警備員を配置する前には、警備員として働ける要件を確認し、その人の資格・経験と担当業務に応じた新任教育を行います。免除・短縮に該当しない一般の警備員は、新任教育が基本教育と業務別教育を合わせて20時間以上、現任教育が年度ごとに合わせて10時間以上です。
採用が決まったこと、前職で研修を受けたこと、現場に経験者がいることだけで、すぐ配置できるとは限りません。この記事では、警備会社の採用・教育担当者や開業準備中の方に向け、採用時の確認、教育時間の判断、実施方法、記録と配置前確認を整理します。
事業者自身の認定は警備業認定の総合ガイド、教育を管理する責任者の資格・選任は警備員指導教育責任者で確認できます。ここでは、採用する警備員一人ひとりを配置するまでの準備を扱います。
警備員の採用から配置までは、要件確認と教育を順に進める
配置前の確認フロー
① 警備員としての就業要件を確認
年齢・欠格事由 / 必要な確認資料
↓
② 担当する警備業務と資格・経験を照合
検定の種別・級 / 資格者証 / 従事期間
↓
③ 必要な新任教育を計画・実施
担当者・内容・時間・受講状況を確認
↓
④ 記録と配置条件を確認して現場へ
現任教育は年度の計画で継続管理
教育時間の免除・短縮は、理由と確認資料を残して判断します。
警備業法第14条は警備員として働ける人の制限、第21条は会社による教育・指導監督の義務を定めています。会社が認定を受けていることと、個々の警備員が就業要件や教育を満たしていることは、別に確認します。
確認先:e-Gov法令検索「警備業法」(第14条・第21条)
採用時は18歳以上と欠格事由を確認する
18歳未満の人、または警備業法第3条第1号から第7号のいずれかに該当する人は、警備員になることができません。事業者の認定についての第3条全体と、警備員に適用される第14条の範囲を混同しないようにします。アルバイトや短期雇用でも、警備業務へ従事させるならこの確認が必要です。
警察庁の解釈運用基準では、本人の誓約書だけでなく、履歴書・診断書等の提出、面接など、一般私人として可能な範囲で必要な確認を行うこととされています。前の警備業務の職場に問い合わせる場合は、事前に本人の承諾を得ることも示されています。
応募者の家族関係や思想など、就業要件の確認に関係のない情報を広く集めるのではなく、法令上の確認に必要な範囲を整理します。診断書などの情報は取扱担当者を限定し、確認のために実施した措置の記録を適切に管理してください。
健康状態や過去の事情については、病名や経験だけから一律に就業不可と決めるのではなく、法令の条件と現在の事実関係を確認します。認定の要件との違いを含めた制度の整理は警備業認定の要件・欠格事由も参考になります。
確認先:警察庁「警備業法等の解釈運用基準について」(第13)
新任20時間・現任10時間は、免除等がない場合の原則
| 教育 | 免除・短縮対象以外の一般警備員 | 管理のポイント |
|---|---|---|
| 新任教育 | 基本教育・業務別教育を合わせて20時間以上 | 実際の警備業務に就かせる前に実施 |
| 現任教育 | 基本教育・業務別教育を合わせて年度ごとに10時間以上 | 対象者・内容・実施日を年度の計画で管理 |
基本教育は法令や警備員としての基本的な知識・技能、業務別教育は従事する警備業務に即した内容です。原則の20時間を、法令上必ず「基本10時間+業務別10時間」に固定する制度と考えないでください。必要な教育事項を満たし、担当業務や知識・技能の程度に応じて計画します。
施設警備と交通誘導では、現場で必要となる動作や注意点が異なります。時間数だけを合わせて、担当業務と関係の薄い内容で置き換えることは適切ではありません。また、教育を受けても、特定の現場に必要な検定合格者の配置条件まで自動的に満たすわけではありません。
現任教育は、入社記念日から1年間という自己流の管理ではなく、年度ごとの教育計画と対象者で管理します。新任教育を受けた年度の現任教育の取扱いや、年度途中の採用・休職・業務変更は、適用条件を確認して処理します。
確認先:警視庁「警備員に対する教育時間」
経験者・検定合格者の短縮や免除は、担当業務との対応を見る
「経験者だから研修なし」「2級を持っているから現任教育も不要」といった一括処理は避けます。検定合格証明書の種別・級、指導教育責任者資格者証の区分、実際に担当する業務、過去の従事期間によって取扱いが変わります。
| 代表的な条件 | 新任教育 | 現任教育 |
|---|---|---|
| 当該業務の1級検定合格証明書があり、その業務に就く | 基本・業務別とも免除 | 基本・業務別とも免除 |
| 当該業務の2級検定合格証明書があり、その業務に就く | 基本・業務別とも免除 | 基本免除、業務別は年度ごとに6時間以上 |
| 当該区分の指導教育責任者資格者証があり、その区分の業務に就く | 基本・業務別とも免除 | 基本・業務別とも免除 |
| 最近3年間に当該業務の従事期間が通算1年以上の経験者が、その業務に就く | 基本・業務別を合わせて7時間以上 | 基本・業務別を合わせて10時間以上 |
これは代表例です。別の業務に就く場合、元警察官、機械警備業務管理者資格者証を持つ場合などは別の整理になります。上の表に当てはまるように経歴を読み替えず、公式の一覧と施行規則で該当する条件を確認してください。
検定については、同じ1号・2号という大きな区分だけで判断せず、検定の種別と配置する業務を照合します。合格したという申告だけでなく、合格証明書の交付状況を確認します。経験者の期間も「何年か勤務したことがある」ではなく、最近3年間の当該業務の従事期間で確認します。
前の会社で教育を受けていても、それだけで新しい会社の教育義務がなくなるわけではありません。転職者についても、現在の会社が資格・経験・担当業務を確認して必要な教育を判断します。免除がある場合も、必要な指導・監督まで不要になるわけではありません。
教育担当者・実地教育・オンライン教育を正しく組み合わせる
教育は、指導教育責任者や、法令上その教育を行える知識・経験を備えた人が担当します。単に現場経験が長い先輩なら、どの教育でも担当できると考えないでください。教育内容に応じた担当者の要件を確認します。
現場での実地教育は、勤務の代わりではない
新任の業務別教育の一部を実地教育で行える場合がありますが、時間数には上限があります。警視庁の案内では、実地教育は必要な動作・技術等を経験させるため、現場でマンツーマン方式で行うものとされています。
新任教育は実際の勤務に就ける前に行うものです。「先輩と現場に出したから、その勤務時間を全て研修として数える」という処理はしないでください。実施者の要件、対象となる教育内容、算入できる時間を確認して記録します。
オンラインは、動画を渡すだけでは完了しない
法令の要件を満たした非対面の講義は可能です。ただし、本人確認、受講状況の確認、履修状況の確認、教育を行う人へ質問できる仕組みなどが必要です。警察庁通達では、教材の初回視聴でスキップできないことなども示されています。
システムを導入するときは、対象となる教育事項、確認方法、質問対応、記録の保存を確認します。「動画を再生できる」ことだけをもって、法定教育を実施したとは判断しないでください。
外部研修を利用しても会社の責任は残る
外部の教育を使える場合もありますが、講師・実施場所・方法・内容の条件を確認し、自社の教育計画と対応させます。警察庁通達では、部外者が行う実地教育は教育時間数へ算入する対象から除外されています。外部へ一任して、何を何時間受けたか確認しない運用は避けましょう。
教育記録・賃金・現場配置をまとめて管理する
営業所には、警備員名簿、就業要件の確認措置を記録した書類、教育計画・教育実施関係の書類などを備えます。予定を立てた記録と、実際に実施した記録を分け、欠席・中断・追加教育も反映します。
- 対象者と担当業務、資格・経験の確認資料、免除・短縮を判断した根拠。
- 教育日、内容、時間、実施者、受講・履修を確認した記録。
- 不足時間や未実施内容、追加教育の予定と完了確認。
- 配置する現場、必要な検定合格者等の配置条件、当日の連絡・指揮体制。
教育計画書は、施行規則第66条第3項により、年度開始日の30日前までに備え付ける必要があります。年度末に前年の記録を整理するだけでなく、次年度の対象者と実施予定も早めに準備しましょう。
保管期間も書類ごとに確認します。施行規則第66条では、警備員名簿は退職後1年間、教育計画・教育実施関係の所定書類は当該年度終了後2年間などと定められています。全ての書類を同じ期限で一括廃棄しないようにしてください。
確認先:e-Gov法令検索「警備業法施行規則」(第66条・第67条)
会社が参加を義務付ける研修・教育訓練の受講時間は、労働時間として扱う必要があります。「研修だから無給」とせず、勤怠・賃金・最低賃金の取扱いを確認します。教育計画を組む際は、勤務シフトや休憩も含めて無理のない日程にしましょう。
確認先:厚生労働省の労働時間の考え方(義務付けられた研修・教育訓練)
採用・新任教育・現任教育のよくある質問
短期のアルバイトにも新任教育は必要ですか?
短期やアルバイトという雇用形態だけで教育が不要にはなりません。警備員として配置するなら、就業要件と資格・経験に応じた教育を確認します。
2級検定があれば現任教育も全て免除ですか?
当該業務に就く2級合格証明書の保有者でも、原則として業務別の現任教育は年度ごとに6時間以上必要です。担当業務との対応と、他の資格による取扱いを個別に確認してください。
新任教育を終えれば、どの現場にも配置できますか?
教育の完了とは別に、担当業務との対応、検定合格者の配置条件、現場での指揮・連絡体制を確認します。人員不足を理由に必要な教育や配置条件を省略することはできません。
開業準備では、採用人数と教育日程を先に整理する
警備業認定の申請準備では、業務区分、営業所、責任者に加えて、採用予定者の経験・資格と教育日程を整理しましょう。サクセスファン行政書士事務所への申請相談では、開業希望時期と人員体制をお伝えいただくと、認定申請と営業開始準備の順序を確認しやすくなります。
