の資料、施設の図面、契約一覧、変更前後の比較表をご用意ください。

すべてを完成させてからでなくても、まだ決まっていない項目を伝えると相談を進めやすくなります。

行政手続の相談では、「誰から誰へ、どの施設を、いつ引き継ぎたいか」をお伝えください。法人を残すのか、新しい開設者に切り替えるのかを整理してから、保健所と地方厚生(支)局の予定を合わせていきましょう。

法人設立から運営・変更までの全体は、医療法人の総合ガイドで確認できます。

誰から誰へ、どの施設を、いつ引き継ぎたいかをお聞かせください。

ご相談内容に応じて、行政手続きの対応範囲と費用をご案内します。保険指定、登記・税務、契約等は、依頼先と担当範囲を別にご確認ください。

医療法人・診療所の手続きのご相談。サクセスファン行政書士事務所。電話090-3542-8440。
  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士開業・1973年1月生・神戸市出身。兵庫工業高等学校卒業、慶応義塾大学通信教育課中退。富士通株式会社でシステムエンジニアとして2年勤務。自分のやりたい仕事でないと退職。その後、30以上の職種を経験した後、起業家をサポートするため、平成17年2月に行政書士開業。1000社50業種以上に会社設立・許認可など5000以上の行政手続きを代行。