飲食関連許可

飲食店営業許可の施設基準|物件契約と工事の前に確認すること

飲食店の施設基準・物件工事の確認。店舗や図面は一般イメージで、許可適合を示す公式図ではありません。
店舗・図面は一般イメージです。許可適合を示す公式図ではありません。

「前も飲食店だったから、この厨房なら大丈夫だろう」 「シンクを二つ付ければ、営業許可は取れるのだろうか」

物件探しでは、こうした設備の疑問が出てきます。ただ、飲食店営業許可の施設基準は、設備の数をそろえるだけでは判断できません。その店で何を調理し、どのくらいの量を扱い、どこで洗い、保管し、提供するのかによって、必要な配置や設備を確認します。

候補物件が見つかったら、契約や工事を決める前に、メニューと設備の配置案を持って管轄の保健所へ相談しましょう。この記事は、固定店舗の飲食店について、内見から事前相談までに見るべき点を整理するための案内です。

申請・検査までの全体の流れは、全国総合案内で確認できます。

飲食店営業許可・全国の開業手順。店舗や図面は一般イメージで、許可適合を示す公式図ではありません。
飲食店営業許可の取り方|全国の開業準備と手続案内

飲食店営業許可の準備を、物件契約前の相談から申請・検査、開業後の更新まで解説。必要書類、設備、食品衛生責任者、HACCPと、自治体ごとに確認すべき費用・日程を整理します。

続きを見る

飲食店の施設計画は、設備を選ぶ前に作業を整理する

同じカフェでも、仕入れた食品を温めて提供する店と、生の食材から複数の料理を作る店では、店内の作業が違います。

物件を確認するときは、次の順番で考えてみてください。

  1. 何を仕入れるか
  2. 店のどこで保管するか
  3. どの工程を店内で行うか
  4. どこで盛り付けて提供するか
  5. 食器や器具をどこで洗い、どこへ戻すか
予定する作業と厨房内で使う場所を対応させて確認する概念図
配置検討のイメージです。施設基準への適合を示す図面ではありません。

これは、申請書に新たな必須項目を増やす話ではありません。予定する営業を、設備の相談ができる形にするための整理です。

たとえば、仮に「ランチでサラダと加熱料理を提供する店」を考えるなら、食材の保管、洗浄、下処理、加熱、盛付け、食器洗浄まで、作業する場所を配置図に書き込みます。その結果、同じ場所や設備へ作業が集中するなら、分け方や衛生管理の方法を相談する材料になります。

メニュー名だけを渡すよりも、「どこまでを店内で行うか」が分かる方が、必要な設備について具体的に話せます。

施設基準は、国の共通基準と出店先の条例を確認する

食品衛生法では、国の省令で定める基準を参酌して、自治体が条例で施設基準を定める仕組みになっています。全国共通の土台はありますが、どの地域の物件にも同じ数値や図面をそのまま使えるわけではありません。食品衛生法第54条

また、固定店舗とキッチンカー、露店では、確認すべき条件が異なります。検索で見つけた設備表が、自分の営業形態を対象としているかを最初に確かめてください。

国の施設基準は、食品衛生法施行規則の別表第十九・第二十で確認できます。実際の物件にどう当てはめるかは、出店先の公式案内と保健所の確認につなげます。

内見で確認する設備と、相談前に残しておく情報

設備を見て「ある・ない」だけで終わらせず、位置、使い方、修正できるかまで確認します。内見時の写真と簡単な配置図を残しておくと、後で相談しやすくなります。

見る場所 物件で確認すること
厨房と客席・住居などの関係 食品を扱う場所がどこで、他の場所とどう分かれているか
手洗いと洗浄設備 手を洗う設備、食品や器具を洗う設備の位置・大きさ・使い分け
給水と排水 使用する水の種類、給湯、排水経路、設備を増やせる位置
冷蔵庫・保管場所 扱う食材量を収められるか、温度を確認できるか
床・壁・天井 清掃できる材質と状態か、傷みや清掃しにくい隙間がないか
換気と照明 作業場所の換気、結露、清掃時の見やすさ
便所・更衣・清掃用具 厨房との位置関係、手洗い、衣服や用具を置く場所
廃棄物と薬剤 食品を汚染しない保管場所を確保できるか

この表は内見用の整理であり、設備がそろえば必ず許可されるという判定表ではありません。大阪府の設備解説にも、設備の機能、配置、保管、給排水などの確認事項が示されています。地域の資料として、物件を見る際の参考にできます。

区画は、壁があるかだけで判断しない

食品を扱う場所では、作業に応じた区画や設備配置を考えます。国の基準には、動線の設定や、同じ区画を時間を分けて使う場合の洗浄・消毒など、衛生管理措置に応じた取扱いもあります。一方、同じ建物に住居など食品を扱わない場所がある場合は、その区画を確認する必要があります。

つまり、「必ず全面を壁で囲う」「カウンターがあるから区画できている」と、形だけで決めないことです。客や従業者の動き、食品の流れ、営業中の使い方を図面上で説明しましょう。

自宅の一部、花屋などとの複合店舗、他の事業者との共用厨房は、何を共用し、どこを分けるのかが相談の中心になります。

手洗いとシンクは、目的を分けて確認する

手を洗う設備と、食品・食器・器具を洗う設備は、同じ目的ではありません。

国の基準は、従業者の手洗いについて、必要な個数の流水式設備と、洗った手が再び汚れない構造の水栓を求めています。食品などを洗う設備は、使用目的に応じた大きさと数を確認します。

そのため、「シンクは全国一律で二槽」「指定の寸法なら十分」「手洗い水栓はセンサー式以外すべて不可」といった単純な決め方は避けてください。予定する洗浄作業、食器洗浄機の使用、手洗いの位置や水栓の構造を、地域の基準に照らして確認します。

設備を発注する前なら、別の製品や配置を選べます。型番や仕様書がある場合は、それも相談時に示しましょう。

床や排水の工事は、清掃方法と一緒に考える

国の基準では、床・壁・天井に清掃しやすい材料と構造を求めています。そのうえで、清掃に水が必要な施設では、床の不浸透性や良好な排水などの条件があります。

すべての店で同じ床材・排水工事に決まるのではなく、扱う食品と作業、清掃方法に応じて確認します。ただし、「水をまかないつもりだから排水は不要」と自分だけで結論を出すのも早計です。

簡易な飲食店営業には、一定の条件の下で一部基準を緩和する取扱いがあります。カフェと名乗れば自動的に適用されるものではありません。営業内容を伝え、どの基準で計画すべきか確認してください。

居抜き店舗では、以前の設備と今回の営業を照らし合わせる

居抜きには、設備を活用できる魅力があります。ただし、「前の店が許可を取っていた」という情報だけでは、今回の許可や改修の要否までは分かりません。

最低限、次の資料や情報を集めましょう。

  • 現在の厨房・客席・便所の配置
  • 残る設備と撤去される設備
  • 以前と今回のメニューや調理工程の違い
  • 改装予定の場所
  • 既存許可の名義、内容、有効期限など、確認できる情報

ここで分けたいのは、設備を使えるかという問題と、営業許可を引き継げるかという問題です。厨房をそのまま借りることと、事業譲渡によって許可営業者の地位を承継することは同じではありません。

営業の引継ぎも予定しているなら、契約内容や施設変更の予定を保健所へ伝えて、必要な手続を確認します。施設の状態を見ただけで承継可否を決めないようにしてください。食品衛生法第56条の承継制度

保健所への相談では、工事の前提を一つずつ固める

相談用の資料は、初めから立派に製本する必要はありません。現在分かっていることと、まだ決めていないことを分けて伝えます。

持っていく情報 確認したいこと
所在地と物件資料 担当窓口、対象となる施設
メニューと調理工程 必要な許可、設備・作業区分
現況図と配置案 そのまま使える部分、変更が必要な部分
設備の写真や仕様 手洗い、水栓、洗浄・保管設備などの考え方
工事・開業の予定 申請と検査までに整えること

大阪市も、工事前に設計図面などを持参して相談することを勧めています。大阪市の営業許可申請案内

相談後は、確認した日、提示した図面の版、指摘された内容を残します。設備の位置やメニューを変えた場合には、前の相談結果をそのまま当てはめず、変更点を伝えてください。

気に入った物件が見つかると、早く決めたくなるものです。そのときは「この店を諦めるか」ではなく、「どこを直せば予定する営業に近づけるか」を先に整理してみてください。必要な工事と費用が見えてからなら、物件同士も比べやすくなります。

建築・消防・賃貸条件も、別の確認として進める

保健所の確認だけで、物件のすべてが決まるわけではありません。食品の営業許可は、土地利用、建築、消防などの適合まで認める制度ではありません。大阪府の他法令確認に関する案内

建物の用途や改装は自治体の担当窓口、消防設備は消防署へ確認します。さらに、予定する工事や営業が賃貸条件に合うかは、貸主側とも確認する必要があります。

保健所へ設備案を見せる段階で、建築・消防や貸主への確認も進めると、別の理由で計画を変える必要があるかを早めに整理できます。具体的な建築設計や工事の判断は、その専門家の担当範囲として扱います。

まずは、メニューと配置案を持って相談できる状態へ

物件選びで目指すのは、自分だけで施設基準に合格と判定することではありません。予定する営業を説明し、修正が必要な部分を確かめたうえで、契約や工事の判断をすることです。

候補物件の図面に、手洗い、シンク、冷蔵庫、調理台、客席、便所を書き込み、店内で行う作業のメモを添えてみてください。不明な寸法や設備は「未確認」のまま、現地で測る項目として整理して構いません。

設備の計画が固まったら、必要書類と図面の準備を進めましょう。

飲食店の書類図面・申請準備。店舗や図面は一般イメージで、許可適合を示す公式図ではありません。
飲食店営業許可の必要書類と図面|申請準備の進め方

飲食店営業許可の必要書類を、基本資料と法人・使用水などの条件別に整理。図面に示す設備、施工図を使う際の確認、申請書との照合を解説します。提出部数や様式は出店先の案内で確認しましょう。

続きを見る

自分で資料をそろえて保健所へ相談する方法もあります。図面や申請準備を整理する時間が取りにくい場合は、行政書士へ依頼する範囲を相談することも選択肢です。神戸で支援を検討する方は、事務所のお問い合わせフォームから、店舗所在地、予定するメニュー、物件や工事の状況、手元の配置案をお知らせください。予定する内容への対応可否と支援範囲を確認してから、依頼する部分を決めましょう。

サクセスファン行政書士事務所へのご相談

飲食店営業許可のご相談。店舗所在地・メニュー・工事の状況をお知らせください

お電話かメールにて、お気軽にお問い合わせください。
電話:090-3542-8440

  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士開業・1973年1月生・神戸市出身。兵庫工業高等学校卒業、慶応義塾大学通信教育課中退。富士通株式会社でシステムエンジニアとして2年勤務。自分のやりたい仕事でないと退職。その後、30以上の職種を経験した後、起業家をサポートするため、平成17年2月に行政書士開業。1000社50業種以上に会社設立・許認可など5000以上の行政手続きを代行。