警備業の立入検査は、営業所などの業務状況と帳簿・書類等を確認する法令上の検査です。検査の連絡があってから書類の見た目だけを整えるのではなく、認定・人員配置・教育・契約・記録が、実際の業務と一致しているかを日頃から確認します。
不備が見つかったことと、直ちに営業停止になることは同じではありません。一方、是正すれば過去の違反が必ず不問になるわけでもありません。この記事では、警備会社の経営者・管理担当者に向け、検査の範囲、行政処分の違い、点検と是正の進め方を整理します。
警備業の立入検査に備えるには、書類と実態の一致を点検する
点検から是正までの流れ
① 認定・届出を確認
期限、営業所、役員、責任者、業務地を照合
↓
② 現場と記録を照合
勤務・配置・教育・契約・備付書類を確認
↓
③ 不備の内容を特定
対象者、現場、期間、原因を事実で整理
↓
④ 必要な是正を実施
現在の違反状態と再発の原因を改善
↓
⑤ 実施結果を確認・保存
担当者、期限、確認資料を残す
この記事は、検査のための虚偽記録や形式的な帳尻合わせではなく、適正な運営を確認するための入口です。個別の書類・教育内容は関連記事で確認し、実際の検査・報告要求では担当窓口の指示内容を確かめて対応してください。
立入検査の対象は営業所・基地局・待機所
警備業法第47条により、公安委員会は法律の施行に必要な限度で、警察職員に営業所、基地局、待機所へ立ち入らせ、業務の状況や帳簿・書類その他の物件を検査させることができます。法第46条には、業務状況に関する報告や資料提出を求める規定もあります。
警察庁通達では、立入りの対象となる待機所は機械警備の待機所だけでなく、一般の警備員詰所等も含む一方、対象施設内の単なる休憩所等は含まないと整理しています。呼び名だけでなく、実際にどの業務を行う場所かで確認します。
立入検査をする職員は身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示することとされています。また、この立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないとされています。検査の目的・対象範囲を確認し、事実と資料に基づいて対応しましょう。
報告・資料提出の要求は原則として書面によりますが、緊急を要し書面によるいとまがない特別の事情がある場合には、口頭で行われることもあります。書面がないことだけを理由に放置せず、担当部署・要求内容・期限を確認してください。
検査の予定を全国一律に「年1回」「必ず事前連絡あり」と決めつけることはできません。連絡がある場合は、対象拠点、期間、準備資料、対応担当者を確認します。電子記録を使う場合も、必要な記録をすぐ表示・説明できる状態にしておきます。
確認先:e-Gov法令検索「警備業法」(第38条・第46条・第47条)
確認先:警察庁「警備業法等の解釈運用基準について」(第32)
指示・営業停止・認定取消しは、それぞれ別の制度
| 措置 | 主な内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 指示 | 違反により適正な実施が害されるおそれがある場合に、必要な措置を求める | 法48条 |
| 営業停止命令 | 法定の要件に該当する場合に、管轄区域内の営業の全部・一部を6か月以内停止 | 法49条1項 |
| 認定取消し | 不正な認定取得、法定の要件不適合等により認定を取り消す | 法8条 |
| 営業廃止命令 | 認定を取り消された後の営業等、同項の対象者に営業廃止を命ずる | 法49条2項 |
法第48条の「指示」は、単なる口頭の注意と同じものではありません。指示の内容を守らない場合は、営業停止や罰則の問題につながり得ます。受け取った文書が何に基づくものか、実施すべき措置と期限を正確に確認します。
営業停止は、違反によって警備業務の適正な実施が著しく害されるおそれがある場合や、指示に違反した場合などに命じられ得ます。「初めは必ず注意だけ」「指示を一度受けてからでないと停止されない」という順序が保証されているわけではありません。
法第49条第1項の停止の効果は、処分した公安委員会の管轄区域内における警備業務に係る営業です。複数県で営業する場合は、処分書の区域・対象業務・期間を確認し、自社判断で対象を狭く解釈しないでください。
認定取消しは、全ての書類不備について自動的に行われる処分ではありません。法第8条に定める事由には、不正な認定・更新、一定の要件への該当、正当な事由なく認定後6か月以内に営業を開始しない、又は引き続き6か月以上休止し、かつ現に営業を営んでいない場合等があります。個別の事由・条件を条文で確認します。
行政処分と刑事罰も別です。例えば、報告や資料提出をしない・虚偽の報告をする、検査を拒む・妨げる・忌避する行為は、法第58条で罰則の対象とされています。検査が行政上の手続であることは、拒否してよいという意味ではありません。
確認先:e-Gov法令検索「警備業法」(第8条・第48条〜第50条・第57条〜第59条)
日常点検は、認定・人・現場・記録のつながりを見る
次の表は、社内点検の入口です。全ての事業者に同じ資料だけが求められるという固定の検査リストではありません。自社の業務区分、営業所、機械警備の有無に合わせて確認します。
| 分野 | 照合する内容 |
|---|---|
| 認定・届出 | 有効期間、役員・営業所・責任者、県外業務、標識が現状と一致しているか |
| 採用・資格 | 採用時確認、責任者の選任、必要な資格者配置と実際の勤務 |
| 教育 | 新任・現任教育の対象、免除根拠、実施時間と実施記録 |
| 契約 | 契約前後の書面交付、交付した版、現場の人数・業務との一致 |
| 備付書類 | 名簿、教育・指導・契約・苦情記録の必要事項と保存 |
| 機械警備 | 管理者、待機所、即応体制、受信・到着・措置の記録 |
書類が存在するかだけではなく、現場の事実と一致するかを見ます。例えば、教育記録の日に実際の勤務が重なっていないか、資格者を配置した記録と勤務表が一致するか、契約上の人数と実際の配置が違う場合に適切な手続がされているかを確認します。
新任教育を実施したか、現任教育の対象年度や免除条件が合っているかは、警備員の採用・新任教育・現任教育で確認できます。教育を後から実施しても、過去に未実施で配置した事実までなかったことにはなりません。
書類の種類と保存期間は、契約書面と備付書類で確認してください。全てを一律に同じ年数で管理せず、各書類の対象・起算日を整理します。
機械警備を行う場合には、営業所の一般書類とは別に、基地局の記録や即応体制も確認します。詳しくは機械警備の管理者・即応体制・基地局記録をご覧ください。
無認定営業・更新漏れは、営業開始前後の管理で防ぐ
認定申請をしたことだけで営業を始めてよいと判断しないでください。法第57条には、認定申請をせず、または所定の通知を受ける前に営業した場合などの罰則が定められています。認定の有無と有効期間を、営業担当者も確認できる形で管理します。
認定更新の期限と、役員・営業所等の変更届は別です。変更届を出したから有効期間が延びた、更新申請を出せば必ず満了後も営業できる、と判断しないでください。期限管理は警備業認定の更新、変更事項は変更届・廃止届で確認できます。
他人の認定名義を借りて営業することも、正規の認定に代わる方法ではありません。別法人化、事業譲渡、代表者の交代などがあるときは、事業主体が変わるのか、同じ法人の変更なのかを整理し、必要な認定・届出を事前に確認します。
不備が見つかったら、事実を残して原因と是正を分ける
点検や検査で不備が分かった場合は、「何が、いつから、誰・どの現場に、どの範囲で起きていたか」を整理します。担当者の記憶だけで決めず、勤務表、教育資料、送付履歴、契約の版、届出控えなどを照合してください。
- 現在も続く不適切な運用がないか確認し、必要な停止・配置見直し等を検討する
- 元の記録を保存し、不足と誤記、未実施の行為を区別する
- 訂正する場合は、訂正日・理由・確認根拠を残す
- 原因を、担当不明・連絡漏れ・期限管理・確認体制等に分ける
- 是正担当者と期限、完了を確認する人を決める
実施していない教育を実施済みにする、過去の日付で交付したことにする、記録を隠すといった対応はしないでください。不足資料を後から整理する場合も、当時の事実を裏付ける資料と、現在行った補完・是正を区別します。
警察庁通達では、違反状態が既に解消していても、その原因が残り、繰り返されるおそれがある場合には、指示の要件となり得るとされています。書類を1枚直すだけで終わらず、次回も同じ不備が起きない仕組みを整えることが大切です。
行政機関への報告は、求められた範囲と期限を確認し、事実・実施済みの措置・今後の予定を区別して記載します。措置を取ったことが処分の免除を保証するものではありません。事実関係に争いがある場合や、営業継続に関わる処分が見込まれる場合は、早めに弁護士へも相談してください。
行政処分の公表は、自社点検の参考として読む
公安委員会は、基準に従って警備業法に基づく行政処分を公表しています。公表情報を読む際は、処分の種類、根拠条文、処分理由、営業停止なら期間と対象区域を確認します。
全ての指示や違反が同じ条件で公表されるわけではありません。警察庁の公表基準では、指示について過去の処分歴に関する条件を設けています。公表一覧に名前がないことだけで、その事業者に違反や指導歴が一切ないと判断することもできません。
他社の処分日数を、そのまま自社の見込みとして当てはめないでください。違反の内容、複数行為、過去の処分、個別事情等を踏まえた基準で判断されます。例えば岡山県警察は指示・営業停止命令等の基準を公表していますが、実際には関係公安委員会の最新基準を確認します。
確認先:警察庁「警備業法・探偵業法に基づく行政処分の公表基準」
点検・書類整理の相談は、現状が分かる資料から
まず、認定・届出控え、責任者と警備員の一覧、教育記録、契約書面、現場の勤務資料を整理しましょう。検査や報告要求の連絡がある場合は、その文書と提出期限も確認します。個人情報を含む資料は、相談に必要な範囲を確認してから共有してください。
更新・変更届の整理や営業所書類の準備については、サクセスファン行政書士事務所へご相談ください。処分を回避できることや検査で指摘されないことを保証する相談ではなく、現状と必要な手続を整理するための相談です。処分への不服申立てや刑事対応などは、内容に応じて弁護士等への相談を検討してください。