医療・介護許可

診療所開設ガイド|物件選びから届出・保険診療開始まで

診療所 開設の準備 総合ガイド。明るい診療室、聴診器と準備書類のイメージ。

「クリニックを開きたい。物件探しと手続きは、どちらから始めればいい?」
「希望する開院日から、保険診療も始められる?」

診療所開設は、まず開設者・病床の有無・診療方針を決め、物件契約の前に所在地と図面を相談するところから進めます。必要な許可・届出を確かめたら、工事、採用、医療機器の準備を同じ工程表に並べましょう。

開設手続きが済んでも、保険医療機関の指定前に保険診療を始められるわけではありません。開設日と保険診療の開始日を分けて考えることが、日程の食い違いを防ぐ第一歩です。

この記事は、主に医科の無床診療所を新しく開設する方に向けた総合ガイドです。個人・法人、有床・無床による違いを確認し、物件選びから必要書類、費用、開院後の報告までを解説します。

この記事のポイント

  1. 開設の条件を決める:誰が、どこで、どのような診療を行うか。
  2. 物件と開院日を具体化する:図面相談、許可・届出、保険指定、書類・費用を確認する。
  3. 患者を迎える準備を終える:診療体制、開院後の報告、専門家への依頼範囲を確かめる。

開設する場所や主体が決まりきっていなくても、現在の構想を整理するところから相談できます。候補物件、診療科目、希望時期をお知らせください。対応業務と費用は、ご相談内容を確認したうえでご案内します。

全国共通の制度と地域の確認先

全国共通の制度と、自治体ごとの運用を分けて読み進めてください。本文中の神戸市・近畿厚生局の手数料や日程は地域の例です。様式、添付資料、提出部数、相談方法、受付日程は、開設予定地の最新案内で確定します。

医療法(厚生労働省)/地方厚生(支)局一覧

診療所開設は、開設者・病床・診療方針の確認から

個人で開設するか、法人等で開設するか

臨床研修を修了した医師が個人で開設する場合は、原則として開設後10日以内の届出を行います。医療法人などが開設する場合は、開設前の許可と開設後10日以内の届出が必要です。医師免許取得時期による取扱いもあるため、本人の資格・研修修了状況を確認して区分を選びます。

「医師が院長になるから個人開設」とは限りません。開設者が医療法人なら、管理する医師が同じでも法人等の手続きです。

これから医療法人を設立する場合は、法人設立の認可・登記と診療所の開設を別の工程として組みます。法人化の検討を含む方は、法人の設立時期が開院計画へ与える影響も先に整理してください。

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無床か、有床か

入院設備のない無床診療所と、病床を持つ有床診療所では、準備が異なります。有床の計画では病床設置等の許可の要否と、地域の医療計画・事前協議の手順を先に確認してください。

例えば神戸市は、新たな有床診療所の開設や病床増加について、開設手続きに先立つ事前協議を求めています。他の地域でも同じ名称・日程とは限りません。

有床の計画を、無床の届出手順だけで進めないでください。将来病床を設けたい場合も、内装の拡張性だけでなく、病床に関する手続きから確認します。

保険診療か、自由診療か

保険診療を行う場合は、医療法上の開設手続きとは別に、保険医療機関の指定を受ける準備が必要です。所在地を管轄する地方厚生(支)局の担当事務所等で指定申請日程を確認し、保健所の手続きと並行して準備します。

自由診療だけの計画でも、医療法上の開設手続きや施設・広告等の確認は必要です。保険指定を申請しない場合も、診療所を開くための許可・届出は別に進めます。

開設場所を決める前に、地域の事前手続きも確認する

新たな無床診療所の開設では、所在地によって追加の事前手続きが関係します。「外来医師多数区域」と「外来医師過多区域」は別の制度上の区分です。名称が似ていても、同じ手続きとは判断できません。

外来医師過多区域の事前届出の対象となる場合は、原則として開設日の6か月前までに届出が必要です。物件契約や開院希望日の確定前に、開設予定地の都道府県へ、正式な区域指定、対象施設、適用開始日、提出先を確認してください。

区域の候補や会議資料だけでは、実際に適用される届出を確定できません。例えば神戸市の地域医療構想の資料にも関連情報がありますが、候補・意見書と正式な指定は分けて確認します。自由診療のみの計画も対象になり得るため、保険指定を申請しないことだけで除外とは判断しないでください。

ここまでの条件を、候補所在地・個人か法人か・病床の有無・診療科目・保険診療の予定・希望開院日として1枚にまとめてください。未定の欄を残しておけば、次の物件相談で何を決める必要があるかが伝わります。

診療所開設の準備は、物件・手続き・費用を並行して進める

条件が決まったら、物件の利用可否、開設手続き、保険診療の開始日を並行して確認します。内装工事の着手や患者向けの告知より前に、次の順番で必要な資料と日付を固めましょう。

物件を契約する前に、診療内容と図面を合わせて確認する

診療所の図面を確認する準備場面のイメージ
図面確認のイメージです。実在の事務所・物件や、適合する申請図面を示すものではありません。

賃貸借契約や内装仕様を確定する前に、予定する診療がその物件で行えるかを確認します。設計者には「診療所にしたい」だけでなく、診療科目、検査・処置、エックス線装置、調剤、患者と職員の動きまで伝えると、相談すべき点を整理しやすくなります。

確認先用意するもの確認すること
所在地の保健所等の医務担当開設主体、診療内容、候補所在地、ラフ平面図医療法の手続区分、室の区画や設備、追加手続き
設計者・建築の担当窓口既存建物の用途・図面、改修範囲建築上の利用可否、用途変更等の手続き、バリアフリー等の適用
消防の担当窓口建物全体と入居区画の資料用途・規模・階数等に応じた設備と届出
貸主・管理会社予定する診療内容、設備と工事計画診療所利用、給排水・電気・換気工事、看板等の契約条件

構造設備の基準は、診療内容・病床の有無・施設条件に合わせて確認します。自治体の審査基準や指導事項も、設計者と共有してください。

参考

例えば神戸市は、診察室を原則独立した部屋として廊下や調剤所と区画すること等を示し、届出による開設でも審査基準の順守を求めています。

これは神戸市の確認例であり、別の自治体の審査を代替しません。

一方、有床診療所の病室や廊下の数値を、すべての無床診療所にそのまま当てはめるのは適切ではありません。図面では室名・用途・設備を示し、どの部分にどの基準が関係するかを確認します。

エックス線装置を設けるなら、部屋の位置や隣室・上下階、遮蔽計画を機器・設計の担当者と早めに共有してください。一般の平面図だけで済むとは限りません。

行政書士 小野馨
小野馨の一言
相談資料は、決まっていることと未確定の点を分けて示しましょう。用途・部屋の配置・必要な設備を細かな仕上げの前に確認し、相談した図面の日付と回答を一緒に残しておくと、後の変更を確認しやすくなります。行政相談が完成図面や工事完了を保証するものではありません。
参考:神戸市の施設基準・相談案内(自治体運用の例)

開設手続きと保険指定を、2本の日程で管理する

開設と保険指定は別の確認線

医療法の開設手続き

届出対象の個人医師等:開設 → 10日以内に届出

法人等:事前の開設許可 → 開設 → 10日以内に届出

保険診療の準備

指定要件・必要書類・当月の締切を確認 → 指定申請

指定日とシステムの準備を確認 → 保険診療開始

開設主体・病床・地域制度による追加手続きがあります。2本を並行して計画するための説明図で、特定日までの開院を保証するものではありません。

医療法上の手続きは、個人と法人等で順序が違う

届出対象の個人医師は開設後10日以内に提出し、法人等は開設許可を事前に取得してから開設します。法人等も開設後10日以内の届出が必要です。許可が必要な計画を、先に開設してから届け出る順序へ置き換えることはできません。

提出書類を作り始める前に、診療所の所在地を管轄する保健所等の医務担当へ、開設主体・病床の有無・予定日を伝え、提出する様式と相談の進め方を確認します。

許可・届出の選び方、公式様式と図面の準備については「診療所開設許可・届出」の記事をご覧ください。

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保険診療の開始日は、指定申請の締切から逆算する

保険指定の申請締切・指定予定日・添付資料は、所在地を担当する地方厚生(支)局の事務所等で確認します。

例えば近畿厚生局は原則として申請翌月1日を指定日とし、毎月の締切は各府県事務所等へ確認が必要です。この日程を全国一律の締切や指定日の保証として使わず、希望月を伝えて確認してください。

2026年4月1日以降、新たに保険医療機関の管理者となる場合は、医師免許だけでなく、保険医の資格と診療経験に関する要件も確認します。医科の主な分岐は、2026年4月1日時点で臨床研修を修了しているかどうかです。

保険医療機関の管理者要件の分岐

  • その時点で研修修了済み:研修期間を含め、保険医療機関である病院・診療所における、保険医としての3年以上の診療等の経験を確認します。
  • その時点で研修未修了:研修修了後に、保険医療機関である病院で、保険医として3年以上診療に従事した経験が基本要件となります。

ほかの充足要件、勤務時間等の算入条件、経過措置があります。全員に同じ「研修後3年」を当てはめず、研修修了日と勤務歴を示して、所在地を担当する地方厚生(支)局の事務所等へ確認してください。厚生労働省の管理者要件・責務の案内

医療法上の管理者の確認とは分けて、管轄する地方厚生(支)局の指定申請案内を見てください。以下の近畿厚生局の資料は確認例です。 近畿厚生局の管理者に係る添付書類

工程表で分ける4つの日付

  • 医療法上の開設予定日:工事・設備・人員の準備が整う日と照合する。
  • 許可申請・開設届等の提出予定日:個人・法人の順序と、地域の事前手続きを反映する。
  • 保険指定の申請締切:必要な添付資料をそろえられる日を確認する。
  • 保険診療開始希望日:指定日とオンライン資格確認等の準備を照合する。

各日付には、担当者と未完成の資料も添えます。締切に間に合わない資料があれば、告知や契約の日付を確定する前に窓口へ相談してください。

保険診療の開始に向け、指定申請の資料・管理者要件・開始日を詳しく確認したい方はこちら。

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添付資料をいつ用意できるか、補正が生じた場合に間に合うかまで確認してから、患者向けの開院告知日や採用日程を固めると、日付の食い違いを減らせます。

オンライン資格確認の導入も、指定手続きを提出しただけで自動的に完成するものではありません。医療機関等コード・受付番号の取扱いと、機器・接続準備を別に確認します。

書類や図面のどこから着手するか迷う方は、現在の資料と未確定の点をお知らせください。

相談資料と正式な申請書類を分けて準備する

最初の相談に、完成した申請書一式は必要とは限りません。まずは手元の資料を次の5つに分け、不足しているものを確認します。

  • 開設の構想:個人/法人、診療科目、病床、診療日・時間、希望時期
  • 医師・職員:管理者と勤務体制、資格・研修関係資料、採用状況
  • 物件・図面:所在地、建物と入居階、現況図・計画図、工事予定
  • 設備:検査・処置機器、エックス線装置、調剤等の予定
  • 日程・予算:契約、工事、機器搬入、申請、採用、診療開始の予定

これは相談と工程管理のための確認表です。正式な添付書類の一覧ではありません。法人の定款や開設者情報、医師関係資料など、正式に何を添付するかは該当する公式様式で確認します。

資料が不足している場合は、全部そろうまで相談を先送りするよりも、どれが未確定かを明らかにして確認すると、次に用意するものを絞れます。

診療所開設の費用と、日程の余裕を確保する

費用は「公的手数料」と「開業費・委託費」を分ける

公的手数料は、所在地の最新の申請案内で確認します。例えば神戸市の法人等向け開設許可申請では18,000円が示されていますが、全国共通の額ではなく、個人医師の開設届にも一律にかかる費用ではありません。

有床や設備などの追加手続きは、対象に応じて別途確認します。

開業予算は、物件・工事・医療機器・情報システム・採用準備・専門家への委託費・運転資金を分けて見積もります。行政書士報酬と設計費、保険指定に関する業務、税務・労務の費用を一つの「代行費」にまとめず、見積書で含まれる作業を確認しましょう。

開院が遅れた場合に備え、家賃・給与・リース料など、診療を始める前から発生する月々の支出を契約条件から書き出しましょう。何か月分を確保するか、支払開始日を調整できるかまで、資金計画と契約の担当者に確認します。

標準処理期間と、開院までの全期間は違う

許可の標準処理期間は、所在地の窓口へ、起算日・休日の扱い・補正期間の扱いと併せて確認します。例えば神戸市は25営業日と公表し、申請到達日の翌日から処分通知発送日まで、土日・市の休日を含めない計算です。

他地域の開院予定にこの日数をそのまま使わないでください。

この数字は、物件探し、事前相談、工事、保険指定まで含めた期間ではありません。希望する開院日から25日だけ戻って申請日を置くのではなく、図面修正や必要資料の取得に要する時間も工程表へ入れてください。

診療所の開院前後に確認することと、専門家への相談

書類の準備・提出と並行して、患者を受け入れる体制と、開院後に続く報告まで確認します。自分で進める作業と外部へ依頼する作業も、この段階で担当者を明確にしておきましょう。

開院前に残る準備を、行政手続きと切り離さない

開設届や許可の確認が進んだら、実際に患者を迎えられる状態かも点検します。次の項目を、ご自身の診療内容に応じて担当者と確認してください。

開院前の確認項目

  • 診療体制:管理者の勤務、職員の配置、医療安全・感染対策の運用。
  • 設備と情報:医療機器、受付・会計、電子カルテ等の運用、オンライン資格確認の準備。
  • 追加の指定等:生活保護・労災等を扱う場合や、使用する薬剤・設備に関係する手続き。
  • 税務・労務:事業開始、雇用、給与、社会保険等について、税理士・社会保険労務士等と必要な手続きを確認。
  • 案内と広告:名称、診療科名、看板・ウェブサイトの表示内容。

すべての診療所に同じ指定や設備が必要という意味ではありません。提供する診療を先に決め、その診療に必要な準備を抽出します。

開院後の報告も、担当者と時期を決めておきます

開設届とは別に、診療所の名称、診療科、診療日・時間、対応できる医療等を都道府県へ報告する「医療機能情報報告」があります。原則としてG-MISを利用するため、開院準備の段階でアカウントと施設情報の登録方法を確認しておきましょう。

医療機能情報の報告時期

  • 新たに開設したときは、開設後速やかに新規報告を行います。
  • 毎年、都道府県が定める期間に定期報告を行います。
  • 名称、開設者、管理者、所在地、診療日・時間等の基本情報が変わったときは、速やかに変更を報告します。

入力・保存だけで終えず、提出状態と公開情報も確認してください。所在地の報告窓口と操作手順は、厚生労働省の医療機能情報提供制度の案内から確認できます。

医科の診療所は、原則として「かかりつけ医機能報告」も毎年1~3月の報告対象です。かかりつけ医機能がないことだけを理由に、報告不要とは判断できません。歯科医業のみを行う診療所等の除外や、所在地の提出案内は、厚生労働省のかかりつけ医機能報告制度のガイドラインと都道府県の案内で確認してください。

医療機能情報報告とかかりつけ医機能報告は別制度です。同じG-MISを使う場合も、それぞれの提出状況を確認します。

医療法人の決算届・経営情報報告で使うMCDBとは、報告する内容も時期も異なります。法人化している場合は、医療法人の決算届・経営情報報告と施設の報告を分けて予定に入れてください。

自分で進める範囲と、専門家に依頼する範囲の分け方

公式様式を使い、開設者自身で準備・申請する選択もあります。窓口へ確認する時間を確保できるか、図面と書類の整合を管理できるか、工事・開設・保険指定の日程を調整できるかで、切り出す作業を考えましょう。

医療法上の開設許可・届出と、健康保険法上の保険医療機関指定は別手続きです。保険指定の書類作成・提出等を有償で依頼する場合は、社会保険労務士等の適法な担当と業務範囲を確認します。設計・工事、税務、労務も、それぞれの担当者に依頼する範囲を確認してください。

いまの準備状況から始めること

  • 物件を探している方:候補地域、診療科目、必要な設備、開院希望時期を書き出す。
  • 候補物件がある方:住所・入居階・平面図を用意し、契約前に保健所、設計・建築、消防の確認先を確かめる。
  • 工事や契約が進んでいる方:最新図面、契約済みの内容、未完成の資料、変更できない日付を一覧にする。

このメモがあれば、相談先へ「何を確認したいか」「いつまでに決める必要があるか」を伝えられます。医師免許証などの本人確認資料は、必要な提出先と送付方法を確認してから用意してください。

サクセスファン行政書士事務所へのご相談では、医療法上の開設手続きについて検討している内容と、依頼したい範囲をお伝えください。個別の対応可否・業務範囲・費用を確認してから進めます。

次に、許可・届出の具体的な書類と図面を準備する方はこちら。

診療所の開設許可・届出 書類と図面
診療所開設許可・届出|必要書類と図面の準備手順

診療所の開設許可と開設届の違い、必要書類・図面の準備を解説。個人・法人、有床・無床の区分から、最新様式の探し方、事前相談、提出までの順番を整理します。自治体の様式番号や手数料を全国共通とせず、所在地の確認先へつなぎます。

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  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士開業・1973年1月生・神戸市出身。兵庫工業高等学校卒業、慶応義塾大学通信教育課中退。富士通株式会社でシステムエンジニアとして2年勤務。自分のやりたい仕事でないと退職。その後、30以上の職種を経験した後、起業家をサポートするため、平成17年2月に行政書士開業。1000社50業種以上に会社設立・許認可など5000以上の行政手続きを代行。