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運転代行業の保険と損害賠償措置|顧客車・随伴車の補償の違い

運転代行業の保険は、お客様の車を運転する際の補償と、事業者の随伴車の補償を分けて準備します。顧客車については、対人・対物に加え、預かった車そのものを壊した場合の補償も必要です。随伴車に自動車保険が付いているだけで、営業に必要な備えがすべて整うわけではありません。

この記事では、開業や増車を予定する事業者に向けて、補償の基準額、見積もり・契約時の確認点、認定申請に使う資料を整理します。特定の保険・共済を選ぶ前に、予定する業務をどの契約がカバーするのか確認できるようにしましょう。

運転代行業の保険は「どの車の、何の損害か」で分ける

お客様が乗る、お客様自身の車を「代行運転自動車」、事業者側が伴走に使う車を「随伴用自動車」といいます。まずこの2台を分け、次に人への損害、他人の物への損害、運転を預かった車の損害を分けます。

たとえば、顧客車の運転中に歩行者を負傷させた場合は対人賠償、相手の車や塀を壊した場合は対物賠償の確認が必要です。その事故で運転していた顧客車自体も壊れた場合は、顧客車の車両損害についても確認します。これらは確認すべき補償区分の例であり、個別事故の支払いを保証するものではありません。

随伴車が事故を起こした場合は、その随伴車の契約も確認します。保険の名前だけで判断せず、事故を起こした車と、損害を受けた人・物を対応させることが出発点です。

顧客車と随伴車に必要な補償限度額

顧客車は対人・対物・車両、随伴車は対人・対物を分けて確認する比較図。対人は1人8,000万円以上、対物と顧客車の車両損害は1事故200万円以上。
顧客車そのものの補償と随伴車の補償を分けて確認します。基準の根拠と契約時の注意点は、以下で説明します。

顧客車には、対人・対物・車両の3つを用意する

  • 対人損害賠償:被害者1人につき8,000万円以上。
  • 対物損害賠償:1事故につき200万円以上。
  • 車両損害賠償:顧客車そのものについて、1事故につき200万円以上。

これは、自動車運転代行業法第12条と関係省令・告示に基づく損害賠償措置です。顧客車の車両保険・車両共済は、2008年10月から加入が義務づけられています。「対物が200万円あるから、預かった車の修理も当然に含まれる」とは考えず、顧客車そのものの補償を契約書類で確かめてください。

根拠:奈良県警察の運転代行業ハンドブック(2ページ)、国土交通省の車両保険等義務化の説明。

随伴車にも、すべての車について業務用の補償を確認する

標準自動車運転代行業約款第7条の2では、随伴車について、対人8,000万円以上・対物200万円以上を限度額とする保険・共済契約を締結することを定めています。単位は対人が1人、対物が1事故です。顧客車の損害賠償措置と、随伴車について標準約款で定める措置は、根拠を分けて押さえましょう。

この措置は、使用するすべての随伴車について確認します。自家用の契約をそのまま使えると判断せず、運転代行の随伴車として業務に使うことを保険会社・共済へ伝え、使用目的や運転者の年齢条件が合っているか確かめてください。

根拠:標準自動車運転代行業約款(第7条の2)、大阪府の補償限度額の比較表、兵庫県の随伴用自動車の損害賠償措置の案内。

基準額は「事故の賠償がそこで終わる額」ではない

上記は必要な補償限度額の基準です。実際に負う損害賠償責任や、事故の修理費がその額までに収まることを意味しません。高額な顧客車を扱う予定があるなら、基準への適合とは別に、車両の補償限度額や自己負担額で事業を継続できるかを検討します。

また、顧客車の「車両200万円以上」は随伴車自身の修理代を示す数字ではありません。随伴車そのものの損害や従業者自身のけがなど、上の区分だけで確認しきれない備えは、別途契約内容を確認してください。

見積もり・契約前に、金額以外も照合する

保険料・掛金を比較するときは、先に同じ業務条件を伝えます。安い見積もりでも、対象車両や運転者の条件が違えば単純比較はできません。次の内容を一枚のメモにまとめて、引受先へ確認すると整理しやすくなります。

  • 事業者と業務:個人・法人の別、認定を申請する名称、運転代行業として行う業務内容。
  • 車両と台数:随伴車すべての登録番号・台数と、顧客車をどの範囲で補償する契約なのか。
  • 運転者:実際に運転する人の年齢、免許、契約上の運転者限定に合うか。
  • 補償の範囲:対人・対物・顧客車の限度額、自己負担となる免責金額、補償されない場合。
  • 契約の期間:補償開始日・時刻、満了日・時刻、更新・増車・車両入替えの手続き。
  • 証明書類:認定申請に使用する、契約の締結と補償内容を証明する書類を発行できるか。

契約書類を見ても分からない項目は、「運転代行業でこの使い方をした場合に対象になりますか」と具体的に尋ね、回答と書類を残します。顧客車と随伴車で契約が別になる場合は、両方を並べて照合してください。

自賠責や、お客様自身の保険だけに任せない

自賠責保険・共済は、交通事故の被害者の対人損害を対象とする制度で、物損は対象外です。自賠責へ加入しているだけでは、ここまでに挙げた運転代行業の損害賠償措置はそろいません。国土交通省の自賠責保険・共済の説明でも、対物や車両等の損害は対象外とされています。

お客様自身が任意保険へ加入している場合も、運転代行業者が用意すべき措置の代わりになると自己判断しないでください。事故時にどの契約が適用されるかは約款や事故状況によるため、事業者側の契約を整えたうえで、引受先の説明を受けます。

認定申請には、加入の見積書ではなく契約の証明を準備する

申請では、基準に適合する損害賠償措置を講じていることを示します。保険料を見積もった段階と、契約が成立して必要な補償を証明できる段階を区別しましょう。書類の名称・添付方法は、申請先の最新案内に合わせます。

たとえば京都府警察の案内では、次の資料が示されています。これは京都の提出資料の例であり、全国の窓口で同じ添付方法とは限りません。

  • 代行運転自動車に係る受託自動車保険等の契約締結を証明する書類。
  • 随伴用自動車に係る自動車保険等(業務用)の契約締結を証明する書類と、自動車検査証等のコピー。

契約書類の事業者名、随伴車の情報、補償内容を申請内容と照合し、契約開始の時期も確認します。申請前に、引受先へ証明書類の発行時期を、主たる営業所の所轄警察署へ必要な添付資料を確認すると、準備の行き違いを減らせます。

参照:京都府警察の認定申請・変更届の案内。人員や他の書類を含む開業準備は、自動車運転代行業認定の総合ガイドで整理しています。

開業後は、増車・更新・利用者への説明まで管理する

認定申請のときだけ書類をそろえて終わりにはできません。満了・更新、増車、車両の入替え、運転者の変更があるたびに、営業の実態と契約条件がずれていないか確認します。新しい車を使い始める前に、必要な補償が有効になっていることを確かめましょう。

保険・共済の更新や内容の変更、随伴車の変更では、認定申請時の資料に関する変更届も確認が必要です。契約だけ更新して届出を忘れないよう、所轄警察署に提出資料と期限を確認してください。

標準約款第7条の2は、利用者へ役務を提供しようとするとき、損害賠償措置の概要を書面で提示して説明することも定めています。「保険に入っています」の一言だけで済ませず、現在の契約に合った説明書面を用意し、運転者が説明できるようにします。

日常の安全管理や酒気帯び確認については、運転代行業の安全運転管理者・日常管理も確認してください。

運転代行業の保険でよくある質問

保険と共済のどちらでもよいですか?

制度上は、基準に適合する損害賠償責任保険契約または損害賠償責任共済契約で措置を講じます。名称だけで決めず、補償内容と申請用の証明資料を確認してください。加入先の選択肢を調べる際も、まずこの基準に適合するかを確認しましょう。

随伴車が1台だけでも補償は必要ですか?

はい。台数が少ないことを理由に省略できるわけではありません。顧客車の損害賠償措置に加え、その1台についても業務用として必要な補償を確認します。

保険料はいくら見込めばよいですか?

一律の金額ではなく、補償内容や契約条件をそろえて見積もりを取ります。随伴車の情報、運転者の条件、希望する補償限度額を伝え、保険料・掛金と自己負担額を一緒に比較してください。

保険の確認と、認定申請の準備をつなげる

まず、顧客車と随伴車について「対象となる契約・限度額・運転者の条件・期間」を整理し、引受先の説明と申請書類を照合してください。個別商品の補償内容や事故時の支払可否は、保険会社・共済へ確認する事項です。

認定申請の必要書類や、保険資料を含む準備の整理で相談したい場合は、開業予定地、個人・法人の別、随伴車の台数、現在の準備状況を添えて、サクセスファン行政書士事務所へお問い合わせください。対応範囲や費用は、具体的な状況を確認したうえでの案内となります。

制度情報の確認日:2026年11月6日。契約条件と提出資料は、利用する保険会社・共済および申請先の最新案内で確認してください。

  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士開業・1973年1月生・神戸市出身。兵庫工業高等学校卒業、慶応義塾大学通信教育課中退。富士通株式会社でシステムエンジニアとして2年勤務。自分のやりたい仕事でないと退職。その後、30以上の職種を経験した後、起業家をサポートするため、平成17年2月に行政書士開業。1000社50業種以上に会社設立・許認可など5000以上の行政手続きを代行。