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探偵業で受けてはいけない依頼|違法な調査方法と断る判断を解説

探偵業では、依頼者が希望する調査でも、その目的や方法によっては受けることができません。「契約を結んだ」「料金を受け取った」「誓約書に署名してもらった」という事情だけで、違法な調査や危険な情報提供が許されるわけではありません。

受付時には、調査結果の使い道、調査方法、情報の渡し先を分けて確認します。受任後に問題が分かったときも、そのまま調査や報告を続けず、必要な確認と中止の判断を行います。

この記事は探偵業者の開業準備・受任判断に向けた制度解説です。探偵業法の基本ルールに加え、2026年3月10日施行のストーカー被害防止に関する通知制度も整理します。確認日:2026年11月7日。個別案件の適法性は、具体的な事情を基に警察や弁護士へ確認してください。

探偵業の届出は、特別な調査権限を与えるものではありません

警察庁の探偵業の案内では、探偵業者も他の法令で禁止・制限された行為を行えるわけではなく、人の生活の平穏など個人の権利利益を侵害しないようにしなければならないとされています(探偵業法第6条)。

開始届出の受理番号や標識は、違法な手段を認める免許ではありません。依頼者から「探偵ならできるはず」と言われても、業務であることだけを理由に調査方法を正当化しないことが出発点です。

依頼の目的と調査方法は、別々に確認します

  • 目的・利用先:結果が犯罪や違法な差別的取扱いなどに使われないか。
  • 方法:立入り、撮影、情報取得などに、他の法令違反や権利侵害がないか。
  • 提供先・委託先:情報を渡してよい相手か、探偵業務の外注先が届出をした探偵業者か。

例えば、目的が正当だと説明されていても、他人の敷地への無断立入りを求められた場合に、その方法を採用してよいことにはなりません。逆に、公開情報などから得られる情報でも、違法な利用を知りながら渡してよいとは限りません。

探偵業の依頼は目的・方法・提供先を分けて確認。違法利用、権利侵害、情報提供先に疑いが生じたら、調査・報告を先行させず確認する。
受付時だけでなく、調査中・報告前にも新たな事情がないか確認します。

違法な利用を知った依頼は、受けない・続けない

探偵業法第9条第1項は、調査結果が犯罪行為、違法な差別的取扱い、その他の違法な行為に使われることを知ったとき、当該探偵業務を行うことを禁止しています。警察庁の解釈運用基準(第7・第9、PDF)は、「違法な行為」には刑事・民事を問わず違法と評価される行為が含まれると説明しています。

「知ったとき」には、確実に分かった場合だけでなく、違法利用の可能性を認識し、それでも構わないと容認した場合も含まれます。受付担当者だけでなく、現場の従業者からの報告で事情が分かった場合も対象です。

同基準は、家出した配偶者の所在調査中に、依頼者がDV防止法上の保護命令を受けている可能性が判明した場合を例示しています。この場合、保護命令違反に利用されるものではないと明らかにならない限り、業務を行ってはならないとしています。「家族からの依頼だから」と一律に安全だと判断しないよう注意が必要です。

ストーカー被害につながる住所・居場所の提供に注意

ストーカー行為等をするおそれがある者と知りながら、その者へ相手方の氏名・住所など、ストーカー行為等に必要となる一定の情報を提供することは、ストーカー規制法第6条第1項で禁止されています。この禁止は2026年に初めて設けられたものではありません。

警察庁の改正案内によると、2026年3月10日からは、警察本部長等が情報提供を行うおそれのある者に対し、提供先がストーカー行為等をするおそれのある者であることを通知し、情報を提供しないよう求める制度が施行されています(ストーカー規制法第6条第2項)。

探偵業者への周知に関する2026年3月5日付通達(PDF)は、この制度を、警告等を受けた者で現にストーカー行為等をするおそれがある場合の措置として説明しています。また、依頼者の言動から疑いが生じた場合には警察へ相談するよう協力を求めています。

通知が届くまでは自由に情報を渡せるという意味ではありません。依頼者から拒絶された相手への接触を強く求める発言や、危害を示唆する発言が出たときは、単なる「顧客の要望」として処理せず、調査・報告の担当者間で共有して警察へ相談します。これらの言動だけで直ちに法違反と断定するのではなく、安全確認を要する事情として扱います。

同通達は、禁止に反した情報提供が探偵業法上の営業停止等の行政処分の対象となり得ること、情報提供を受けた者がストーカー行為等をした場合には幇助等に当たり得ることも示しています。「調査は終わったので報告だけならよい」と切り離して考えないでください。

調査方法で避けなければならないこと

警察庁の解釈運用基準は、見張りのため他人の敷地へ許可なく入る行為などを、他の法令に反する行為の例に挙げています。住民基本台帳の閲覧や個人データの第三者提供にも、それぞれの法律による制限があります。

  • 無断立入りなど、調査のためという理由で他人の権利を侵害する方法を使わない。
  • 依頼者の説明だけで、端末・アカウント・記録へのアクセス権限があると決めつけない。
  • 聞込みや撮影で、対象者や周辺住民の生活の平穏を害さないか確認する。
  • 位置情報を扱う機器・サービスを使う場合も、目的・同意・権限・方法を個別に確認する。

GPSや紛失防止タグは、市販されているから探偵業務で自由に使えるわけではありません。警察庁の改正案内は、2025年12月30日から紛失防止タグによる位置情報の無承諾取得等がストーカー規制法の規制対象行為に追加されたと説明しています。個々の行為には法の目的要件などの確認が必要であり、「探偵業者だから対象外で安全」と一括りにしないでください。

探偵業法第6条は刑事犯罪だけを問題にする規定ではありません。解釈運用基準では、個人の権利利益の侵害に民法上の不法行為も含まれるとされています。「逮捕される行為ではなさそう」という判断だけでは足りません。

差別につながる身元調査は、地域の条例も確認

違法な差別的取扱いに使われると知った調査結果の提供は、探偵業法の問題になります。さらに、地域の条例で調査・報告そのものが規制される場合があります。全国共通の探偵業法だけで確認を終えないようにしましょう。

例えば、大阪府の条例案内は、興信所・探偵社業者について、特定の個人や親族の現在・過去の居住地が同和地区にあるかどうかの調査・報告や、同和地区の所在地一覧等の提供などを禁止する遵守事項を示しています。大阪府の制度であり、そのまま全国の条例として説明するものではありません。

「採用前の確認」「結婚相手の身元確認」といった依頼名だけでは、調べる項目の適法性は判断できません。依頼目的、具体的な調査事項、適用される条例を確認し、差別につながる調査を通常の確認事項として受け付けない体制が必要です。

無届の外注先へ回せばよい、とはなりません

探偵業法第9条第2項により、探偵業務の全部または一部を、探偵業者以外へ委託することはできません。「個人の協力者」「一度だけの手伝い」と呼び方を変えても、外部への探偵業務の委託なら確認が必要です。

一方、従業者に業務を行わせることと、外部業者への委託は同じではありません。写真の現像を第三者へ依頼することなど、探偵業務の委託に当たらない行為もあります。名称だけでなく、実際に誰へ何を任せるかを整理してください。違法な目的の依頼は、届出のある別業者に回しても正当化されません。

誓約書を受け取った後も、受任判断を見直します

契約前に依頼者から、調査結果を違法な行為に用いない旨の書面を受け取ることは、法第7条の義務です。ただし、書面を受け取れば、実際の言動や新たに判明した事情を無視してよいわけではありません。

書面の種類・交付時点は、探偵業の契約書類と重要事項説明で解説しています。受付時と調査開始後の判断をつなげ、契約書類の準備と現場の安全管理を別々にしないことが大切です。

断る・中止する判断を、担当者任せにしない

以下は、法令の確認を実際の受付業務へ落とし込むための運用例です。一律の法定様式や、すべての案件に共通する判断基準を示すものではありません。

  • 受付時に、依頼者・対象者の関係、調査の目的、結果の利用予定を確認する。
  • 危険や違法利用の疑いが出たら、調査や情報提供を先行させず、責任者へ報告する。
  • 依頼者の発言、確認できた事情、判断の理由を必要な範囲で記録し、アクセスを制限する。
  • 警察や弁護士へ確認し、受任不可・中止・契約上の精算などをそれぞれ整理する。
  • 現場担当者と報告書を渡す担当者にも、停止の判断を確実に共有する。

断る際は、依頼の内容をSNSへ公開したり、関係のない相手へ広めたりしないでください。報酬を受け取っていても、危険な情報を渡す理由にはなりません。解除・返金・違約金の争いは、業務の適法性とは分けて契約内容と適用法を確認します。

開業前に、受付・契約・現場のルールを揃えましょう

開業手続全体は探偵業届出の総合ガイドをご覧ください。受ける仕事の範囲、契約書類、従業者への説明まで準備してから営業を始めることが大切です。

神戸・兵庫で探偵業の開業準備や届出を相談したい方は、営業所の地域、個人・法人の別、開業予定時期、準備中の課題をお伝えください。最初のお問い合わせでは、調査対象者の詳細な個人情報や実際の調査資料は送らず、必要な資料と送付方法を確認してから進めてください。

すでに危害の恐れがある案件の対応は、行政手続の相談より警察への相談を優先してください。具体的な契約紛争や損害賠償への対応は、弁護士へ相談することも検討します。

  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年行政書士開業・1973年1月生・神戸市出身。兵庫工業高等学校卒業、慶応義塾大学通信教育課中退。富士通株式会社でシステムエンジニアとして2年勤務。自分のやりたい仕事でないと退職。その後、30以上の職種を経験した後、起業家をサポートするため、平成17年2月に行政書士開業。1000社50業種以上に会社設立・許認可など5000以上の行政手続きを代行。