便利屋のサービスに人探しを加えたい。興信所として企業の調査を始めたい。インターネットで情報を調べて報告する仕事にも、探偵業の届出が必要なのか。開業前に迷いやすいのは、仕事の名前よりも、どこから探偵業に当たるかという境目です。
探偵業に当たるかは、屋号ではなく、依頼・調査対象・調査方法・報告・営業の実態を合わせて判断します。他人から依頼を受け、特定人の所在や行動を実地で調べ、その結果を依頼者へ報告する仕事を営業として行うなら、原則として届出が必要です。
この記事では、探偵業を始める方や、既存の仕事に調査サービスを追加する方に向けて、届出の対象になる仕事と対象外になる条件を整理します。最後に、予定するサービスを警察署へ具体的に説明するための整理例も紹介します。
確認日:2026年11月6日。全国共通の探偵業法を中心に解説し、大阪府の別途届出にも触れます。
探偵業の届出が必要かは、5つの点で整理できます
探偵業法第2条は、探偵業務の内容と、その業務を行う「営業」を分けて定めています。予定するサービスを、次の順に確認してください。
| 確認すること | 予定するサービスで見る点 |
|---|---|
| 1.他人の依頼を受けるか | 誰との契約に基づき、誰のために調べるのか。依頼者には個人だけでなく法人等も含まれます。 |
| 2.特定人の所在・行動を調べるか | 誰を対象に、どこにいるか・何をしているか等を調べるのか。氏名が分からなくても、対象を具体的に絞り込める場合があります。 |
| 3.実地の調査を行うか | 面接での聞込み、尾行、張込み、その他これらに類する現場での調査を行うか。 |
| 4.結果を依頼者へ報告するか | 依頼に応じた実地調査と、その依頼者への報告が一体となっているか。 |
| 5.営業として行うか | 営利の目的で、同種の行為を反復継続して行うものか。 |
これらに当たる営業が、原則として探偵業の届出対象です。ただし、専ら報道機関の依頼を受け、その報道に用いる目的で行う営業には、法律上の除外があります。報道との関係は後ほど分けて説明します。
定義の根拠は探偵業法第2条です。各用語の意味は、警察庁「探偵業法等の解釈運用基準」第2(PDF)で示されています。
「探偵」「興信所」「便利屋」という名前だけでは決まりません
便利屋、情報調査会社、コンサルタントという名前でも、実際に行う仕事が探偵業に当たれば届出が必要です。反対に、調査という言葉を使う仕事がすべて探偵業になるわけでもありません。
例えば、依頼者が指定した人の行動を尾行して確認し、その結果を依頼者に伝えるサービスは、屋号を変えても調査の実態は変わりません。神奈川県警も、探偵業法の概要で、便利屋等と称しても探偵業務と同様の業務を行う業者には届出が必要と案内しています。
副業・一人開業・最初の1件でも、事業としての予定を見ます
副業であること、従業員を雇わないこと、小規模であることは、それだけで届出を不要にする理由にはなりません。見るべきなのは、実際の業務内容と、営業として行うかどうかです。
「まだ1件しか受けていないから大丈夫」と、件数だけで判断しないでください。今後も同じサービスを提供する予定があるなら、広告、料金設定、受任方法を含めて、営業開始前に確認します。無償の手伝いと有償サービスが混ざる場合も、名称や1回の料金だけで結論を出さず、活動全体を説明できるようにしておきましょう。
仕事の種類ごとに、届出の対象になる境界を見ます
以下は、違いを理解するための仮の例です。実際の業務では、契約内容や調査の方法まで確認して判断します。
人探し・所在確認は、情報収集の方法まで確認する
依頼者が指定した人の所在を、現場での聞込みなどによって調べて報告する営業は、探偵業に当たる典型的な形です。「会いたい人を探す」「連絡先を確かめる」といった穏やかなサービス名でも、所在を調べる仕事である点は変わりません。
調査対象者の住所や氏名がすべて判明していることまでは必要ありません。特定の人物として具体的に絞り込めるなら、「名前を知らない相手だから特定人ではない」とは判断できません。
また、本人へ直接聞かず、周囲の人へ聞込みをする場合でも、実地調査の対象が本人でないことだけで対象外にはなりません。何の情報を集めるために、誰へ、どのように聞くかを整理します。
浮気・素行調査は、「写真撮影」などの名目に置き換えない
依頼を受けて特定人を尾行し、行動を確認して報告する営業は、探偵業の定義に沿って確認すべき仕事です。契約書に「撮影」「現地確認」「相談の補助」と書けば届出が不要になる、というものではありません。
所在や行動には、現在のことだけでなく、過去や未来の所在・行動に関する情報も含まれます。勤務先、所属団体、素行などの情報も含まれるため、調査を行った日の行動だけを対象に考えないようにしてください。
企業調査・信用調査は、調べる内容を分ける
警察庁の解釈運用基準では、「特定人」には法人等も含まれます。そのため、企業を対象にするという理由だけで、探偵業法の対象外になるわけではありません。
一方、単に個人や法人の資産状況、経営戦略について情報を集めることを目的とする業務は、特定人の所在・行動についての情報収集を目的としないものとして整理されています。ただし、経営戦略に基づいて実際にとった行動は、この整理から除かれています。
例えば、公開された財務資料を整理するサービスと、取引先の担当者がどこへ出入りしているかを現地で調べるサービスは、同じ「企業調査」でも確認すべき内容が異なります。調査項目を一つずつ分けると、境界を説明しやすくなります。
インターネット・電話だけの情報調査はどう考える?
単に電話で問い合わせたり、インターネットで情報を検索したりするだけで、実地調査を行わない業務は、警察庁の解釈運用基準では探偵業務に当たらないとされています。
ただし、「ネット調査」という名称でも、現場での聞込みや尾行などを組み合わせるなら、ネット検索だけの場合と同じ扱いにはできません。標準プランは検索のみでも、追加プランで実地調査を受ける予定がある場合は、その追加部分も含めて確認します。
| 予定している内容 | 判断のポイント |
|---|---|
| 公開情報を検索し、内容を整理して依頼者へ報告する | 実地調査を行わない「検索のみ」の業務かを確認します。 |
| 検索で見つからなければ、現地で関係者へ聞込みをして報告する | 現地での聞込みを含むため、検索のみの業務とは分けて判断します。 |
| 現地調査は外注し、自社は窓口と報告を担当する | 誰が契約し、何を受任し、誰へ委託するかを整理します。外注という理由だけで対象外と判断しません。 |
なお、探偵業者は探偵業務を探偵業者以外へ委託できません。調査員を個人の外注先として使う場合などは、その業務が雇用に基づく従事なのか、独立した事業者への委託なのかも含め、契約と実態を確認してください。根拠は探偵業法第9条第2項です。
また、探偵業の届出対象でないことと、情報の取得・利用が適法であることは別の問題です。不正なアクセスや他人の権利を侵害する情報の利用まで認められるわけではありません。
市場調査・研究・報道は、対象外になる条件を外さない
世論調査・アンケートと、特定人の調査の違い
警察庁の解釈運用基準は、不特定多数の人から一定の類型で対象者を抽出する世論調査やアンケート調査を、特定人に関する調査ではないものとして挙げています。
ただし、「アンケート」と名付ければ対象外になるわけではありません。特定の人物について所在や行動を知るための聞込みなのか、不特定多数から意見等を集める調査なのか、目的と対象の選び方を区別します。
自分の研究・取材と、他人から受ける調査を区別する
研究者が自らの学術調査の一環として調べる活動や、作家・ジャーナリスト等が自らの報道・著作に使うために行う取材は、自己の本来の業務のための活動として整理されています。
これとは別に、探偵業法第2条第2項には、専ら報道機関の依頼を受け、報道に用いる目的で行われる営業の除外があります。警察庁の解釈運用基準では、報道機関以外からの依頼も受ける場合は、この除外には当たらないと説明しています。
「依頼者がメディアだから」「報告書を作る仕事だから」といった一つの事情で判断せず、自らの取材か、他人からの依頼か、どの依頼者から何の目的で受ける営業かを分けてください。
届出が必要と分かったら、営業開始前に準備します
探偵業を始める場合は、営業開始日の前日までに、営業所ごとに、所在地を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会へ届け出ます。期限ぎりぎりの提出を前提にせず、業務の該当性、営業所、必要書類を先に確認してください。
営業できない事由に該当しないことの確認に加え、標識、契約時の書面、秘密保持、従業者の教育など、届出後の運営準備も必要です。開業全体の流れと書類の整理は、探偵業届出の総合ガイドで確認できます。
届出をすれば、違法な手段で調べてよくなるわけではありません。探偵業法第6条は他法令の禁止・制限を守ることや、生活の平穏等を侵害しないことを求め、第9条は調査結果が犯罪や違法な差別的取扱い等に用いられると知った場合の業務を禁止しています。届出要否と、依頼を受けてよいかは、別々に確認する必要があります。
大阪府では、公安委員会への届出とは別の制度にも注意
大阪府で興信所・探偵社業を始める場合は、探偵業法に基づく公安委員会への届出だけでなく、府の条例に基づく知事への届出も確認します。大阪府の案内では、営業開始までに知事への届出が必要とされています。
全国共通の探偵業法だけを確認して、地域の手続も済んだと考えないようにしてください。府内で予定する業務は、大阪府「興信所・探偵社業の新規届出」で対象と手続を確かめます。
迷う場合は、サービス内容をこの形で整理してください
警察署へ「探偵業に当たりますか」と尋ねるときは、サービス名だけでなく、仕事の流れを伝えると確認すべき点が明確になります。次の内容を一枚にまとめてみてください。これは法定の提出書類ではなく、相談内容を整理するためのメモです。
- 依頼者は誰か。個人・法人の別と、どのような目的の依頼を受けるか。
- 誰について、どのような情報を集めるか。所在・行動・資産・意見など、調査項目を分ける。
- 情報をどう集めるか。検索・電話・面接・現地での確認など、追加対応も含めて書く。
- 何を、誰へ報告するか。依頼と調査・報告の関係を示す。
- 継続して提供するサービスか。料金、広告、受任の方法を整理する。
- 自社で行う部分と、外注する部分はどこか。営業所の予定地と開始予定日も書く。
整理例:「法人の依頼を受け、特定の取引先について公開情報を検索して報告する予定です。現地調査は行わないプランと、必要に応じて現地で聞込みを行う追加プランを検討しています。それぞれの届出の扱いと、開始前に必要な準備を確認したいです。」
このように、すでに決めた内容と、まだ検討中の内容を分けて伝えてください。回答を受けたら、確認日、担当窓口、説明した業務内容、回答の前提を残しておくと、その後サービスを変更するときにも比較できます。
ご自身で進める場合と、行政書士へ相談する場合
業務の内容が整理できた方は、営業所を管轄する警察署の探偵業担当へ確認し、必要であれば届出書類の準備へ進めます。境界がはっきりしない場合は、判断に必要な情報を補い、実地調査の受任前に確認しましょう。
一方で、複数の調査サービスをまとめて始める、外注を組み合わせる、開業日までに届出準備を進めたい場合は、業務内容の整理と届出準備を一緒に相談する選択肢があります。兵庫・神戸での依頼を検討する方は、サクセスファン行政書士事務所の探偵業届出サポートをご覧ください。
お問い合わせの際は、営業所の予定地域、個人・法人の別、開始予定日と、上記の業務メモをお知らせください。最初の開業相談に、調査対象者の氏名や詳しい私生活の情報を記載する必要はありません。
