
医療法人の決算が終わっても、税務申告だけで県への報告が完了するわけではありません。兵庫県への「事業報告書等の届出(決算届)」と「経営情報等の報告」は、別々に確認が必要です。
どちらも原則は毎会計年度終了後3か月以内。外部監査の対象となる一定の法人は経営情報等の報告が4か月以内になりますが、決算届まで4か月に延びるわけではありません。まず年度末日から期限を確認し、会計資料の準備、法人内の監査・承認、MCDBでの届出を分けて予定に入れましょう。厚生労働省の制度案内
この記事は、兵庫県に主たる事務所を置く既存の医療法人の理事長・事務担当者向けです。法人設立や役員変更などを含めた手続の全体像は、医療法人の設立・運営ガイドをご覧ください。
決算届・経営情報報告の準備でお困りの方は、年度末日と現在の書類の状況をお知らせください。
決算届と経営情報報告は、何が違う?
決算届は法人の事業・財産・決算に関する書類を届け出るものです。一方、経営情報等の報告では、法人が開設する病院・診療所ごとの収益・費用などを報告します。決算届を提出したから経営情報報告も済んだ、とは扱えません。
| 確認する点 | 事業報告書等の届出(決算届) | 経営情報等の報告 |
|---|---|---|
| 基本となる単位 | 医療法人単位 | 病院・診療所単位 |
| 主な内容 | 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、監査報告書など | 施設ごとの収益・費用、職種別人数など |
| 原則の期限 | 毎会計年度終了後3か月以内 | 毎会計年度終了後3か月以内 |
| 外部監査対象法人の期限 | 3か月以内 | 医療法第51条第2項の対象は4か月以内 |
| 電子提出の窓口 | MCDB | MCDB |
経営情報等の報告は、原則としてすべての医療法人が対象です。ただし、当該会計年度の法人税申告で、租税特別措置法第67条第1項の社会保険診療報酬に係る所得計算の特例、いわゆる四段階税制を適用している場合は対象外です。この場合も、その旨を様式3で都道府県へ報告する取扱いがあります。「小規模だから不要」と判断せず、実際にその年度の申告で特例を適用したかを顧問税理士に確認してください。この例外で決算届まで不要になるわけではありません。
経営情報報告の対象施設は本来業務としての病院・診療所です。介護老人保健施設・介護医療院や、附帯業務として行う巡回診療所などは含みません。複数県に施設がある場合も、報告先は法人の主たる事務所がある都道府県です。厚生労働省「報告に係る取扱い」
提出期限から逆算する:決算書の完成待ちにしない
- 年度末・期限を確認
- 税理士等へ資料依頼
- 法人内の監査・承認
- 決算届 + 経営情報報告
二つを別々に確認 - MCDBで届出 → 状態・差戻し確認
原則3か月以内。経営情報のみ、法定外部監査の対象法人は4か月以内。
年度末日が分かった時点で、二つの報告の期限を別々に管理します。例えば3月31日決算の法人では、通常は6月30日までに両方の報告を行う段取りです。外部監査の対象法人については、経営情報等の報告は7月31日までですが、決算届は6月30日までという違いがあります。
医療法では、事業報告書等の作成は毎会計年度終了後2か月以内とされています。その後にまとめて監査を頼むのではなく、監事が確認する日、理事会、社員総会等の日程を会計資料の作成と並行して調整する必要があります。医療法第51条・第51条の2
外部監査の「4か月」は、任意の税理士確認とは違う
経営情報報告の4か月の対象は、医療法第51条第2項に該当し、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない法人です。顧問税理士が決算書を作成・確認しているという理由だけでは、この期限になりません。該当区分は県の案内と法人の監査体制を照合して確認しましょう。兵庫県の決算届・経営情報報告の案内
必要書類と、法人内で先に決める担当
決算届の基本書類
県の様式一覧を基に、まず次の書類がそろうか確認します。紙で出す場合の届出書と、MCDB上で作成・登録する情報は扱いが異なるため、提出方法に合った様式を使ってください。
- 決算届の届出書(県の様式第11号)
- 事業報告書
- 財産目録
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 関係事業者との取引の状況に関する報告書
- 監事監査報告書
貸借対照表・損益計算書は、病院・介護老人保健施設・介護医療院を開設する法人と、診療所のみを開設する法人で様式が分かれます。関係事業者との取引は、該当する取引がない場合も、その旨を記載した報告書の提出が必要です。
医療法第51条第2項の法人には、純資産変動計算書、附属明細表、注記、公認会計士等の監査報告書などの追加書類があります。社会医療法人についても別途の確認書類があります。上の基本書類だけで完了とせず、自法人の区分に対応する県の一覧を確認してください。MCDBで提出する書類は、原則としてシステムからダウンロードした様式を使用します。兵庫県「様式について」
税理士・事務担当・監事で、作業を分ける
税理士へ「決算届に使う資料が欲しい」と伝えるだけでは、施設別の経営情報や法人内手続の資料までそろうとは限りません。次のように、誰が何を確認するかを決めておくと不足を見つけやすくなります。
| 担当・確認先 | 先に確認しておくこと |
|---|---|
| 顧問税理士・会計担当 | 決算資料の完成予定日、施設別収益・費用の資料、四段階税制の適用有無 |
| 法人の事務担当 | 施設一覧、事業報告、関係事業者の取引情報、必要な人員・給与資料、MCDBの利用状況 |
| 監事・理事会等 | 監査に必要な資料と日程、承認・報告に必要な会議日程 |
| 届出を担当する人 | 対象年度、登録・届出する二つの報告、届出後の照会を確認する担当 |
この表は作業分担の例です。税務申告を依頼している場合も、県への届出まで契約に含まれているかは別に確認してください。会計処理や税務上の判断は顧問税理士等と確認し、行政提出用の書類・期限管理と混同しないことが大切です。
法人内の監査・承認も、提出前の工程
事業報告書等は監事の監査を受け、理事会の承認を受ける流れがあります。社団医療法人では、その後、社員総会に提出し、貸借対照表・損益計算書は承認を受け、その他の書類は内容を報告します。財団医療法人では評議員会に関する読替えがあるため、法人の種類と定款・寄附行為に合わせて進めます。単に会計ソフトから出力した書類をアップロードするだけの作業ではありません。医療法第51条・第51条の2
経営情報は、すべて同じ基準日の数字ではない
経営情報の様式を埋める際は、各欄の説明にある対象期間を確認します。収益・費用は会計年度の情報でも、人数や給与の欄は同じ切り方とは限りません。職種別給与・人数に関する項目には任意項目もあるため、決算書の数字をそのまま全欄に転記しないでください。施設別に資料を整理し、最新の記載要領に沿って対応させます。厚生労働省の様式・記載要領
MCDB提出の手順:保存と届出完了を分けて確認
2025年4月から、決算届・経営情報報告のオンライン提出先は、従来のG-MISからWAM NETのMCDBへ移っています。兵庫県の他の医療法人手続で利用する電子申請フォームと同じ窓口ではありません。兵庫県の電子申請一覧
1.法人IDと担当者の連絡先を確認する
既にMCDBの医療法人IDがある場合は、そのIDを確認し、重ねて発行依頼をしないようにします。旧G-MISのIDをそのまま使うことはできません。
IDが未発行の場合は、県のページからID発行依頼票を入手し、案内に沿って県医務課へメールで依頼します。法人整理番号は5桁で、複数の施設があっても法人単位です。不明な場合は県の整理番号一覧等で確認します。退職した担当者だけが案内メールを受け取っていないかも、この段階で点検しましょう。兵庫県のMCDB・ID発行案内
2.年度と二つの報告を確認して、入力・登録する
MCDBの入口からログインし、報告する年度と法人・施設の情報を確認します。決算届の書類登録と、経営情報等の入力・登録をそれぞれ進めます。オンライン提出用の様式はMCDB内から取得し、独自に列や様式を変えないでください。
入力の不足やエラーがある場合は、元資料と記載要領を照合して修正します。二つのうち片方を保存した段階で、両方提出済みと扱わないことが重要です。
3.「届出」を実行し、年度別の状態を確認する
MCDBでは、書類を登録・保存しただけで届出が済むわけではありません。操作説明書に従い、「年度別届出状況一覧」で状態を確認して「届出」を実行します。その後、事業報告書等と経営情報等のそれぞれについて、未届出のまま残っていないか確認してください。
ただし、「届出済み」の表示と、都道府県側の確認・承認がすべて終わったことは同じではありません。提出後も連絡先メールやシステムを確認し、「差戻し」があれば内容を直して再度届け出ます。年度、届出日、提出ファイル、状態を確認できる画面や履歴を法人内で保管しておくと、担当者が替わっても経緯を引き継げます。MCDB操作説明書・医療法人向け
MCDBを利用できない場合は、報告ごとに提出方法を確認
県の案内には、決算届の紙提出、経営情報等のメール・郵送提出についても記載があります。ただし、決算届の提出部数・窓口は施設の種類や主たる事務所の所在地によって異なります。「どちらも同じ宛先に郵送すればよい」とせず、県の該当欄で二つを分けて確認してください。兵庫県の提出先・部数の案内
電子申請では受付印を押した控えは交付されません。金融機関等に控えを求められる予定がある場合は、必要とされる資料を先に確認しておきましょう。兵庫県の電子申請に関する注意事項
公開される決算届と、経営情報の取扱いは分けて考える
兵庫県は、事業報告書等をウェブで閲覧できるようにしています。決算届を「県にだけ見せる書類」と考えず、閲覧対象となることを踏まえて作成します。不要な個人情報を独自の別紙に付け足すなど、必要書類以外の情報を混ぜないよう注意してください。兵庫県・医療法人事業報告書等の閲覧
経営情報等の報告は、同じ公開用書類ではありません。国の通知では、個人や法人を特定できる内容の公表を前提としない収集であり、秘密の保護を図るとされています。これは「どのような場合も一切利用・公表されない」という意味ではなく、分析等に利用される制度です。決算届の閲覧制度と混同せず、求められた様式に沿って報告しましょう。厚生労働省の通知
決算後によくある疑問
期限を過ぎたら、翌年度分と一緒でよい?
期限を過ぎても届出は必要です。翌年度まで待たず、未提出の年度と書類、決算届・経営情報のどちらが残っているかを整理し、県へ対応を確認してください。まず「資料未完成」「入力未完了」「届出ボタン未実行」「差戻し未対応」のどこで止まっているかを見分けると、必要な作業が明確になります。厚生労働省の届出案内
税理士に決算を頼んでいれば、報告も任せたことになる?
税務申告と医療法上の報告は別です。税理士等との依頼範囲を確認し、資料作成、法人内の監査・承認、MCDBへの登録、最後の届出実行、差戻し確認の担当を決めてください。「誰かが提出しているはず」のまま期限を迎えないようにします。
設立後、最初の決算でも報告する?
決算届は毎会計年度の届出です。設立後最初の年度も、定款等で年度末を確認して準備します。経営情報等についても、自法人と施設の対象・例外を別に確認してください。初年度だから一律に両方不要、という扱いにはしないでください。
今日確認するのは、年度末・提出状況・担当者の3点
最初に前年度の提出控えと今年度の決算予定を手元に置き、次の順で確認しましょう。
- 年度末日を確認し、決算届と経営情報等の期限を別々に書き出す。
- MCDBのIDと対象年度の状態を確認し、二つの報告の未完了部分を把握する。
- 税理士・会計担当へ必要資料と完成予定日を確認し、法人内の監査・承認と届出担当を決める。
サクセスファン行政書士事務所へご相談の際は、法人名、主たる事務所の所在地、年度末日、現在そろっている書類、MCDBの提出状況をお知らせください。行政手続の整理について、状況を伺って対応範囲をご案内します。パスワードなどの認証情報を問い合わせ文に記載する必要はありません。
本記事は2026年11月2日に確認した兵庫県・厚生労働省の案内に基づきます。様式やシステムの取扱いは更新されるため、実際の提出時は最新の公式案内をご確認ください。
書類の不足や提出の段取りを整理したい方は、ご相談ください。対応範囲は状況を伺ってご案内します。
