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探偵業の契約書類|重要事項説明・誓約書・書面交付を解説

探偵業の開始届出を済ませても、依頼を受けるときの契約書類が整っていなければ、安心して営業を始められません。「契約書に署名してもらえばよい」「見積書をメールで送れば足りる」と考えると、契約前の説明や書面交付が抜けるおそれがあります。

探偵業の契約では、依頼者から受け取る誓約書、契約前に交付して説明する書面、契約後に遅滞なく交付する書面を分けて準備します。それぞれ、誰が誰に渡すのか、いつ渡すのか、何を記載するのかが異なります。

この記事は、開業準備中・営業中の探偵業者に向け、探偵業法第7条・第8条の書面と実務上の確認点を解説します。確認日:2026年11月7日。個別の契約や紛争への当てはめは、所轄警察署や対応できる専門家に確認してください。

最初に整理する、契約前後の3つの書面

警察庁の探偵業の案内は、依頼者から書面を受け取る義務、契約前の重要事項の説明、契約後の書面交付を区別しています。

  • 契約前:依頼者から、調査結果を犯罪・違法な差別的取扱いなどに利用しない旨の書面を受け取る(法第7条)。
  • 契約前:探偵業者から依頼者へ、重要事項を書いた書面を交付し、その内容を説明する(法第8条第1項)。
  • 契約後:探偵業者から依頼者へ、決まった契約内容を明らかにする書面を遅滞なく交付する(法第8条第2項)。

依頼者から受け取る書面は、一般に「誓約書」と呼ばれます。開業時に警察へ提出する欠格事由についての誓約書とは別物です。書式名が似ていても、提出先と確認する内容を取り違えないようにしましょう。

探偵業の契約書類。依頼者の誓約書を受け取り、契約前書面を交付して説明し、契約後書面を遅滞なく交付する。
契約前に行う受取り・説明と、契約後の交付を分けて準備します。

依頼者の誓約書は、違法な依頼を受けてよい証明ではありません

契約の相談では、依頼の目的、対象者との関係、結果をどのように使う予定かを確認します。誓約書を受け取ったという事実だけで、どのような依頼でも調査してよいことにはなりません。

調査結果が違法な行為に使われると知ったときは、探偵業務を行ってはいけません(法第9条第1項)。違法な利用の可能性を認識し、それでも構わないと容認した場合も、この「知ったとき」に含まれます。依頼者が署名した後に事情が分かった場合も同じです。判断に迷うときは、調査を先行させず、所轄へ具体的な事情を確認してください。

契約前書面で説明する9項目

契約前書面は、依頼者が契約するかを判断するためのものです。探偵業法第8条第1項では、次の事項が定められています。単に書面を渡すだけでなく、契約を結ぶ前に内容を説明する必要があります。

  • 探偵業者の商号・名称または氏名、住所。法人の場合は代表者の氏名も記載する。
  • 探偵業の届出書を提出した公安委員会の名称。
  • 個人情報保護法その他の法令を守って業務を行うこと。
  • 守秘義務と、資料の不正・不当な利用を防ぐ措置など、法第10条に関する事項。
  • 提供できる探偵業務の内容。
  • 他の探偵業者への業務委託に関する事項。
  • 報酬など依頼者が支払う金銭の概算額と支払時期。
  • 契約の解除に関する事項。
  • 作成・取得した調査資料の処分に関する事項。

「当社規定による」「必要な調査を行う」だけでは、依頼者が判断する材料になりません。調査の範囲、費用、解除、資料の処分について、今回の依頼で何が起きるのか分かる説明にします。

契約後書面で確定させる8項目

契約後書面では、一般的なサービス紹介ではなく、今回取り決めた内容を具体化します。法第8条第2項の項目は次のとおりです。

  • 探偵業者の商号・名称または氏名、住所、法人の場合は代表者の氏名。
  • 契約担当者の氏名と契約年月日。
  • 調査の内容・期間・方法。
  • 調査結果の報告方法と期限。
  • 業務委託の定めがある場合、その内容。
  • 依頼者が支払う金銭の額と、支払時期・方法。
  • 契約解除の定めがある場合、その内容。
  • 調査資料の処分の定めがある場合、その内容。

例えば調査期間は「必要な期間」とだけ書かず、開始日・終了日、何日間か、1日あたりの時間、夜間や休日の調査を含むかを整理します。報告も「報告書を提出」で終えず、写真や動画を渡すのか、閲覧だけなのか、いつ報告するのかを合わせます。

料金は、追加費用を含めて分かる形にする

警察庁の解釈運用基準(第8・PDF)は、概算額について一般的な料金体系に加え、その依頼に掛かり得る最大限の総額と、算出の基礎となる個別の料金設定等を明らかにするよう示しています。

時間料金の表示だけでは、人数を増やしたときの費用、交通費、宿泊費、夜間割増などが見えにくくなります。該当する費用を洗い出し、どこまでが基本料金に含まれ、どの条件で追加になるかを記載します。

成功報酬を採用する場合は、何をもって成功とするか、成功しなかった場合も発生する費用があるかを曖昧にしないことが実務上重要です。「結果が出なければ無料」と宣伝しながら、説明のない実費を請求するような食い違いを避けます。

契約後も金額が変わり得ると定める場合は、最大限の総額と計算の根拠を明らかにします。追加調査について、実施前に誰が、どの方法で依頼者の了解を得るかも決めておくと、現場担当者だけで範囲を広げることを防げます。

解除・資料処分・外部委託は、ひな形の空欄を残さない

解除については、解除できる事由だけでなく、違約金が生じる条件や計算方法も確認します。「着手後は一切返金しない」と書けば常に有効になるわけではありません。消費者との契約では、契約の形態や条項の内容によって別の法律も問題になります。個別の返金・解約トラブルは、消費生活センターや弁護士への相談も検討してください。

資料処分については、処分するか、いつ、どの方法で行うかを整理します。対象は完成した報告書だけでなく、調査メモ、写真、動画、音声データなどにも及びます。「納品したから残りは自由に利用できる」と扱わず、契約上の説明と実際の管理を一致させます。

外部委託を予定する場合は、その有無、委託先の基礎情報、任せる業務、依頼者の氏名等を伝えるかなどを契約前に明らかにします。探偵業務を探偵業者以外へ委託することはできません(法第9条第2項)。他の探偵業者同士で契約する場合にも、書面の授受・交付を省略しないよう注意が必要です。

メールや電子契約だけで済ませてよい?

警視庁の探偵業ガイド(契約締結前後の義務・PDF)は、これらの書面は電磁的記録ではなく書面である必要があり、交付にネットワーク経由のデータ送信は含まれないと説明しています。PDFを送った、電子署名をもらったというだけで、法定の書面交付を終えたと判断しないでください。

オンラインで相談を受ける場合も、契約前の書面が依頼者に届く時点、説明する時点、契約する時点を分けて組み立てます。契約後の書面も、報告書の納品時まで先送りにせず、遅滞なく交付する流れを用意してください。

書面は必ず1枚にまとめる必要はありません。契約書、調査計画書、説明資料など複数の書面でも構いませんが、どれを合わせれば必要事項が揃うか分かるように管理します。「後で送る資料に書いてある」として、契約前の説明に必要な内容を後回しにしないことが大切です。

開業前に、1件の依頼を想定して運用を点検

  • 相談受付:依頼目的と、受けてよい業務かを確認する。
  • 契約前:依頼者の誓約書を受け取り、重要事項を書面で渡して説明する。
  • 契約締結:調査範囲、期間、報告、料金、解除、資料処分を確定する。
  • 契約後:契約内容の書面を遅滞なく交付する。
  • 実施中:追加調査・料金変更・委託が説明内容と食い違わないか管理する。

実務上は、書面の版、交付日、説明した担当者、依頼者へ渡した資料の組合せが追えるよう、控えや記録を整理しておくと確認しやすくなります。これは一律の法定保存期間を示すものではありません。記録の保管方法は、個人情報や調査資料の安全管理と合わせて決めてください。

開始届出や営業所の準備から確認したい方は、探偵業届出の総合ガイド、開始届出の必要書類・費用・手順をご覧ください。契約書類を整えるだけで、開始届出が不要になるわけではありません。

探偵業の開業準備・届出について相談したい方へ

神戸・兵庫で探偵業の開業準備や届出を進める方は、サクセスファン行政書士事務所へご相談ください。まずは営業所の所在地、個人・法人の別、開業予定時期、準備が止まっている点をお伝えください。

契約書類について相談する際は、すでにある書面の種類と、説明・交付をどの順番で行う予定かを整理すると話が進めやすくなります。最初のお問い合わせで、調査対象者の氏名や詳細な私生活、実際の調査資料を送る必要はありません。必要資料と送付方法を確認してから進めましょう。

  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士開業・1973年1月生・神戸市出身。兵庫工業高等学校卒業、慶応義塾大学通信教育課中退。富士通株式会社でシステムエンジニアとして2年勤務。自分のやりたい仕事でないと退職。その後、30以上の職種を経験した後、起業家をサポートするため、平成17年2月に行政書士開業。1000社50業種以上に会社設立・許認可など5000以上の行政手続きを代行。